日本水処理生物学会誌
Online ISSN : 1881-0438
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55 巻, 1 号
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総説
  • 山本 哲史, 井上 大介, 斎藤 祐二, 池 道彦
    原稿種別: 総説
    2019 年 55 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/15
    ジャーナル フリー

    我が国では,2012年に1,4-ジオキサンが一律排水基準項目に追加されたが,特定の業種においては暫定基準が2021年まで適用されることになっている。しかしながら,1,4-ジオキサンは極めて安定な物性を有することから,活性汚泥処理等の従来の排水処理技術の多くでは十分な分解・除去が期待できない。また,促進酸化法は分解・除去効果は確認されているものの,経済性や実用面において重大な課題を抱えている。このため,1,4-ジオキサン含有排水の実用的な処理技術が確立されているとはいえない。一方,近年では,1,4-ジオキサン分解菌を用いた生物学的処理に関する研究が進められており,新たな処理技術として期待されている。そこで,本稿では,従来の排水処理技術における1,4-ジオキサンの処理性能や課題等を整理するとともに,1,4-ジオキサン分解菌を用いた排水処理技術に関する研究動向について取りまとめた。

報文
  • 中村 和德, 渡邉 一輝, 中野 和典
    原稿種別: 報文
    2019 年 55 巻 1 号 p. 15-22
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/15
    ジャーナル フリー

    ミミズを用いた堆肥化は人為的な通気の代わりにミミズの活動によって通気性を改善し、好気的な分解を促進することで、省エネルギーかつ低コストな下水汚泥のリサイクルが可能になると期待される。しかしながら下水汚泥をミミズにより堆肥化するには、NH4+-N等の生育阻害物質の濃度を下げた後にミミズを投入するなどの前処理が必要とされている。そこで本研究では重層構造としたミミズによる堆肥化方法を提案し、実験室規模において実施した。本研究では、上層を脱水汚泥、下層を牛糞堆肥とした重層化によってミミズの生残率を改善し、堆肥化を行えることを明らかとした。確立した重層型堆肥化方法に基づいて行った実験では、ミミズが活動することで好気的な環境を創出し、一般的な堆肥化期間と比較して短い期間(32日以内)で堆肥化を完了できた。ミミズを用いて下水汚泥を堆肥化させることで、堆肥化開始前と比べて堆肥の重金属含量が減少することが明らかとなった。特に牛糞堆肥を加えることでミミズの活動を助け、CuとZnのミミズへの移行を促進させる副資材として有効であることが示唆された。CuとZnの減少率と最も高い相関を示したのはpHであり(Cu, r= 0.43; Zn, r = 0.63 (p<0.05))、pHが重金属のミミズへの移行を左右する条件として重要であることが示された。一方でCdは腐熟期間にミミズ体内への吸収が行われ、稲ワラを加えることでCdの移行を促進させられることが示唆された。Cdの減少率と最も高い相関を示したのは有機物減少量であった(r = -0.67, p<0.05)。有機物減少量が小さいとCdの減少率は高くなったことから、Cdの生物利用性が有機物の分解で生成される腐植酸の抑制によって影響を受けたことが推察された。

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