日本小児血液学会雑誌
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12 巻, 1 号
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  • 原 寿郎
    1998 年 12 巻 1 号 p. 2-10
    発行日: 1998/02/28
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    ヒトγδT細胞が1986年に発見され10年を経たが, その機能, 病態への関与についてはいまだ不明な点が多い.近年新しいγδT細胞ligandとして種々のphospholigandが同定された.これは主にintracellularpathogensから遊離しsoluble formとして, あるいは感染細胞上に発現し抗原のprocessingなしにVγ9+Vδ2+T細胞を活性化する.それゆえ, γδT細胞は一度も遭遇したことのない病原体に対してαβT細胞より迅速に感染防御に働くことができる.その他, 自己免疫疾患, 免疫不全, 悪性疾患への関与を述べた.
  • 杉田 憲一, 熊崎 寿美, 江口 光興, 古川 利温
    1998 年 12 巻 1 号 p. 11-15
    発行日: 1998/02/28
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    血小板無力症 (type II) 患児の血小板凝集およびgpIIb (CD4Ib) の発現に対するthrombopoietin (TPO) の影響をin vitroで検討した.成人対照ではTPO自身は血小板凝集を惹起しなかったが, ADP, col-lagenによる血小板凝集を増強させ, さらに, TPOにより血小板上のCD41b, CD42b (gpIb) の発現の変化もみられた.しかし, 患児の血小板では, 対照のような凝集へのTPOの効果はみられず, TPOによる患児のCD41bの発現の明らかな増強もみられなかった.さらに, CD41b, CD42bの発現の変化も対照に比較して小さい結果であった.
  • 梶梅 輝之, 渡辺 力, 北村 明子, 末永 健太郎, 鈴谷 浩子, 阿部 孝典, 河野 嘉文, 横林 文子, 高上 洋一, 黒田 泰弘
    1998 年 12 巻 1 号 p. 16-21
    発行日: 1998/02/28
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    HLA一致同胞間同種末梢血幹細胞移植 (allo-PBSCT) の有用性をドナーの安全性を含め検討した.ドナーの年齢は3歳から30歳 (中央値;8歳) で, 末梢血幹細胞 (PBSC) の動員にはrecombinant human granulocyte colony-stimulating factor (G-CSF; 10μg/kg 5日間) を用い, 2ないし3回のアフェレーシスを行ってPBSCを採取し凍結保存した.患者の年齢は1歳から27歳 (中央値;10歳) で, 急性骨髄性白血病 (3名), 急性リンパ性白血病 (2名) および骨髄異形成症候群 (2名) の計7名であった.前処置にはbusulfan (16mg/kg) とmelphalan (210mg/m2) を併用し, graft-versus-host disease (GVHD) 予防にはcyclosporin Aとmethylprednisoloneを使用した.ドナーにはG-CSF使用やアフェレーシスによる重篤な副作用はなかった.移植後全患者で生着がみられ, 顆粒球数が500/μlを超えるまでに要した日数は9-11日 (中央値;10日) であり, 血小板数が5万/μlを超えるまでに要した日数は10-35日 (中央値;14日) であった.急性GVHDは1名を除いて軽症であったが, 慢性GVHDは3名にみられた.移植合併症で2名が死亡したが, 5名は原疾患の再発なく移植後218-460日 (中央値;373日) 生存中である.
  • 茶山 公祐, 井上 雅美, 八木 啓子, 中野 智巳, 中野 崇秀, 澤田 明久, 吉本 寿美, 安井 昌博, 岡村 隆行, 河 敬世
    1998 年 12 巻 1 号 p. 22-27
    発行日: 1998/02/28
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    当センターにおいて1982-1996年の15年間で48人のダウン症候群児が出生した.このうち4人 (8%) がTAMを発症し, いずれも無治療で自然寛解に至ったがそのうち1人は約1年後にAMKLを発症した.この症例も含め筆者らは過去5年間に4例のダウン症候群のAMKLを治療した.いずれも大阪地区のANLL治療プロトコールにより治療したが, 1例は心筋障害のため化学療法の継続が困難と判断されたことやHLA一致の血縁者がいたことから同種骨髄移植を行った.4例とも14-45カ月間のCCRを維持している.当センターではダウン症候群児に対しては薬剤投与量を体重換算で算出しており, このことがtreatment related deathを減少させるのに役立っていると思われる.化学療法の際に起こる合併症をいかに回避するかが, 本疾患を治療する上で重要である.
