日本小児血液学会雑誌
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2 巻, 1 号
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  • 赤塚 順一
    1988 年 2 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1988/01/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    血小板抗体検索に関する伝統的な方法は, 免疫血小板減少症に対するPAIgG測定法が導入されて以来, その感度および再現性の低さのために価値が減少した.この論文では, 多数のPAIgGのassay法について方法論からコメントした.PAIgGの測定は, 免疫性血小板減少性疾患の診断及び経過観察にきわめて有用である.このテストはITPにとって特異的なものではないが, PAIgGの臨床医学への導入は, 血小板減少の原因の解決に, 原因不明のものも含めて, 計りしれない情報を提供するものと思われる.
  • 松岡 初文, 井上 恵祥, 片野 直之, 村上 正, 佐々木 邦明, 藤本 孟男
    1988 年 2 巻 1 号 p. 9-12
    発行日: 1988/01/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    酵素阻害 (EIA) 法によるmethotrexate (MTX) 大量療法の血中濃度モニターで, trimethoprim, sul-famethoxazole (ST合剤) 服用中の2症例で臨床毒性と相関しない高値を呈したので, 高速液体クロマトグラフィー (HPLC) 法で血清を分析し, ST合剤がEIA法に及ぼす影響を酵素dihydrofolate reductase (DHFR) 阻害率より検討した.HPLC法では2症例とも血中MTXは毒性閾値濃度 (48時間目 : 5.0×10-7M) 以下であった.trimethoprimはMTXの1/7のDHFR阻害能を示し, EIA法でHPLC法の2~3倍の血中MTX濃度高値を呈した主因はtrimethoprimの影響であることが確認された.MTX投与前後はST合剤の投与を中止し, EIA法で血中濃度が高値の場合は特異的測定法であるHPLC法で確認することが重要と考えられた.
  • 二宮 恒夫, 広瀬 政雄, 高上 洋一, 渡辺 力, 大内 徹, 佐藤 純子, 小山 啓也, 阿部 孝典, 鈴江 毅, 村川 和義
    1988 年 2 巻 1 号 p. 13-19
    発行日: 1988/01/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    Cytosinearabinoside (Ara-C) は急性非リンパ性白血病を中心にご使用されている抗癌剤であるが, その効果は症例によりまちまちである.われわれは急性白血病の再発例あるいは寛解導入不能例からえられた白血病細胞のAra-C による3H-thymidine のとりこみの阻害程度を調べ, 臨床効果との相関を検討した.方法 : RPMI 1640 (25 mM Hepes buffer と30%自己血清を含む) に浮遊させた白血病細胞1~2×105個とAra-C (最終濃度30 ng/ml) をマイクロプレートで反応させ5時間と24時間反応後に0.2 μCi の3H-thymidine を入れ, セルハーベスターにて細胞を回収し, 放射活性をシンチレーションカウンターにて測定した.結果 : 5時間反応後のとりこみの阻害程度が24時間反応後も同じ程度阻害されていた3例 (再発例) が, Ara-C 少量投与にて寛解に至った.24時間反応後のとりこみが5時間反応後より多くなる症例は, Ara-C大量あるいは通常投与量で寛解しなかった.
  • 福田 稔, 堀部 敬三, 小島 勢二, 松山 孝治
    1988 年 2 巻 1 号 p. 20-24
    発行日: 1988/01/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    骨髄移植患児22例に対し, 完全無菌管理を行った.内服の抗菌剤を確実に投与するため, 全例に胃チューブを挿入し, 約1ヵ月間留置した.胃チューブの機械的刺激による出血, 穿孔などのトラブルは起きなかった.患児の細菌検査では咽頭において, 緑膿菌およびカンジダの検出率の増加が発熱とともにみられた.5例に緑膿菌または黄色ブドウ球菌による口腔内感染症が発生したことから, 胃チューブから内服の抗菌剤を投与する場合, 口腔内の無菌化をさらに強化する必要があると考えられる.
