日本小児血液学会雑誌
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6 巻, 6 号
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  • PCR法による診断と集学治療における意義
    横田 昇平, 芹生 卓
    1992 年 6 巻 6 号 p. 539-547
    発行日: 1992/12/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    白血病治療は小児ALLを中心にめざましい成果をあげてきた.骨髄移植, 末梢血幹細胞移植, サイトカィンによる治療などによりさらに予後の改善が期待されている.微小残存病変 (MRD) の診断は治療効果を判定し効果的な治療計画をたてるために重要と考えられてきたが, ごく微量の腫瘍細胞を検出するのに技術的困難があった.PCR法は104~106に1個の感度でMRD診断を可能とし, 従来知られなかったその病態が明らかになりつつある.PCRを用いたMRD診断には9;22転座など染色体転座に基づく遺伝子再構成を利用する方法とT細胞受容体, 免疫グロブリン遺伝子の再構成を利用する方法が代表的である.ここでは各種方法を解説しながらMRD診断法を概説し, 小児がん白血病研究グループ (CCLSG) に登録され集学的に治療を受けている症例群でTCRδ鎖遺伝子再構成を利用してMRD検索を行った結果についても解説する.
  • ALL, NHLの中枢神経浸潤と感染症との鑑別
    岡崎 敏子, 齋藤 みどり, 鈴木 敏雄, 森 泰二郎, 杉田 完爾, 木下 明俊, 黒沢 祥浩, 細谷 亮太, 中澤 眞平
    1992 年 6 巻 6 号 p. 548-553
    発行日: 1992/12/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    間接免疫ロゼット法により, 寛解中に髄液の白血球増多の見られた患児8例 (common ALL6例, T-ALL1例, T-NHL1例) と無菌性髄膜炎患児10例の髄液白血球の膜抗原検索を行った.髄液白血球が初発時芽球と一致した膜抗原発現が認められた患児6例は, 髄注後, 髄液白血球は速やかに減少し, 経過からも中枢神経浸潤 (CNS浸潤) と考えられた.初発時芽球で見られた膜抗原の有意な発現が認められず, 無菌性髄膜炎と同様にTリンパ球系抗原 (CD2, CD3), 骨髄単球系抗原 (CD13, CD14) の発現が認められた2例は, 経過からもCNS浸潤は否定的で, 経過中に無菌性髄膜炎を併発したと考えられた.間接免疫ロゼット法は, 少数の細胞でも検索が可能で, 髄液白血球の膜抗原検索に優れた方法であり, CNS浸潤と無菌性髄膜炎との鑑別診断が可能であった.
  • 磯山 恵一, 今井 満, 広田 保蔵, 山田 耕一郎, 石川 昭, 鈴木 孝夫
    1992 年 6 巻 6 号 p. 554-559
    発行日: 1992/12/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    増殖細胞核抗原 (PCNA) は増殖細胞に関連する核内蛋白質であるとされている.PCNAの免疫反応性は正常組織や細胞の増殖期に認められることが明らかになっている.今回の検討では, 臍帯血単核細胞をPHAで刺激した場合のPCNA陽性率とS-G2/M期細胞率が相関することが示された.臍帯血単核細胞と部分純化された造血幹細胞と考えられる臍帯血CD34陽性細胞のPCNA陽性率は, いずれも5%以下であった.臍帯血単核細胞をPHAで刺激した場合, 72時間でPCNA陽性細胞は増加した.しかし, 両者をrhIL-3で刺激した場合には培養7~10日PCNA陽性細胞が増加した.PCNA免疫反応は造血幹細胞の増殖期細胞を示すことが可能である.これらの成績は, この方法が造血幹細胞の増殖期に入っている細胞を検討するための新しい方法を示したものと思われる.
  • 生嶋 聡, 日比 成美, 今宿 晋作
    1992 年 6 巻 6 号 p. 560-568
    発行日: 1992/12/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    本邦小児科領域におけるHPSの病因病態を明らかにするために全国アンケート調査を行い, 98例 (VAHS72例 (男 : 女=40 : 32), MH20例 (10 : 10), FEL6例 (3 : 3)) を集計した.VAHSの好発年齢は2歳未満 (39%) で, 死亡率は31%に達し, 男児の死亡率が高かった (男児40%, 女児19%).原因ウィルスの判明した38例中28例がEBVであった.MHも発症年齢のピークは2歳未満 (55%) で, 死亡率は75%に達した.MHのうち免疫組織学的に詳細に調べられた症例では, 組織球系のマーカーとともにT cell系のマーカーも同時に陽性を示す場合が多く, MHはTcel1系細胞の増殖を伴った病態である可能性が示唆された.アンケートの回収率より本邦小児科領域でのHPSの発症数は年間約50~70例と推定された.その総死亡率は高く (41%), 発症年齢, 臨床症状, 一般的検査所見などからVAHS, MH, FELの三者を鑑別することは不可能であり, 適切な治療法の選択のうえからも新しい診断法の確立が急務と考えられた.
