日本小児血液学会雑誌
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10 巻, 1 号
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  • A UK Perspective
    A.W. CRAFT
    1996 年10 巻1 号 p. 1-7
    発行日: 1996/02/29
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
  • 伊藤 悦朗, 土岐 力
    1996 年10 巻1 号 p. 8-17
    発行日: 1996/02/29
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    血液幹細胞が, どのような仕組みで分化の方向が決定されるかはまだ不明である.しかし, 細胞系列特異的な転写を直接コントロールする赤血球特異的転写因子の最近の発見は, この問題を解決するための手段を与えてくれた.GATA-1転写因子は赤血球造血に必須な因子であり, WGATARというコンセンサス配列に結合する因子群に属する.GATA-1遺伝子には二つのプロモーターが存在し, 組織特異的にそのプロモーターが使い分けられている.GATA結合配列はグロビン遺伝子やその他の赤血球特異的遺伝子のシス調節領域で最初に見出されたものであるが, GATA因子群によってコントロールされる遺伝子の範囲はもっと広いことが明らかになってきた.GATA因子群はよく保存されたZn-フィンガーDNA結合ドメインを共通に持つが, それぞれの発現パターンは各因子により異なっている.第二の赤血球系転写因子NF-E2は, p45とp18 (小maf蛋白の一つ) 蛋白のヘテロダイマーであり, 赤血球特異的な遺伝子の発現と血小板造血にとって重要な調節因子である.p45 NF-E2遺伝子にも二つのプロモーターが存在し, どちらかのプロモーターが選択的に使われてmRNAが合成されるが, どちらのプロモーターが使われても同じ蛋白が翻訳される.血液幹細胞が, どのような仕組みで分化の方向が決定されるを理解するための最初のステップは, これらの細胞系列特異的な転写因子そのものの発現調節機構を解析することである.
  • 高橋 義行, 小島 勢二, 加藤 剛二, 松山 孝治
    1996 年10 巻1 号 p. 18-21
    発行日: 1996/02/29
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    小児特発性血小板減少性紫斑病 (ITP) 27例の発症早期に大量γグロブリン療法を行った.25/27 (92.6%) に20,000/μl以上の血小板増加効果が得られ, 発症早期の出血症状のコントロールに有用であった.副作用は発熱が3/27 (11.1%), 熱性痙攣が1/27 (3.7%) にみられたのみであった.発症早期の大量γグロブリン投与にもかかわらず, 8/27 (29.6%) が慢性型へ移行し, 従来の無治療経過観察例やステロイドによる治療例の慢性型への移行率の報告 (10~40%) と比較して差がなかった.治療前の臨床検査所見からは慢性型への移行を予知することは困難であった.今後は費用対効果を考慮した小児急性ITPの最適な治療法につき, prospectiveな研究が望まれる.
  • 菅野 弘之, 菊田 敦, 細矢 光亮, 鈴木 仁
    1996 年10 巻1 号 p. 22-28
    発行日: 1996/02/29
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    末梢血幹細胞 (PBSC) の至適採取時期を決定するために小児白血病および固形腫瘍21例に対して, 採取前化学療法後に造血因子を投与し, のべ64回のアフェレーシスを行い, PBSCの動態および採取量について検討した.採取時の網赤血球分画のhigh fluorescence ratio (HFR) と, 採取したCFU-GM数およびCD34陽性細胞数との間に正の相関が認められ, PBSCの採取量は, HFR 10%以上の群で有意に増加していた.造血回復過程における末梢血中のHFR, CFU-GM数, CD34陽性細胞数は, ほぼ一致した流出動態を示し, HFRの最高値を0日とした場合に, CFU-GM数とCD34陽性細胞数は, それぞれ0~2日, 0~3日の間に最高値に達し, その後急速に減少した.すなわち, HFRはPBSCの流出動態をよく反映していると考えられるので, 幹細胞採取に際して有用な指標になり得ると考えられた.
