日本水処理生物学会誌
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56 巻, 1 号
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報文
  • 山岸 知彦, 西村 修, 須藤 隆一
    原稿種別: 報文
    2020 年 56 巻 1 号 p. 1-15
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/15
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    本研究では、富栄養化した都市公園池のアオコ発生状況が、都市公園池内に設置した隔離水界を用いても再現できるのか検討した。特に富栄養化した都市公園池における水質浄化技術の効果について、隔離水界を用いて適正に評価するためには、アオコ発生の季節変化を踏まえた長期的な再現が重要である。この観点から筆者らは、都市公園池内に設置した池底も含めて隔離した水界(水面積10m×10m、水深1m)におけるMicrocystis属の現存量及び水質について2年半の継続調査を実施し、公園池と比較した。公園池と同様に夏期の3年間はMicrocystis属によるアオコ現象が隔離水界で再現されたが、3年目の夏期の現存量(1,500群体/mL)は、1年目の現存量(5,360群体/mL)と比べ減少した。また、隔離水界においては、水温、全リン及び懸濁態リンが3年に渡って公園池の水質と類似の変動を示し、水温の上昇に伴う全リンの底泥からの溶出、それにともなうMicrocystis属等の植物プランクトンの増加というアオコ発生メカニズムが同様に働いていることが示唆された。隔離水界においては、栄養塩類(TN、TP、PTN及びPTP)が公園池と同様にChl.aの増減に伴う季節変化を示した。さらに、競争者(珪藻類)及び捕食者(小型甲殻類、カイアシ類、ワムシ類)についても公園池と同様の季節変化が隔離水界で再現された。本研究により、都市公園池におけるアオコ発生要因を踏まえた水質浄化技術の長期的な評価手法として池底を含めて隔離した水界の活用が有効である可能性が示された。

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