  • 田中 妥永子, 高橋 幸博, 橋本 和子, 箕輪 秀樹, 中 宏之, 吉岡 章
    1998 年 12 巻 1 号 p. 28-34
    発行日: 1998/02/28
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    In vitroで臍帯静脈血漿にplasminogen activator (PA) としてrecombinant tissue plasminogen activator (r-tPA) あるいはurokinase (UK) を加えた後, thrombin添加により凝塊を形成させ, その後の溶解度を成人血漿と比較検討した.対象は正期産新生児の臍帯静脈血30検体で, 方法はマイクロタイタープレートのwell内でクエン酸Na加血漿にCaCl2とα-thrombinとの混合液, 各種濃度のPA (r-tPAまたはUK) および生理的食塩水をそれぞれ25μlずつ添加して37℃で5分間孵置して凝塊を形成させた後, OD405nmでの吸光度を経時的に測定し, その溶解度を算出した.また, 生理的食塩水の代わりに各種濃度の第XIII因子 (FXIII) を添加して溶解度への影響をみた.r-tPAまたはUK添加時の溶解度は時間依存的およびPAの濃度依存的に増加した.r-tPA添加時の臍帯血漿由来の凝塊の溶解度は成人に比較して高く, r-tPAの終濃度0.3125μg/mlで, 開始後10および20分において有意に高値であった.一方, UK添加においては各濃度および各む時間において成人と臍帯血の間に差を認めなかった.さらに, FXIIIの添加による影響を検討したところ, FXIIIの濃度に応じて臍帯血漿凝塊の溶解度は低下した.したがって, tPAによる臍帯血漿凝塊の溶解度の亢進の要因のひとつとしてFXIIIの低値に起因するfibrin塊の脆弱性が考えられた.
  • 吉本 寿美, 安井 昌博, 岡村 隆行, 朴 永東, 遠藤 千恵, 茶山 公祐, 井上 雅美, 八木 啓子, 河 敬世
    1998 年 12 巻 1 号 p. 35-41
    発行日: 1998/02/28
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    造血幹細胞移植における中枢神経合併症は, 予後を左右する重篤な場合が多い.しかし, その予防法や早期診断, 治療法に関しては満足すべき具体策のないのが現状である.今回筆者らは, 1991年8月から1996年11月までに当センターにて同種造血幹細胞移植を行った97例のうち, 中枢神経合併症を発症した13例について臨床的検討を行った.頭蓋内出血, 梗塞, 白質脳症が各2例, くも膜下出血, 硬膜下血腫, 出血性梗塞, 陳旧性梗塞が各1例, 3例は画像診断上異常なしであった.それぞれの合併頻度は前処置別では, スタンダードリスク3例/47例 (6%), ハイリスク10例/56例 (18%), GVHD別では軽症 (≦II) が7例/89例 (8%), 重症 (III≦) が6例/14例 (43%) であった.また, 13例のうち生存者はわずか5例と予後不良であり, リスクファクターを明らかにすることによる予防法の確立と早期診断, 治療法の確立が急務であると思われた.
  • 渡辺 浩良, 阿部 孝典, 河野 嘉文, 中川 竜二, 岡本 康裕, 高上 洋一, 黒田 泰弘, 井上 雅美, 河 敬世
    1998 年 12 巻 1 号 p. 42-47
    発行日: 1998/02/28
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    難治性慢性活動性EBウイルス感染症 (chronic active Epstein-Barr virus infection; CAEBV) の10歳男児例を報告した.発熱, 顔面腫脹, 慢性副鼻腔炎, 肝機能障害を伴う肝脾腫および難治性下痢を認めCAEBVと診断した.抗ウイルス剤, high-dose γ-globulin, interferon-α, interleukin-2およびVP-16の投与に抵抗性で, 心タンポナーデや心室頻拍へと進行した.ステロイド剤 (ス剤) の投与を開始後, 不整脈の消失および心嚢液減少を認め, 心機能は末期まで保たれていた.しかし他の全身症状は改善なく, 入院約1年後に肝不全のため死亡した.ス剤の有効性が心病変に限られることから, 心病変とその他の病変との病態の違いが示唆された.