  • 日本小児血液学会骨髄移植委員会
    1996 年10 巻1 号 p. 29-41
    発行日: 1996/02/29
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    日本小児血液学会骨髄移植委員会は, 1983年より毎年, 我が国の小児における骨髄移植の全国集計を行っている.1995年6月30日現在, 120施設において2,686例の造血幹細胞移植が行われていた.その内, 自家骨髄移植と末梢血幹細胞移植は, 主として血液・固形悪性腫瘍に行われており, 前者は623例 (325例生存), 後者は509例 (321例生存) であった.同系・同種骨髄移植は1,503例に行われていた.その内, 急性リンパ性白血病は461例 (222例生存), 急性骨髄性白血病は351例 (223例生存), 成人型慢性骨髄性白血病は95例 (61例生存), 若年性慢性骨髄性白血病は9例 (5例生存), 非Hodgkinリンパ腫は65例 (49例生存), 固形悪性腫瘍は45例 (25例生存), 重症再生不良性貧血は240例 (211例生存), 重症複合免疫不全症は42例 (20例生存), その他が98例 (73例生存) であった.骨髄バンクドナーからの移植は120例に行われており, 統計的無病生存率は52.4±9.7%である.臍帯血移植は3例, 同種末梢血幹細胞移植は2例であった.
  • 具志堅 俊樹, 百名 伸之, 知名 耕一郎, 平山 清武
    1996 年10 巻1 号 p. 42-45
    発行日: 1996/02/29
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    患児は11カ月の男児で, 生後10カ月時に汎白血球減少のため当科へ入院した.白血球数2,630/μl, 血色素7.4g/dl, 血小板数16,000/μlで, 骨髄中に芽球が7.4%みられた.汎血球減少は無治療で改善し, 骨髄中の芽球も消失した.1月後に肛門周囲膿瘍で, 当科へ再入院した.白血球数6,900/μlで芽球が21%認められた.骨髄中に芽球が26%みられた.芽球はmyeloperoxidase陰性で, 表面マーカーはCD7, CDl3, CD33が陽性であった.染色体の核型は47, XY, t (7;12), +19であった.FAB分類MOと診断し, pirarubicin, vincristine, cytarabineによる治療で寛解に導入できた. MOは, 新しい白血病の病型であり, 報告例が少ないためにその臨床像は不明な点が多い.本症例は, 汎白血球減少の自然寛解と芽球の消失後に白血病が発症しており, M7の臨床経過に類似していた.また本症例は芽球がPPO陽性で, M7の性状の一部を持つ病型と考えられた.
  • 柴田 優, 窪田 容子, 橋本 和子, 吉田 裕慈, 今中 康文, 高橋 幸博, 佐道 俊幸, 島本 太香子, 下山 丈人, 藤村 吉博, ...
    1996 年10 巻1 号 p. 46-50
    発行日: 1996/02/29
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    先天性好中球減少症に合併した壊疽性膿瘡の1新生児例に, rhG-CSFを用いて治療し, 良好な経過を得た.症例は, 男児で, 日齢4より肛門周囲に深い紅斑がみられ, 急速に壊疽性病変となり, 辺縁鋭利な潰瘍に進行した.末梢血好中球の著しい減少 (200/μl) がみられたため, 強力な抗生剤治療に加え, rhG-CSFを投与した.rhG-CSFの投与 (10→25→40μg/day) により, 好中球数はすみやかに増加し, 肛門周囲病変も治癒した.rhG-CSF投与下ではあるが, 骨髄像は骨髄顆粒球系細胞の低形成を示しており, 血清中に抗好中球抗体は検出されなかった.rhG-CSFの連日投与から間欠的投与への移行後も好中球数は300/μl以上であり, 重篤な感染症には罹患せず良好に経過している.なお患児の母も易感染性はみられていないが, 好中球数の持続的な減少 (200~500/μl) を示している.したがって, 自験例では新生児期に重篤な感染症に罹患したものの, その診断は家族性良性慢性好中球減少症と考えられた.rhG-CSFは重症感染症の治療と予防上極めて有効であった.
