日本小児血液学会雑誌
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22 巻, 3 号
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  • 東元 健, 副島 英伸
    2008 年 22 巻 3 号 p. 139-143
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    有袋類やヒトを含む真獣類 (有胎盤類) には, メンデルの法則に従わない刷り込み遺伝子が存在する.刷り込み遺伝子は, 個体の発生過程に重要な役割を演じ, その異常により遺伝性疾患や癌を発症することが知られている.Beckwith-Wiedemann症候群 (BWS) は, 刷り込み遺伝子の異常が原因で発症する代表的な疾患である.本稿では, 刷り込み遺伝子の制御機構, BWS発症メカニズム, BWS発症の人種間における原因の違い, および, 生殖補助医療とBWSの関連性にっいて解説する.
  • 石田 也寸志
    2008 年 22 巻 3 号 p. 144-155
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2011/08/17
    ジャーナル フリー
    累積生存率と原因別の死亡解析を文献レビューした結果, 診断後5年が経過した後でも小児がん経験者の死亡率は統計学的に有意に高く, 標準化死亡比は4~17であった.また5年以上生存した小児がん経験者の多く (60~70%) は, 種々の晩期合併症による後遺症を抱えていた.二次がんの累積発症率は, 診断後25年で3.5~4.7%とされており, 標準化発生比は3.6~6.38であった.以上の結果から, 小児がん経験者においては一生にわたるフォローが必要と考えられる.小児がん経験者の長期フォローアップのモデルに関して, それぞれの長所と短所を紹介した.アメリカ合衆国, イギリス, ドイツ, イタリアなどで施行・提唱されている長期フォローアッププログラムを解説し, 最後に本邦における問題点について述べた.
  • 黒田 格, 犬飼 岳史, 野口 佐綾香, 赤羽 弘資, 薬袋 周, 本名 浩子, 広瀬 衣子, 合井 久美子, 中澤 眞平, 杉田 完爾
    2008 年 22 巻 3 号 p. 156-160
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    慢性活動性エプスタイン・バールウイルス (EBV) 感染症 (CAEBV) は予後不良な疾患であり, 根治療法として同種造血幹細胞移植 (allogeneic stem cell transplantation, allo-SCT) が行われている.われわれはT細胞感染型のCAEBVと診断した患児に対して reduced intensity stem cell transplantation (RIST) を行ったので報告する.症例は9歳男児で, 発熱と肝脾腫を主訴に受診し, 血清中に高レベルのEBVゲノムを検出してCAEBVと診断した.HLA完全一致の母親をドナーとして, Fludarabine (30mg/m2/day × 4days), Melphalan (70mg/m2/day × 2days), horse antithymocyte globulin (10mg/kg/day × 2days) で前処置を行い, 骨髄有核細胞数3.3 × 108/kgを輸注した.移植片対宿主病 (GVHD) 予防はCyclosporine Aと短期Methotrexateで行った.生着は順調でday17に好中球500/μl以上, day 21に網状赤血球1.0%以上, day24に血小板5×104/μl以上となり, day105に異性間FISH解析で完全キメラを確認した.II度の急性GVHDの発症とともに肝脾腫が急速に消失し, その後にEBVゲノムは陰性化した.CAEBVにおいて, RISTは安全性が高く有効な治療法であると考えられる.
  • 山本 将平, 外山 大輔, 松野 良介, 関 真由美, 磯山 恵一
    2008 年 22 巻 3 号 p. 161-166
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    エプスタイン・バール (EB) ウイルス関連リンパ増殖性疾患 (EBV-LPD) は先天性免疫不全症にみられる合併症であり, 治療関連毒性により予後は依然として不良である.先天性免疫不全症に合併したEBV-LPDに対し, 初期治療後にリッキシマブ単独療法が奏効した症例を経験した.本症例は, その後に骨髄非破壊的移植 (RIST) を施行し長期寛解を維持している.先天性免疫不全症は, 重症感染症を合併していることが多く, 強力な化学療法による重篤な治療関連毒性が懸念される.本症例では, EBウイルスがB細胞に感染しており, 強力な化学療法は施行せず, リッキシマブ単独療法を施行した.特記すべき有害事象なく終了し, 臨床症状は著明に改善した.同様の症例に対する, リツキシマブの有効性, 安全性が示唆された.
