血液凝固と炎症は創傷治癒における基本的反応であり, 相互に密接に関係している.傷害部位における血液凝固反応は, 活性化VIIa因子が凝固開始因子の組織因子 (tissue factor : TF) と複合体を形成して開始される.TF-VIIa因子複合体は逐次, IX因子およびX因子を活性化し, 最終的に生成されたトロンビンがフィブリン血栓を形成し止血する.トロンビンは止血のみでなく, 多くの細胞を活性化して, 生体のさまざまな生理的, 病理的作用を示す.このトロンビンの細胞膜受容体として発見されたprotease-activated receptor (PAR) は, その後の研究により, 4種類存在し, おのおのがトロンビン, Xa因子, VIIa因子・TF複合体, あるいは活性化プロテインCなどによって特異的に活性化され, 生理機能の発現, 組織の障害と修復, 血管新生, 癌細胞の増殖や遊走, 転移などに関わることが明らかになってきた.本稿では, おもに凝固開始因子のTFが関与する細胞の活性化とPARの関係を中心に, 最近の凝固因子による細胞の活性化とその制御の機構などについて概説する.
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