  • 倉橋 浩樹, 多和 昭雄, 大杉 夕子, 坂田 尚己, 井上 雅美, 原 純一, 勇村 啓子, 河 敬世
    1992 年 6 巻 6 号 p. 569-573
    発行日: 1992/12/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    5例のB cell lymphomaを短期決戦型プロトコールで治療し, うち2例が2年以上完全寛解を続けている.本プロトコールは, 欧米のプロトコールをもとにしたもので, その特徴は, (1) 早期治療の強化, (2) 中枢神経系 (CNS) 予防の強化, (3) 治療期間の短縮, の3点である.治療の合併症の多くは強力な支持療法によりコントロール可能であるが, CNS予防の強化にともなう白質脳症の発症が問題として残った.また, CNS浸潤のある症例はなお予後が悪く, 骨髄移植を含めたさらなる治療の強化が必要と思われた.
  • 原田 工, 有吉 宣明, 白幡 聡, 金 平榮
    1992 年 6 巻 6 号 p. 574-579
    発行日: 1992/12/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    Lupus anticoagulant (以下LAC) および抗リン脂質抗体 (以下APA) が小児の特発性血小板減少性紫斑病 (以下ITP) の出血症状や血小板結合IgG型免疫グロブリン (以下PAIgG) 値へ及ぼす影響をITP患児29例を対象として検討した.1) LAC陽性は29例中15例 (55検体中19検体) で, 病型別の内訳では急性型ITPが13検体中5検体, 慢性型ITPが32検体中11検体, 再帰型ITPが8検体中3検体, エバンス症候群が2検体中0検体であった.2) LAC陽性検体でPAIgG値が有意に高値であり, 複数回LACとPAIgG値を測定した症例の大部分がPAIgG値の正常化に伴いLACが陰転したため, LACがPAIgG値に影響を及ぼしていることが示唆された.3) LACとAPAとの間に関連性は認められなかった.4) LACと出血症状の問にも関連性は認められなかった.
  • 北原 琢磨, 中園 伸一, 嶽崎 俊郎, 川上 清, 宮田 晃一郎
    1992 年 6 巻 6 号 p. 580-585
    発行日: 1992/12/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    1977年から1991年に当科に入院した小児重症および中等症再生不良性貧血13症例に対する免疫抑制療法の治療効果を検討した.重症例は6例, 中等症は7例であった.年齢は1歳から15歳5ヵ月 (平均8歳6ヵ月) で, 男児11例, 女児2例であった.免疫抑制療法は, 副腎皮質ホルモン剤および蛋白同化ホルモン剤投与, メチルプレドニゾロン・パルス療法, 抗リンパ球グロブリン (ALG) 療法, サイクロスポリンA (CyA) 療法, γ-グロブリン大量療法を行った.副腎皮質ホルモン剤および蛋白同化ホルモン剤のみで治療されたのは5例で, うち3例に有効であった.メチルプレドニン・パルス療法は, 8例に施行され2例に有効であった.サイクロスポリンA療法は2例中1例に有効であったが, ALG療法, γ-グロブリン大量療法は無効であった.Kaplan-Meier法による170ヵ月での生存率は42.2%であった.
  • 木住野 達也, 南雲 淳, 石川 信義, 畑江 芳郎, 武田 武夫
    1992 年 6 巻 6 号 p. 586-591
    発行日: 1992/12/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    骨病変を初発症状としたホジキン病の1例を経験したので報告する.患児は12歳男児で持続する発熱と左胸壁の腫瘤を主訴に来院した.CT上, 左第6肋骨の硬化性骨病変と前縦隔リンパ節腫脹が認められ, 67Gaシンチグラムでは左下胸部に集積像が認められた.肋骨部腫瘤の病理組織像よりポジキン病 (リンパ球減少型, CSIIE-B) と診断した.COPP療法を3クール施行し腫瘤は消退したが, 間欠的な発熱が持続したためCOPP療法にかわってABVD療法を施行した.現在まで22ヵ月たつが再発の兆候をみていない.
  • 阿部 孝典, 高上 洋一, 渡辺 力, 佐藤 純子, 斎藤 慎一, 清水 隆史, 岡本 康裕, 鈴江 毅, 河野 嘉文, 黒田 泰弘
    1992 年 6 巻 6 号 p. 592-594
    発行日: 1992/12/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    自家末梢血幹細胞移植術あるいは同種骨髄移植術を48名に計50回施行し, うち3名にsyndrome of inappropriate secretion of antidiuretic hormone (SIADH) が合併した.多量の輸液療法施行下における大量methy16- [3- (2-chloroethyl) -3-nitrosoureido] -6-deoxy-α-D-glucopyranoside (MCNU) またはcyclophos-phamideの投与が原因と考えられた.超大量化学療法に伴うSIADHの発生頻度は高く, 血清ナトリウム濃度や血漿浸透圧の頻回検査による観察が重要と考えられた.