  • 林 泰秀, 花田 良二, 山本 圭子
    1988 年 2 巻 1 号 p. 25-28
    発行日: 1988/01/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    小児7モノソミー症候群と若年型慢性骨髄性白血病 (JCML) とは同じ疾患であるか否か問題になっている.小児7モノソミー症候群4例とJCML6例の臨床像を検討し報告した.両疾患は年齢, 性比, 血小板数, 好中球アルカリフォスファターゼスコア, ヘモグロビンFの割合, 血清リゾチーム値, 造血幹細胞の性状等で異なった所見が得られ, 両者は異なる疾患 (disease entity) と考えられた.染色体分析をされてないこれまでのJCML症例のなかに7モノソミー症候群が含まれている可能性がある.染色体の高精度分染法や分子遺伝学的解析を通じて両者の本態が明らかにされるかもしれない.
  • 伊東 亮助, 横山 〓
    1988 年 2 巻 1 号 p. 29-36
    発行日: 1988/01/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    ラットにアセチルフェニルヒドラジンを投与して溶血性貧血を惹起させ, 溶血開始より貧血回復までの過程を種々造血のパラメータの経時的変動として捉え, その結果から赤血球造血の順序を推定した.また, 鉄欠乏性貧血, 溶血性貧血, 再生不良性貧血および急性白血病患者において赤血球GOT活性を測定し, 赤血球造血の亢進が推定される病態において, その活性上昇が認められた.
  • 永井 淳一, 鈴木 弘文, 気賀沢 寿人, 西平 浩一, 鈴木 信寛, 飯塚 敦夫, 長尾 大
    1988 年 2 巻 1 号 p. 37-41
    発行日: 1988/01/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    われわれが実施した同種骨髄移植6例と自家骨髄移植6例の末稍血液細胞の回復について比較検討を行った.対象疾患は, 同種骨髄移植は, ALL4例, AML1例, NHL1例, 自家骨髄移植は, ALL1例, NHL3例, 卵黄嚢癌2例であった.移植前処置は, 全例強力な化学療法と12Gyの全身照射を施行した.その結果, 自家移植群で同種移植群より早期にリンパ球数の回復を認めた.しかし, 好中球数, 血小板数においては自家移植群のほうが同種移植群より回復が遅かった.網状赤血球と単球数の回復については, 2群に有意な差は認めなかった.今回の結果から, 現在行われている骨髄血の凍結保存方法にはさらに改善する点があると考える.
  • 日本小児血液学会骨髄移植委員会
    1988 年 2 巻 1 号 p. 42-47
    発行日: 1988/01/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    骨髄移植委員会は, 小児期骨髄移植の全国集計を1983年より毎年行ってきた.1987年6月30 日現在, 45施設において326例の移植が行われていた.その内訳は, ALL 92例 (うち37人生存中), ANLL64例 (38人生存中), CML 11例 (9人生存中), NHL 21例 (12人生存中), 悪性腫瘍60例 (30人生存中), 再生不良性貧血45例 (40人生存中), 重症複合型免疫不全症21例 (6人生存中), その他12例 (10人生存中) である.その詳細について報告する.
  • 麦島 秀雄, 藤沢 孝人, 川田 孝吉, 市川 正孝, 高橋 英夫, 鈴木 孝, 陳 基明, 大国 真彦, 馬場 一雄, 岡部 郁夫, 岩田 ...
    1988 年 2 巻 1 号 p. 48-53
    発行日: 1988/01/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    3歳男児のStage IVA神経芽細胞腫症例にmagnetic immunobeads処理骨髄を用いて自家骨髄移植を行った.寛解導入療法としては, cyclophosphamide, VCR, THP-ADM, CisDDPの4剤を4週間ごとに4クール終了後, 原発巣である左副腎を摘出し, 残存リンパ節塊に15Gyの開創照射を施行した.腫瘍のN-mycは30コピーと増幅がみられた.Magnetic immunobeads処理骨髄細胞を凍結保存し, 移植前処置としてmodified VAMP-TBIを行い, 1986年7月17日にpurged marrow cellを移植した.患児は, 移植後1年以上完全寛解を維持している.強力な化学放射線療法と腫瘍細胞を除去した自家骨髄移植は, 進行性NBの予後の改善に期待できる治療法と思われる.
