日本小児血液学会雑誌
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20 巻, 1 号
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  • 組織幹細胞, ES細胞, mGS細胞
    平家 俊男
    2006 年 20 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2006/02/28
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    再生医学, 再生医療における基盤となる細胞は幹細胞である.幹細胞は胎児, 成人を含め, さまざまな組織において存在する組織幹細胞と, ヒトにおいても作製されるようになってきた胚性幹細胞 (ES細胞) がある.また近年, 新生仔マウスの精子幹細胞の長期培養の過程で, ES細胞と同様な形態をもつコロニーが出現することが見いだされ, mGS細胞と命名されている.現在の医療技術では困難な多くの難治性疾患が存在するが, これらへの幹細胞を用いた再生医学, 再生医療の確立が望まれる.
  • 東條 有伸
    2006 年 20 巻 1 号 p. 8-15
    発行日: 2006/02/28
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    腫瘍で活性化されているシグナル伝達分子や腫瘍特異的遺伝子異常, およびその産物を標的とするさまざまな治療薬が開発されつつある.造血器腫瘍の分野では, 既に慢性骨髄性白血病の標準的治療薬となっているイマチニブメシレートや急性前骨髄球性白血病の分化誘導剤全トランス型レチノイン酸 (ATRA), さらにカテゴリーとしてはむしろ細胞標的療法に分類されるモノクローナル抗体医薬としてB細胞リンパ腫に対するリツキシマブなど, 分子標的薬の金字塔ともいうべき薬剤の開発実績があるため, 今後も分子標的治療薬開発における格好の対象疾患となるであろう.実際, 現在多数の薬剤が臨床試験中である.
  • 田村 真一, 黒田 啓史, 前田 洋佐, 柳生 茂希, 中井 倫子, 石田 宏之, 吉原 隆夫, 森本 哲, 今宿 晋作
    2006 年 20 巻 1 号 p. 16-21
    発行日: 2006/02/28
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    同種造血幹細胞移植後4例の移植片対宿主病 (GVHD) に対して抗tumor necrosis factor-alpha抗体 (infliximab) を投与した.2例は血栓性微小血管障害 (TMA) やタクロリムス脳症を合併し, 急性GVHDに対する免疫抑制剤の継続が困難であったため, 2回のinfliximab (1回量5~10mg/kg) の投与を行った.また2例は慢性GVHDに対する各種免疫抑制療法に抵抗性であったため, それぞれ移植後43, 48カ月後より3回のinfliximab (1回量はそれぞれ5mg/kg) の投与を行った.4例中3例で臨床症状は改善し, とくにTMAやタクロリムス脳症といった移植後の血管内皮障害が関与する病態で有効と考えられた.今後は症例の蓄積により, 造血幹細胞移植後の急性, 慢性GVHDに対するinfliximabの一定の投与基準や用法用量, および効果判定基準などの検討が必要であると考えられる.
  • 矢崎 信, 水谷 圭吾, 伊藤 康彦
    2006 年 20 巻 1 号 p. 22-25
    発行日: 2006/02/28
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    われわれは, 血友病Aの5人と血友病Bの1人で定期補充療法を実施した.そのうちの2人の血友病Aの患者と1人の血友病Bの患者では, 1歳前に診断が確定次第定期補充療法を開始した.血友病Aには第VIII因子の製剤を週3回25単位/kg, 血友病Bには第IX因子製剤を週2回25~50単位/kg補充した.定期補充療法後, 患者たちは血友病性関節症を起こすことなくスポーッへの参加を含めた普通の活動ができている.この経験から, 定期補充療法は血友病Aと血友病Bの子供たちの生活の質を向上させると思われる.
  • 太田 節雄, 大嶋 寛子, 野中 俊秀, 猪股 弘明, 服部 幸夫, 山城 安啓
    2006 年 20 巻 1 号 p. 26-29
    発行日: 2006/02/28
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    鉄欠乏のない小球性貧血の4歳男児.電気泳動により, 異常ヘモグロビンバンドを認あ, その泳動位置から, サラセミア類縁疾患であるHb Lepore症の存在が疑われた.さらに特異的なgap PCRにより HbLepore症 (Washington-Boston型) と診断された.サラセミアおよびその類縁疾患の軽症型の存在は生命予後には影響はないが, 遺伝相談的側面からその確実な診断は重要であると考えられる.
