日本水処理生物学会誌
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46 巻, 4 号
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報文
  • 周 宇林, 張 振亜, 中本 智子, 楊 英男, 内海 真生, 杉浦 則夫
    原稿種別: 報文
    2010 年 46 巻 4 号 p. 161-169
    発行日: 2010年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    本研究はオカラ(日本の伝統食品加工過程で生産された副産物)を原料とし、36℃の嫌気発酵槽を用いたバッチ式中温メタン発酵を行い、異なる量のオカラを定量の接種汚泥と混合し、最終含水率は90%になるように調整を行った。接種サイズ(原料オカラ対接種汚泥の比率S/Is)が0.3から2.0、計6系列のサンプルを用いてメタン発酵を実施した。S/I の値が0.6の時、メタン収率が最大で、S/Iの値が1.0に超えると、高濃度に蓄積された揮発性脂肪酸(VFA)の阻害で、メタン収率の急激な減少が見られた。またPCR-DGGE等の分子生物的手法を用いて嫌気発酵槽内の微生物群集の変動について解析した。S/Iの値が1.6と2.0の時、酢酸やプロピオン酸生成に関連する菌が優占になったことから、酢酸やプロピオン酸の蓄積とメタン生産量の低下との関係を分子生物的な手法で明らかにした。19日間の中温メタン発酵では、S/I の値が0.6の時に495 ml CH4 g VS-1の最大メタン収率が得られた。
  • 山崎 廉予, 出口 浩
    原稿種別: 報文
    2010 年 46 巻 4 号 p. 171-179
    発行日: 2010年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    本研究では、PCR-DGGE法において、16S rRNA遺伝子の領域の違いが細菌叢解析に影響を与えるのか否か調査した。解析には、ラボスケール浄化槽と実下水処理場の活性汚泥を用いた。PCR-DGGE法において用いた領域は、V1-V3領域と、V3-V5領域である。本研究では、DGGEゲルから切り出したDNAバンドを用いて、シークエンスを行い、その属を特定した。各領域においてDGGEの検出効率を算出した。また、各プライマーが、検出できる細菌の種類、数をRDPIIにより検索し、プライマーの期待値を算出した。以上より、PCR-DGGE法による細菌の検出効率とRDPIIによるプライマーの期待値の関連性を見出すことを試みた。その結果、V1-V3領域において、RDPIIによる期待値が1×104以下の細菌種では、PCR-DGGE法による検出効率が0.07以下であった。また、期待値が1×104以上の細菌種では、検出効率が0-0.14と幅広くなった。V3-V5領域において、RDPIIによる期待値が0.5×104以下の細菌種は、PCR-DGGE法による検出効率が0.1以下であった。期待値が0.5×104以上の細菌種では、検出効率が0から0.33であった。以上の結果より、RDPIIにより期待値を事前に調べることで、PCR-DGGE法による細菌叢の検出効率がある程度予想できることが示唆された。分子クローニングやシークエンスが困難な場所や簡易的な細菌叢の把握時に、本研究結果が有用であると考えられる。
  • 岸田 直裕, 古川 一郎, 黒木 俊郎, 猪又 明子, 泉山 信司, 森田 重光, 秋葉 道宏
    原稿種別: 報文
    2010 年 46 巻 4 号 p. 181-189
    発行日: 2010年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    本研究では、リアルタイムRT-PCR法を用いた河川水中のクリプトスポリジウムオーシストの高感度定量法を開発した。はじめに、これまでに報告された複数のリアルタイムPCR系に着目し、感度や特異性等の比較を行った。Millerらによって報告されたPCR系は非特異産物を生成せず、感度も良好であったため、最も実用的であると考えられた。次に、Millerらによって報告されたリアルタイムPCR系に逆転写反応を組み合わせたリアルタイムRT-PCR法を構築し、定量感度の向上を試みた。逆転写反応によって、1オーシストあたり約27,000コピーのcDNAが生成されることがわかり、またリアルタイムRT-PCR法の定量下限は7.5×10-4 oocysts/tubeと判断され、極めて低濃度のクリプトスポリジウムオーシスト由来の核酸を定量可能であることがわかった。最後に、構築したリアルタイムRT-PCR法を水環境サンプル中のクリプトスポリジウム濃度の測定に適用し、顕微鏡観察を基本とする従来法と比較した。その結果、新しく構築したリアルタイムRT-PCR法は、特異性の問題を生じることなく、実河川試料からクリプトスポリジウムオーシストを定量することが可能であり、顕微鏡観察による推定オーシスト数と同様の結果が得られた。