  • 下河 達雄, 高上 洋一, 渡辺 力, 河野 嘉文, 二宮 恒夫, 黒田 泰弘
    1992 年 6 巻 6 号 p. 595-598
    発行日: 1992/12/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    11歳の縦隔原発T細胞性悪性リンパ腫の男児例に対し, 第一寛解期に自家末梢血幹細胞移植術を施行した.前処置はbusulfan 16mg/kgとMCNU 600mg/m2を使用し, その後凍結保存した末梢血幹細胞 (cFU-GM32×104/kg) を輸注した.移植後14日目には穎粒球数は500/μ1以上となり, 重篤な合併症も認められなかった.移植7週目よりMCNUに起因する間質性肺炎を合併したが, ステロイド投与により治癒し, 1年後に発生した帯状庖疹も重症化することなく治癒した.患児は移植後無治療で44ヵ月無病生存中である.末梢血幹細胞移植術は予後不良の腫瘍に対し有効な治療法であり, 治療期間の短縮も可能となる.
  • 和田 靖之, 福永 謙, 北島 晴夫, 和田 紀之, 久保 政勝
    1992 年 6 巻 6 号 p. 599-603
    発行日: 1992/12/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    Fluconazole (FCZ) は抗真菌効果に優れ, 比較的副作用が少ないということより近年よく用いられている.今回われわれは, 慢性肉芽腫症患児の同剤の治療中に巨赤芽球性貧血 (MBA) の併発した1例を経験した.患児は8歳の男児で, FCZ投与後8週間経過したころより汎血球減少症を含む大球性高色素性貧血が出現した.骨髄穿刺所見では好中球の過分葉, giant metamyelocytes, 赤芽球系では巨赤芽球の出現, 核の変形, 分葉化, 切れ込み, また巨核球を含めた骨髄有核細胞において核一細胞質解離がみられた.血清葉酸低値より, 葉酸欠乏性貧血と診断した.その後葉酸の投与とFCZ, sulfamethoxazol と trimethoprimの合剤 (ST) の投与中止により2週間で改善した.STがMBAを発症することはよく知られているが, 本症例は入院前よりSTを服用しており, 貧血がみられていないことなどから, FCZが本症例の貧血の発症になんらかの関与をしたと考えられた.
  • 多発性真菌膿瘍のカテーテル療法
    平野 浩一, 藤井 裕治, 遠藤 彰, 本郷 輝明, 五十嵐 良雄, 山本 崇晴, 増井 博行
    1992 年 6 巻 6 号 p. 604-609
    発行日: 1992/12/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    真菌性肝脾膿瘍を合併したAML (M2) 8歳, 男児症例に対し, 摘脾, 門脈・肝動脈カテーテルからの抗真菌剤 (AMPH, FCZ) 持続投与, AMPH経口大量療法 (1mg/kg/d) による治療を行った.カテーテルからの抗真菌剤投与は, 肝動脈カテよりAMPHlmg/kg/d (平均), 総量1,484mgカテーテル留置81日間, 門脈カテよりAMPHlmg/kg/d, 総量1,395mg投与75日間, FCZ100mg/d投与61日間, カテーテル留置136日間であった.経過観察にはCT, エコー, CRPが有益であった.カテーテル治療中, AMPH投与に係わる重大な合併症は認めなかった.真菌性膿瘍治療後, HLA一致, MLC陰性ドナー (姉) よりの同種骨髄移植を施行したが, 真菌症の再燃は認めず, 現在, 移植後1年半を経て経過良好である.
  • 小林 瑛児, 磯山 恵一, 黒川 叔彦, 石川 昭
    1992 年 6 巻 6 号 p. 610-613
    発行日: 1992/12/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    心不全にともなう貧血に対し, 遺伝子組換えヒトエリスロポエチン (rhEpo, 以下Epo) の投与を行う経験を得た.患児は, 新生児期より心室中隔欠損による重症心不全を呈し, しだいにうっ血性心不全による貧血が進行した.抗心不全療法を行うとともに, 貧血にたいして輸血に代えEpoの投与を行ったところ, 貧血の改善とともに心不全も改善傾向がみられた.
  • 慢性骨髄性白血病患児の同胞出生時に採取した臍帯血を用いて
    鈴木 信寛, 加藤 静恵, 工藤 亨, 本間 公祐, 千葉 峻三
    1992 年 6 巻 6 号 p. 614-617
    発行日: 1992/12/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    Human leucocyte antigen (HLA) 適合ドナーが得られなかった2歳の若年性慢性骨髄性白血病の患児の同胞が出生した際に臍帯血の採取, 保存を行った.臍帯, 胎盤血は穿刺採血し, 赤血球除去を行わずにプログラム・フリーザーで凍結し液体窒素中に保存した.得られた有核細胞数は0.79×108個/kg (患児体重) で, コロニー数としては2.12×104BFU-E/kg, 2.41×104CFU-GM/kgであった.得られた細胞数は実際に臍帯血を用いて移植を行った報告例と同程度の採取量であった.しかし患児と同胞のHLAが一致しなかったため同胞からの移植は不可能であった.今後本症例のような状況の場合, 臍帯血を採取しておくことにより, 新生児から骨髄血を採取することなく同種骨髄移植を行える可能性があると考えられた.
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