症例は8カ月男児.顔色不良と腹部膨満を主訴に入院した.入院時の検査所見は白血球数23,890/μl (90%が芽球;L2), 赤血球数125万/μl, Hb 3.29/dl, 血小板数l.3万/μl.骨髄血の表面マーカーはCD10 (+), CD19 (+), HLA-DR (+), 染色体はt (4;11) (q21;q23), MLL遺伝子再構成 (+) であった.以上の結果から, 乳児リンパ球性白血病と診断し, CCLSG infant ALL protocolにそってVCR, ADR, PRD, L-Aspにて治療を開始した.治療開始5週後完全寛解に達し, 以後7年間寛解を継続している.治療開始27カ月後に頭蓋照射を施行したが, その3カ月後に甲状腺機能低下を発症.血清T3, T4, TSHの推移から, 甲状腺機能は初回寛解導入療法施行後に低下, 維持療法中に回復したものの, 頭蓋照射後再び低下したことが判明した.1例だけではあるが, 本症例の白血病細胞がMLL遺伝子再構成 (+) でありながらCD10 (+) であったことが, 本症例が良好な経過を得ている要因と考えられた.
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