  • 関川 貴寛, 林 広紀, 岩堀 恵祐
    原稿種別: 報文
    2010 年 46 巻 4 号 p. 191-199
    発行日: 2010年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    異化的鉄還元細菌はアモルファス鉄酸化物であるフェリハイドライトを異化的に還元してマグネタイトを生産することで知られている。この異化的鉄還元細菌は自然界に普遍的に存在しており、世界各地の環境試料から様々な菌株が単離されているが、日本における探索及び単離の報告は未だ行われていない。我々は、日本における異化的鉄還元細菌の探索を目的とし、フェリハイドライト培地とPCR-DGGE法を用いて、静岡県内の河川底泥からマグネタイト生産能を有する細菌の検出を試みた。フェリハイドライト培地では異化的鉄還元細菌が選択的に培養され、DGGEバンドパターンは培養前後で著しく変化した。また、培養後の主要なDGGEバンドから抽出したDNAの塩基配列解析と相同性検索を行った結果、すべての試料中に異化的鉄還元細菌が存在していることがわかった。培養後の底泥試料(4箇所)の主要なDGGEバンドの相同性はそれぞれ、Bacterium ROME215Asa (98%)、Geobacter thiogenes K1 (98%)、Geobacter sp. T32 (100%)、Geobacter sulfurreducens PCA (100%)であった。本研究により、フェリハイドライト培地を用いることで、培養前の試料からは検出できなかった異化的鉄還元細菌をPCR-DGGE法で検出できることが明らかになり、日本の河川にも様々な種の異化的鉄還元細菌が生存していることが示唆された。
  • 田畑 洋輔, 牛田 高裕, 中島 淳
    原稿種別: 報文
    2010 年 46 巻 4 号 p. 201-206
    発行日: 2010年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    浄化槽の一次処理を行う槽(一次処理槽)における固液分離や汚泥貯留の性能は、汚水の流れの影響を受ける。一次処理槽の設計を最適化するためには、槽内の水流を把握する必要があり、数値流体力学(CFD)シミュレーションの利用が有効と考えられる。そこで本研究では、CFDを用いて一次処理槽内の水流をシミュレーションし、超音波ドップラー流速計(ADV)による実測結果と比較することで、CFDの信頼性を評価した。シミュレーションで得られた水流パターンは、実測結果と良好に一致した。流入バッフルから出た水流はそのまま槽底部に達し、槽底部で放射状に広がる水平流となり、壁面に沿って上昇し流出バッフルに入った。流入水量が20 l/minと50 l/minの条件について、シミュレーションと実測による流速はおおむね一致し、相関係数はそれぞれ0.68、0.93であった。また、流速が0.5 cm/sと十分に小さいデータを除くと、シミュレーションによる流向は、ADVによる測定結果と良好に一致した。ゆえに、CFDシミュレーションで得られた水流の信頼性は十分に高く、CFDは浄化槽の設計に有効なツールになるといえる。
  • 馮 欣, 栗栖 太, 矢木 修身, 春日 郁朗, 古米 弘明
    原稿種別: 報文
    2010 年 46 巻 4 号 p. 207-214
    発行日: 2010年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    高温接触酸化法による金属切削油廃液処理における微生物群集を、培養によらない手法を用いて解析した。処理能力と微生物群集の関係、特に廃切削油中の難分解性物質であるジシクロヘキシルアミンの分解について焦点を絞った。処理により、油分は60-70%に低減された。脂肪酸とp-t-ブチル安息香酸はほぼ100%除去されたが、ジシクロヘキシルアミンは約80%であった。ジシクロヘキシルアミンの濃度を3倍にしても、除去能力は維持された。16S rRNA遺伝子のクローン解析を行ったところ、Bacillus属が優占的であり、なかでもB.thermozeamaizeB.thermoamylovoransに類縁のものが多くみられた。PCR-DGGEとクローンライブラリを組み合わせることで、Bacillus sp. BGSC W9A92とB. polygonumiに類縁の細菌がジシクロヘキシルアミンの分解に関与していることが推定された。
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