微細藻類の一種であるミドリムシ(Euglena gracilis)を下水中で培養し、バイオマス生産と栄養塩類除去のポテンシャルを評価した。下水処理場から採取した最初沈殿池(初沈)越流水及び二次処理水を孔径10μmのメンブレンフィルターを用いてろ過したものを下水試料として実験に供した。14日間のミドリムシの培養により、下水試料に含まれるアンモニア態窒素とリン酸態リンはほぼ完全に除去され、また、ミドリムシが盛んに増殖することにより、初沈越流水では6.3×103cells/L、二次処理水では4.5×103cells/Lのバイオマス生産が達成された。培養の過程である程度の溶存態有機炭素の除去も生じたが、二次処理水においては、恐らくミドリムシ細胞からの漏出によって、培養後に溶存性有機炭素および溶存態全窒素の濃度が増加した。また、各下水試料を孔径1.0μmおよび0.2μmのメンブレンフィルターを用いてさらにろ過してミドリムシの培養に用いたところ、培養終了時のバイオマス量は元の下水試料で培養した場合よりも小さくなったことから、ミドリムシの培養において下水中に含まれる細菌等の微生物を除去する必要はなく、むしろ、細菌等の微生物の共存はミドリムシのバイオマス生産に好影響をもたらすことが示唆された。以上の検討より、初沈越流水を用いてミドリムシを培養することで、バイオマス生産と栄養塩類除去を同時に達成し得るco-benefitプロセスが構築できるものと考えられた。
Pseudananabena属における2-MIBによるカビ臭物質産生種/非産生種を顕微鏡下で判断するために、細胞サイズ(W-L/W比)を用いた方法と含有色素を用いた方法の2つが提案されてきたが、いずれも確定的な判定方法としては使えないことが分かった。細胞サイズについて再検討を行ったが、現段階では顕微鏡下の情報のみで2-MIB産生種/非産生種を判定することはできない。