Geobacter属細菌はデルタプロテオバクテリア網に属する異化的鉄還元細菌(Dissimilatory iron-reducing deltaproteobacteria、DIRD)である。DIRDの探索は世界中で行われており、新種の発見およびバイオレメディエーションや微生物燃料電池への応用研究が多数報告されている。しかし、日本国内におけるDIRDの探索はほとんど行われておらず、単離の報告は未だない。そこで我々は、DIRDの検出と探索の効率化を目指し、リアルタイムPCRと融解曲線解析を用いてDIRDの迅速検出法の検討を行った。底泥試料は静岡市の市街地を流れる巴川とその支流の4ヶ所から採取した。フェリハイドライト培地で底泥試料を14日間培養した結果、全ての試料において磁性を持つ黒色物質が生成された。培養後の培地からDNAを抽出し、PCR-DGGE法と塩基配列解析を行った結果、すべての試料中にGeobacter sulfurreducens PCA株の近縁種が存在していることがわかった。また巴川中流の試料からはDesulfuromonas alkaliphilus Z-0531株の近縁種が検出された。本研究の結果より、フェリハイドライト培地による培養を行わなくても、リアルタイムPCRと融解曲線解析を用いることで、底泥試料中のDIRDを検出できることが示された。
抄録全体を表示