日本水処理生物学会誌
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招待論文
解説・資料
  • 川越 保徳
    原稿種別: 解説・資料
    2024 年 60 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

     熊本市とその近隣市町村を含む地域は「熊本地域」と呼ばれており,そのおよそ100万人の人口に要する飲用水の100%を地下水で賄っている世界的にも珍しい都市域である。本地域の地下水は今なお豊富かつ清涼ではあるものの,近年は地下水位の減少や水質の悪化が懸念されている。筆者は約15年前から本地域の地下水に関わり,主に水質保全に関する研究を行ってきた。本稿では,熊本地域における地下水の成り立ちと流動を踏まえた上でその水質の特徴について論じる。また,現在,世界中の地下水質の課題にもなっている硝酸態窒素による水質への影響に関する知見を示し,最後に2016年に発生した熊本地震による地下水質への影響について述べる。

一般投稿論文
報文
  • 中野 和典, 渡邉 龍弥
    原稿種別: 報文
    2024 年 60 巻 1 号 p. 9-17
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

     ろ材に砂を用いた人工湿地メソコズムに干満流を適用し,干満サイクルを24 hに固定して4条件の干満時間比率で合成廃水の処理性能を比較した結果,CODCr及びT-N除去率の最高値は干満時間比率3:1(干水時間18 h:満水時間6 h)で得られることが明らかとなった。ろ材にゼオライトを用い干満流と部分飽和を組み合わせた人工湿地メソコズムに干満時間比率3:1を適用し,干満サイクルを段階的に短縮することにより負荷量を増加させ,水質浄化性能の限界を検証した結果,負荷量を5倍にした条件において得られたCODCr及びT-N除去原単位はそれぞれ243g/m2 d及び13.8g-N/m2 dであった。これらの除去原単位は,負荷量をさらに高めれば増加することが予測されたが,除去率90%以上を前提とした除去原単位としては限界値であると考えられた。一方,T-P除去性能は干満サイクルの短縮化の影響を大きく受け,除去率90%を維持できたのは干満サイクル24 hでの処理だけであった。T-P除去原単位の最大値は負荷量を4倍にした条件で得られ,0.472g-P/m2 dであった。これらの結果は,ろ材にゼオライトを用いた干満流人工湿地に部分飽和を組み合わせることで人工湿地の除去原単位を大幅に改善できることを示すものであり,人工湿地の大幅な省面積化への貢献が期待できる。

解説・資料
  • 林 紀男
    原稿種別: 解説・資料
    2024 年 60 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

     千葉県北西部に位置する手賀沼には特定外来生物に指定された侵略的外来水生植物のナガエツルノゲイトウ,オオバナミズキンバイ,ミズヒマワリ,オオカワヂシャなどが繁茂を広げている。特にナガエツルノゲイトウとオオバナミズキンバイは沼岸に浮島状群落を形成し生育地を巡り拮抗関係にある。両種の浮島状群落下ではプランクトンの出現種構成には差異が認められないものの,密度が低減していること,両種が共存し拮抗関係にある浮島状群落ではプランクトン密度低減が大きいことが明らかとなった。また,浮島状群落下で採取・濾過した水およびミジンコ休眠卵を用いた休眠打破試験では,休眠打破に外来水生植物の産生する他感作用(アレロパシー)物質が関与していることが示唆された。特にナガエツルノゲイトウとオオバナミズキンバイが拮抗関係にある浮島状群落下で採取・濾過した水では,ミジンコ休眠卵の休眠打破が完全に阻害される事実が認められた。ナガエツルノゲイトウとオオバナミズキンバイは排水機場の目詰まり等に起因した治水リスクが顕在化しているが,揚水機場を経て農地灌漑される水に包含される外来水生植物由来の溶存性の代謝産物にも水田の生物相に影響が及ぶ懸念があることが明らかとなった。

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