日本水処理生物学会誌
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48 巻, 1 号
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報文
  • 高木 啓太, 奥田 正彦, 糸川 浩紀, 中沢 均, 古川 憲治
    原稿種別: 報文
    2012 年 48 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2012年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    近年,アナモックスは新しい生物学的窒素除去技術として期待されている。本研究では,固定床型亜硝酸化/アナモックスプロセスの実廃水処理における適用可能性を検証するため,実下水処理場の消化汚泥脱水ろ液を処理対象として,約580日間にわたるベンチスケールの実証実験を実施した。本プロセスは,前処理工程,亜硝酸化工程,アナモックス工程で構成される。亜硝酸化工程では,流入SS濃度を制御することで安定した処理性能が維持され,約210日間にわたり80%以上のNO2-N生成率が得られた。この時,NO3-Nの生成はほとんどなかった。アナモックス槽流入水のNO2-N/NH4-N比は,亜硝酸化処理性能に応じてバイパス水量を調整することで,容易に適正範囲に維持できた。アナモックス工程では,運転開始直後から明確な窒素除去が確認され,80日後には2.9 kgN・m-3・d-1の最大窒素除去速度を達成した。プロセスを通して意図的に流入窒素負荷を変動させた運転においてもほとんど処理性能は維持され,平均81%の窒素除去率が得られた。
  • 上野 淳一, 河野 裕美, 西村 修, 木村 賢史
    原稿種別: 報文
    2012 年 48 巻 1 号 p. 13-21
    発行日: 2012年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    マングローブや干潟に生息する生物の生態や分布に関する研究は多いが、マングローブに生息する生物が周囲の環境に果たす役割についての研究は少ない。そこで、マングローブに生息する生物がどの程度物質収支に寄与しているのかを把握するために、ミナミトビハゼを対象に、その資源量とC、N、P同化量について西表島ウダラ川河口域のマングローブ域で調査を行った。当該水域における2004~2007年までの本種の資源量を調べた結果、年々増加傾向にあることが明らかとなった。このうち稚魚が全体の78~87%を占めており、稚魚が干潟生活に移行する時期に調査が重なったことが示唆された。本種の餌量効率は2.3~6.5%と近縁種であるマハゼと比較すると非常に低い数値となった。ミナミトビハゼによるC、N、P同化量は小さいものであったが、これは本種の生息地が亜熱帯であるために摂取したエネルギーの多くが消費され、同化量が低く抑えられていることに起因していると考えられた。マングローブ林からのC、N、P流入負荷に対するミナミトビハゼの同化比率を算出すると、とりわけN、Pの比率が高い結果となった。このことから調査エリア内に生息するミナミトビハゼは、マングローブ内における物質循環に少なからず寄与しているものと考えられた。
  • 宮代 知直, 王 慶宏, 楊 英男, 清水 和哉, 杉浦 則夫, 松井 三郎
    原稿種別: 報文
    2012 年 48 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 2012年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    本研究では、高効率嫌気消化のために亜臨界水加水分解による難分解有機廃棄物の前処理を実施した。下水処理汚泥と藍藻類を難分解性有機廃棄物として用いた。異なる処理温度で亜臨界水加水分解により前処理を行った2つの廃棄物を用いてメタン発酵を行うことで評価した。その結果、最適温度は180℃であった。下水処理汚泥からは、0.8 g/lのギ酸、8.6 g/lの酢酸、9.9 g/lのプロピオン酸そして0.6 g/lの酪酸が産生された。また藍藻類が産生する有毒物質ミクロシスチン濃度405.8μg/lは前処理において完全に分解された。メタンガス産生の積算は、下水処理汚泥からは43.2 ml、藍藻類からは54 mlであった。それら両方は、未処理のものと比較するとより高い生産量となった。従って、亜臨界水加水分解前処理により難分解廃棄物の効率的な嫌気消化を達成できた。
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