本研究では、PCR-DGGE法において、16S rRNA遺伝子の領域の違いが細菌叢解析に影響を与えるのか否か調査した。解析には、ラボスケール浄化槽と実下水処理場の活性汚泥を用いた。PCR-DGGE法において用いた領域は、V1-V3領域と、V3-V5領域である。本研究では、DGGEゲルから切り出したDNAバンドを用いて、シークエンスを行い、その属を特定した。各領域においてDGGEの検出効率を算出した。また、各プライマーが、検出できる細菌の種類、数をRDPIIにより検索し、プライマーの期待値を算出した。以上より、PCR-DGGE法による細菌の検出効率とRDPIIによるプライマーの期待値の関連性を見出すことを試みた。その結果、V1-V3領域において、RDPIIによる期待値が1×10
4以下の細菌種では、PCR-DGGE法による検出効率が0.07以下であった。また、期待値が1×10
4以上の細菌種では、検出効率が0-0.14と幅広くなった。V3-V5領域において、RDPIIによる期待値が0.5×10
4以下の細菌種は、PCR-DGGE法による検出効率が0.1以下であった。期待値が0.5×10
4以上の細菌種では、検出効率が0から0.33であった。以上の結果より、RDPIIにより期待値を事前に調べることで、PCR-DGGE法による細菌叢の検出効率がある程度予想できることが示唆された。分子クローニングやシークエンスが困難な場所や簡易的な細菌叢の把握時に、本研究結果が有用であると考えられる。
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