  • 東野 克巳, 鈴木 淳史, 杉浦 康夫, 多賀 崇, 太田 茂, 島田 司巳
    1996 年10 巻1 号 p. 51-55
    発行日: 1996/02/29
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    症例は初発時1歳3カ月の男児.貧血, 血小板減少, 顔面打撲部の皮下出血などを認め当科紹介入院となった.骨髄検査により急性白血病と診断 (骨髄中に芽球が76%) されたが細胞形態, 組織化学的にはFAB分類不能であった.最終的に表面マーカー検索でmixed lineage leukemia (MLL) と診断し得た.骨髄染色体は47, XY, +21, 12p+.種々の化学療法を継続し寛解を維持した.患児2歳11カ月時に末梢血幹細胞移植 (PBSCT) を実施し, 治療終了とした.移植7カ月後の骨髄検査で少数ながら (20細胞中の1細胞) 初発時同様の染色体異常が検出されたため, 約7カ月間6-mercaptopurine内服によるadjuvant therapyを行った.PBSCTは患児のような幼少児期発症のMLLに対しても有効な治療法の一つであるが, 症例によっては本例のようなadjuvant therapyも必要ではないかと考えられた.
  • 成宮 正朗, 太田 茂, 多賀 崇, 鈴木 淳史, 東野 克巳, 島田 司巳
    1996 年10 巻1 号 p. 56-60
    発行日: 1996/02/29
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    8歳時発症のCMMoLの1女児例を報告した.患児は, 骨髄バンクにて適合ドナーが得られず, etoposide (VP-16), prednisolone (PSL) などを中心とした化学療法を行った.しかし1症状の改善がみられず, cytosinearabinoside (Ara-C) のprodrugであるcytarabine ocfbsfate (SPAC) による治療を行った.SPACによる治療は, 50mg/日の連日2週間内服を3クール, さらに100mg/日に増量して2クール行った.治療中, 骨髄抑制などの副作用はみられず, 血小板数は逆に増加した.このため, 患児は通学が可能となりQOL面での改善が顕著であった.最終的には, 骨髄所見の改善がみられず, 治療を変更したが, 6カ月後に急性呼吸不全を来し死亡した.骨髄異形成症候群 (MDS) のような予後不良の疾患においては患児のQOLを考慮することが重要であり, MDSの骨髄移植不能例では, SPACは選択すべき治療の一つと考えられた.
  • 前田 美穂, 渡辺 淳, 大木 由加志, 山本 正生
    1996 年10 巻1 号 p. 61-64
    発行日: 1996/02/29
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    中学校の成人病検診でHbAICの低値を指摘されヘモグロビン分画を調べたところ, 高速液体クロマトグラフィーおよびセルロース・アセテート膜電気泳動においてHb A0とHb A2との間に異常ヘモグロビンの存在が認められた13歳の女児を経験した.異常ヘモグロビンの構造解析でβ鎖グロビンの56番目のglycineがarginineに置換されており, Hb Hamadanと同定された.家族について検索を施行したところ, 兄にも同様の異常が発見された.Hb Hamadanは無症候性の異常ヘモグーロビン症の一つであり, 近年, 健康診断や糖尿病の管理にHb A1cの測定が一般的になったことに伴い, 発見される機会が増加している.
  • 甲斐 丈士, 野村 豊樹, 岩本 彰太郎, 武 弘道
    1996 年10 巻1 号 p. 65-69
    発行日: 1996/02/29
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    本邦3例目となるHPA-3a不適合による新生児同種免疫性血小板減少性紫斑病 (NATP) の兄弟例を経験した.母親に血小板減少症はなく, 妊娠分娩歴に異常はなかった.両児とも出生後早期より血小板減少 (3生日 ; 2.0×104/μl, 0生日 ; 10×104/μl) による紫斑を認めた.第2子は頭蓋内出血を起こした.感染などによる紫斑病が否定されたためNATPを疑い精査したところ, 出産時の母親の血清中に両患児と父親の血小板と反応するHPA-3a抗体とHLA抗体が検出された.両児ともγ-グロブリン大量静注療法をうけたが血小板数が10.0×104/μ1を超えたのは生後4週以降であった.第2子においてランダムドナー血小板輸血が一過性に有効であった.NATPは生命に関わるあるいは神経学的後遺症を残す頭蓋内出血の頻度が高く, 新生児期の早急で適切な診断と治療が必要である.
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