  • 小嶋 恭子, 麦島 秀雄, 七野 浩之, 椎原 弘章
    1998 年 12 巻 1 号 p. 48-53
    発行日: 1998/02/28
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    巨大縦隔内腫瘤を呈したKi-1リンパ腫の一例を経験したので報告する.患児は14歳の男児で咳Hと呼吸困難を主訴に近医を受診した.胸部X線写真にて巨大な縦隔内腫瘤を認め, 当院に入院した.CCLSGNHL 890プロトコールに準じ化学療法を開始したところ, 腫瘤の一時的な縮小を認めたため, 開胸生検を行い病理診断よりKi-1リンパ腫と診断した.しかし, その後も化学療法を続けたににもかかわらず腫瘤の縮小がみられなかったため, modified ABVD療法に変更し局所放射線照射を併用した.その後のsecond look operationの結果では残存腫瘤は線維組織に置換されており, 腫瘍細胞は認められなかった.治療終了後1年10カ月を経過した現在寛解を継続している.
  • 今井 正, 蓮池 和世, 岩瀬 孝志, 石井 禎郎, 伊藤 進, 大西 鐘壽
    1998 年 12 巻 1 号 p. 54-58
    発行日: 1998/02/28
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    症例は16歳の男子.急性リンパ性白血病の再発にて, HLA一致, MLC陰性の兄からABO不適合の同種骨髄移植 (donor AB型;recipient O型) を行った.移植後の造血細胞の回復が遅れ, G-CSFの投与にもかかわらず白血球が1,000/mm3以上となったのが移植後33日目であった.移植後120日目からエリスロポイエチン12,000単位/週の投与を行ったが赤血球, 血小板の増加はみられず200日以上の長期にわたって赤血球輸血 (ヘモグロビン値が7g/dl以下で輸血), 血小板輸血 (血小板数が2万/mm3以下で輸血) が必要であった.また, 移植後120日目から, 肝GVHD 1度がみられたが, サイクロスポリンAの投与により軽快した.骨髄検査でも赤芽球, 巨核球の低形成が続いたため, 兄から末梢血幹細胞移植を行った.G-CSF6μg/kgを12時間ごとに5日間連続に皮下注射し, 2日連続でアフェレーシスを行い十分な細胞数を採取して同種末梢血幹細胞移植を行った.最終の血小板輸血, 赤血球輸血はそれぞれ移植15日後と18日後であった.急性GVHD 1度 (肝, 皮膚) がみられたが, サイクロスポリンAの増量で軽快した.移植後造血能には問題なく現在完全寛解を維持している.
  • 鹿野 高明, 小林 良二, 石川 順一
    1998 年 12 巻 1 号 p. 59-64
    発行日: 1998/02/28
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    症例は, 現在8歳である.患児は, 生後3カ月時に川崎病の典型的な症状を示した.1歳3カ月時, 発熱と発疹が出現, 骨髄に血球貧食像はみられなかったが, 血清ferritin値の著増, 汎血球減少より血球貧食症候群を疑った.2歳6カ月時, 同様の所見がみられ, 骨髄にも血球貧食像を認めたことより血球貧食症候群と診断した.6歳時, 発熱・発疹・関節痛が出現し若年性関節リウマチと診断した.血球貧食症候群と若年性関節リウマチの診断時は可溶性IL2レセプターの増加がみられたことよりT細胞の活性化が示唆された.川崎病, 血球貧食症候群, 若年性関節リウマチは臨床症状の類似する点が多く, 高サイトカイン血症を特徴とする病態である.この3病態が同一患者にみられた興味ある症例を報告する.
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