  • バイパス製剤をめぐる最近の話題
    白幡 聡, 酒井 道生
    2008 年 22 巻 3 号 p. 167-172
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    血友病の止血治療はここ20年の間に著しく進歩し, 安全で止血効果の高い凝固因子製剤が安定して供給されるようになった.一方, 凝固因子製剤の輸注開始後にインヒビター, とくにhigh responder typeのインヒビターが発現した患者の治療環境は, インヒビター陰性患者の状況と比べてかなり劣っており, インヒビター保有患者の止血治療は, 血友病医療の中で, 残された大きな課題となっている.この状況を改善するためにさまざまな取り組みがなされているので, 本稿ではバイパス製剤について, 以下の最近の話題を紹介する.
    1. わが国におけるrFVIIaの市販後調査成績, 2.rFVIIa高用量単回投与の有用性, 3.バイパス製剤の選択, 4. バイパス製剤の定期投与, 5.出番を待つバイパス製剤.
  • 瀧 正志
    2008 年 22 巻 3 号 p. 173-178
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    血友病患者の補充療法は, 出血が顕在化した際に止血を目的として欠乏する凝固因子 (第VIII因子あるいは第IX因子) を一定期間補充する方法が一般的に行われており, on demand therapyあるいはepisodic therapyと呼ばれる.北欧では, 非出血時に出血予防および関節症の発症進展抑止を目的として凝固因子を長期間にわたり定期的に補充する定期補充療法 (欧米ではprophylaxisと呼ぶ) が行われ, その関節症発症阻止効果などの有用性が報告されている.しかし, 定期補充療法に関する成績はおもに後方視的な観察的研究であることより, その有効性および安全性に関するエビデンスに欠けると指摘されていた.そこで, 日本小児血液学会血友病委員会では前方視的な臨床研究を開始した.最近欧米で行われている前方視的無作為割り付け比較試験の中間報告により, 定期補充療法の有効性にエビデンスが付加され, 血友病に対する補充療法はいよいよ新たな時代に突入することが予想される.
  • わが国のガイドライン作成に向けて
    田中 一郎, 嶋 緑倫
    2008 年 22 巻 3 号 p. 179-187
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2011/08/17
    ジャーナル フリー
    インヒビター保有血友病患者に対する止血治療にはバイパス止血療法とインヒビター中和療法がある.両者の選択には出血の重症度やインヒビター力価インヒビターの反応性が重要な要素となる.海外のガイドラインをみると, その治療選択にっいては, 概ね一定のコンセンサスが得られている.すなわち, ローレスポンダーではインヒビター中和療法が, 5 Bethesda単位 (BU) /ml以上の高力価インヒビターをもつハイレスポンダーではバイパス止血療法が第一選択とされている.しかし, 5 BU/ml未満の低力価インヒビターをもっハイレスポンダーでは, 軽度出血時はバイパス止血療法が第一選択とされているが, 重度出血や手術時にはその選択が分かれていた.また, バイパス製剤の選択では優先順位を付けないガイドラインが多かったが, オーストラリアのみ遺伝子組換え活性型第VII因子製剤を第一選択としていた.わが国のガイドライン作成に向けて, これらの現状と問題点を検証した.
  • 堀越 泰雄, 三間屋 純一
    2008 年 22 巻 3 号 p. 188-198
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2011/08/17
    ジャーナル フリー
    血友病の包括医療は, 血友病の患者・家族が, 身体的, 精神的, 社会的に, その人らしい生活を送ることができるように, 血友病を専門とする多職種からなる医療チームが支援することである.包括医療は, 以前からその必要性が指摘されてきたが, わが国では普遍的なシステムとして定着するに至らなかった.包括医療を行うことは出血や後遺症を減少させるだけでなく, 患者・家族のQOLの向上に寄与する.わが国でも包括医療体制の整備および医療連携システムの構築が必要である.日本小児血液学会血友病委員会は, 医療情報の交換や医療情報の発信を目的として小児血友病診療ネットワークを立ち上げた.このネットワークを通して, 意見交換をすることや血友病看護研究会と連携し, わが国に促した包括医療体制の構築を目指したい.血友病の患者会は, 患者, 家族が病気に関する知識を得ることや精神的な支援をすることがおもな目的であり, 療養環境の改善を目指して行政への提言も行ってきた.医師は, 患者会の要望により知識や情報を伝えることや, 相談者としての役割がある.患者会が力をつけることができるように支援する必要がある.
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