  • 伊藤 靖典, 大坪 慶輔, 野村 恵子, 金兼 弘和, 宮脇 利男
    2006 年 20 巻 1 号 p. 30-33
    発行日: 2006/02/28
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    尿路結石症を合併した急性リンパ性白血病 (ALL) の8歳男児例を経験した.寛解導入療法開始後, 強い腹痛を訴えた.ビンクリスチンによる麻痺性イレウスと診断し, 排ガス, 浣腸などによる対症療法を行った.しかし腹痛がさらに増強したため, 腹部超音波検査および造影CT検査を施行したところ, 左水腎症および尿管結石を認めた.大量補液のみにて症状は改善し, 結石分析ではシュウ酸カルシウム (Ca) が主成分であった.発症時は高Ca尿症の状態であり, 今回, 高Ca尿症から結石に至った発症, 増悪因子として, 尿路結石の家族歴, 副腎皮質ステロイドや利尿剤としてアセタゾラミドの使用, および倦怠感や腹痛による長期臥床の関与が考えられた.尿路結石症はALLにおける化学療法の留意すべき合併症であり, 治療中に腹痛を訴えた場合, 念頭におくべき病態であると考えられた.
  • 小野 麻由子, 藤田 直人, 浜本 和子, 水上 智之, 布井 博幸, 小林 正夫
    2006 年 20 巻 1 号 p. 34-38
    発行日: 2006/02/28
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    慢性肉芽腫症 (CGD) は好中球の活性酸素産生障害により易感染性を呈する遺伝性疾患である.その根治療法として造血幹細胞移植があるが, 本疾患では潜在的感染や臓器予備能の低下により, 従来の骨髄破壊的前処置では治療関連毒性, 死亡のリスクが大きいとされる.今回われわれはCGDの21歳男性に対し, fludarabine, cyclophosphamide, 全身放射線照射 (TBI) による骨髄非破壊的前処置を選択し, HLA完全一致の兄より同種骨髄移植を施行した.治療関連毒性はなく, 生着はすみやかであった.混合キメラの状態であったが, 4回のドナーリンパ球輸注 (DLI) を施行し, 移植後1年で完全キメラを達成した.移植後30カ月を経過し, 好中球の活性酸素産生能は正常に維持され良好な経過を得ている.慢性肉芽腫症の根治療法として骨髄非破壊的骨髄移植は有効な治療法であると考えられた.
  • 井口 晶裕, 佐藤 智信, 金田 真, 小林 良二
    2006 年 20 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 2006/02/28
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    All trans-retinoic acid (ATRA) 投与が関与した血球貪食症候群 (HPS) を合併した急性前骨髄性白血病 (M3) 症例を経験した.症例1は4歳の女児. ATRAを含む寛解導入療法開始30日目にHPSを発症.症例2は17歳の男児.ATRAを含む寛解導入療法開始37日目にHPSを発症.症例2ではATRAに対するリンパ球刺激試験が陽性であった.2症例ともにプレドニゾロン投与にて軽快し, いずれもその後にHPSの再発はない.初回治療後の血球回復期に発症しやすい要因があると推察され, 血球回復期の高サイトカイン血症の関与, またATRA症候群の一亜型である可能性などが考えられた.
  • 甲斐 昌彦, 楠木 重範, 岡田 恵子, 金 智裕, 時政 定雄, 藤崎 弘之, 橋井 佳子, 原 純一
    2006 年 20 巻 1 号 p. 45-50
    発行日: 2006/02/28
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    小児急性リンパ性白血病 (ALL) 症例に対する同種造血幹細胞移植時の好中球減少, 免疫抑制剤の使用といつた免疫抑制状態での各種抗真菌薬不応性の深在性真菌症に対し, micafUngin (MCFG) が有効であった2症例を経験した.症例はそれぞれ起因菌不明の真菌性肝脾膿瘍と肺アスペルギルス菌球症の4歳と9歳の女児.ともにamphotericin-B (AMPH-B) の効果が不十分であり, またそれによる腎機能低下のためMCFGに変更したところ, 発熱および画像所見の改善, CRP, β-Dグルカン値の陰性化が認められた.小児においてもMCFGは造血幹細胞移植時の免疫抑制状態のにおけるAMPH-B抵抗性の深在性真菌症に対し, 有効かつ安全であることが示唆された.
  • 佐藤 智信, 金田 真, 井口 晶裕, 小林 良二
    2006 年 20 巻 1 号 p. 51-54
    発行日: 2006/02/28
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    小児における赤白血病 (AMLM6) は急性骨髄性白血病 (AML) の中でもきわめてまれであり, 近年, refractory anemia with excess of blasts (RAEB) と同一疾患として扱う流れにある.今回われわれはRAEB-AML-M6症候群の女児例を経験した.生後6ヵ月から発熱を繰り返し, 血小板減少と肝脾腫に気づかれた.骨髄穿刺で赤芽球過形成を認め, 3血球系統に異形成が存在した.非赤芽球に占める芽球の割合は9%で, peroxidase染色およびPAS染色が陽性でありRAEB-AML-M6症候群と診断した.化学療法を行った後, 非血縁者間膀帯血移植を施行した.移植前処置はBUS+L-PAMで行い, 移植片対宿主病 (GVHD) 予防はCsA+mPSLで行った.現在, 移植後1年6カ月を経過しているが再発の徴候はなく良好な経過をたどっており, RAEB-AML-M6症候群に対して寛解期での非血縁者間膀帯血移植は有効な治療であると思われた.
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