  • 生田 孝一郎, 深沢 啓治, 佐々木 秀樹, 小磯 良孝, 奥山 利也, 船曳 哲典, 梶ケ谷 保彦, 甲斐 純夫, 松山 秀介
    1988 年 2 巻 1 号 p. 54-60
    発行日: 1988/01/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    23年間に120例の小児ITPを治療した.これらの臨床像を解析し, 急性型における副皮ホルモンの効果, 慢性型の長期予後につき検討した.急性81, 慢性31, 再帰性6, 不明2であった.男62, 女58と性差を認めなかった.1歳未満が23例と最も多く, 加齢とともに減少する傾向を認めた.約半数に先行感染を認めた.発疹性疾患では全例急性型であった.急性型における血小板数の回復は, 副皮ホルモン使用群と非使用群において差を認めなかった.病初期に頭蓋内出血により2例が死亡した.副皮ホルモンの適応は出血傾向の程度により判断すべきと思われた.慢性型では26例中17例が, 8ヵ月から12年 (中央値38カ月) で自然寛解した.晩期の自然寛解もあるので, 脾摘の適応は出血傾向の強い難治例に限るべきと思われた.脾摘は7例で行われ5例で寛解, 2例で臨床的効果を認めた.大量免疫グロブリン療法は4例で行われ3例で急速な血小板の増加を認めた.適応を選べば有効な治療法と思われた.
  • 落合 秀江, 東川 正宗, 大久保 俊樹, 川崎 肇, 神谷 斉, 桜井 実
    1988 年 2 巻 1 号 p. 61-67
    発行日: 1988/01/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    6-MPと6-TGは急性白血病の治療によく用いられるが, その薬理学的な機序について十分な知見を得られていない.ML-1細胞とCCRF-CEM細胞を用いていかにして6-MP, 6-TGが細胞毒性を呈するのかを明らかにするためにHPLCを用いてthiopurinesの活性化代謝産物を分析した.抽出はTCAで行い, freon-alamineで中和した.6-TGの活性化代謝産物はthio-GMP, -GDP, -GTPであり, 6-MPのおもな活性化代謝産物はthio-IMPと考えられた.6-TGはpurine pathwayを阻害するだけでなくDNA合成になんらかの影響をあたえることも考えられた.6-MPは濃度を10-4Mにまで上昇させてもthio-IDP, -ITPは検出できなかったことから, おもにthio-IMPがpurine pathwayを阻害し細胞毒性を呈すると考えられた.
  • BH-ACとAraCの比較
    月本 一郎, 土田 昌宏, 塙 嘉之
    1988 年 2 巻 1 号 p. 68-73
    発行日: 1988/01/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    小児急性白血病に対するBH-ACの治療効果を, 多施設で後方視的に検討した.BH-ACを含む多剤併用療法により139例の小児白血病を治療し, 69例 (49.6%) が完全寛解に導入された.これらのうち, 未治療ANLLでは48例中36例 (75.0%), 治療抵抗性ALLでは58例中24例 (42.9%) が完全寛解となった.ANLLの初回寛解導入療法に, Ara CとBH-ACを含む多剤併用療法を行い, その治療効果をre-trospectiveに比較検討した.完全寛解導入率はBH-AC・AMVP療法では27例中22例 (81.5%), Ara C・AMVP療法では17例中13例 (70.5%) であった.寛解導入例の5年寛解率はBH-AC・AMVP療法では51%, AraC. AMVP療法では19%であった.5年生存率はそれぞれ43%と33%であった.BH-AC・AMVP療法の方法がAra C・AMVPに比べ, 副作用が少なかった.BH-ACはAra Cと同程度の治療効果があり, 重篤な副作用も少なく, 小児科領域では使用しやすい薬剤であった.
  • 松本 一美, 宮田 曠
    1988 年 2 巻 1 号 p. 74-78
    発行日: 1988/01/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    Transient erythroblastopenia in childhood (T.E.C.) は, ウイルス感染, 細菌感染や薬剤によっておこる. T. E. C. とcongenital pure red cellanemiaの鑑別診断は非常に重要である (とくに治療に関して).T.E.C.と診断しえた女児例の経過や治療, 骨髄幹細胞について報告した.彼女は, 経過中2度輸血を必要とし, 発症後2ヵ月目より自然軽快した.
  • 杉田 久美子, 矢追 公一, 辰巳 和人, 美濃 真
    1988 年 2 巻 1 号 p. 79-83
    発行日: 1988/01/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    ALLの治療後に発症した若年性関節リウマチの一例を報告した.患者は6歳女児, 食欲不振, 顔色不良を訴え, 肝脾腫, リンパ節腫強度の貧血にて入院となった.WBC数は25万/mm3, blast 92%, 骨髄ではparoxydase陰性, PAS陰性のblastが92.3%であり, ALLと診断した.CCLSG high risk ALLプロトコール821Aにしたがって治療, 寛解は導入され, 1985年4月に治療終了となった.1985年10月に足関節痛が出現し, 発赤, 腫脹を認め入院となり, 血液検査, 関節鏡, 滑膜生検にてJRAと診断した.この間行った骨髄検査では, 白血病細胞は認めなかった.われわれはALLとJRA両者の関連について, 興味をもったが, 両者の原因についても明らかに解明されておらず, もちろんのこと, 悪性腫瘍と膠原病の因果関係については不明である.われわれは, 今回本例を経験し, 文献的考察を加えその因果関係について考察した.
  • 9年間の経過
    山本 正生, 福永 慶隆, 神野 直昭, 竹鼻 純子, 浅野 健, 伊藤 保彦, 植田 穣
    1988 年 2 巻 1 号 p. 84-89
    発行日: 1988/01/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    患児は, 生後5カ月時に貧血と黄疸にて入院した.臨床症状と検査成績によりIgA欠損を伴った自己免疫性溶血性貧血 (AIHA) と診断した.洗浄赤血球輸血とステロイド療法を行い, 治療3週後より貧血の改善が認められたが, 直接クームステストは陽性であった.退院後1歳と1歳5ヵ月時には短期ステロイド療法により改善した網状赤血球増多と貧血を認めた.その後はAIHA再燃のエピソードは現在まで認めていない.3歳時より上気道炎と中耳炎のエピソードが多くなり始めた.IgA欠損に加えて, IgG, IgMも徐々に低下してきた.6歳時, 無γ-グロブリン血症, common variable immunodeficiencyの病態となり, このときクームス試験が陰性となった.汎血球減少症も併発してきた.免疫学的検索では, T細胞の異常が示唆された.定期的経静脈的ガンマグロブリン療法により, 感染の頻度は著明に少なくなった.臨床経過の追跡と免疫学的検索をさらにおこなっている.
  • 奥山 利也, 関口 晴之, 梶ケ谷 保彦, 船曳 哲典, 生田 孝一郎, 佐々木 秀樹, 松山 秀介
    1988 年 2 巻 1 号 p. 90-94
    発行日: 1988/01/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    生後5カ月の自己免疫性溶血性貧血の一男児例を報告した.患者は顔色不良を主訴に当院へ来院した.自己免疫性溶血性貧血の診断は, 重症貧血 (血色素値2.6g/ dl), 高ビリルビン血症 (総ビリルビン値6.2mg/dl), 直接クームス試験陽性によってなされた.血清および赤血球遊出液中の抗D抗体有意であった.治療として初めにRhD陰性の赤血球輸注を行い, プレドニゾロン療法を施行した.その後, メチルプレドニゾロン・パルス療法を2コースと大量ガンマグロブリン療法と少量のプレドニゾロン療法を行った.この複合療法は有効であった.自己免疫性溶血性貧血で抗D特異性を示すものはきわめてまれで, 過去の臨床例では難治と報告されている.われわれの治療は, 予後不良の乳児自己免疫性溶血性貧血に有効と考えられる.
  • 岡本 則彦, 小原 明, 土田 昌宏, 月本 一郎
    1988 年 2 巻 1 号 p. 95-100
    発行日: 1988/01/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    13歳男児, 貧血, 縦隔陰影の拡大を認め, 入院した.末稍血に芽球なく, 骨髄に95%の lymphoblastを認めた.T-cell型lymphoma/leukemia syndromeの診断のもとに, 多剤併用療法で24日目に寛解導入した.52日目より50mg/kgの大量methotrexate (MTX) を 6時間点滴, 36時間後よりcitrovorum factor (CF) 12mg/ m2を6時間ごとに投与した.第2回目MTX100mg/kgを開始した翌日より, 尿量減少, 高血圧, 血清クレアチニン2.0mg/dlと急性腎不全をきたした.48時間後のMTX血中濃度22×10-6mol/lであったため, hemoperfusionとCFを160mg/m2/dayで6時間ごとに投与した.初期のクレアチニン・クリアランスは10ml/min/1.6m2以下であったが, 17日目には60ml/minに回復した.口内炎, 骨髄抑制などの副作用は中等度であった.急性腎不全に関与するなんらの誘因も発見できなかった.
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