日本小児血液学会雑誌
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15 巻, 2 号
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  • 奥田 司
    2001 年 15 巻 2 号 p. 65-80
    発行日: 2001/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    染色体転座切断点の分子クローニングによって多くの候補癌遺伝子が同定されてきた.ヒト白血病においてもっとも高頻度に変異の標的となるものの一つがAML1遺伝子 (RUNY1とも呼ばれる) であり, これは転写因子複合体CBF (あるいはPEBP2) のDNA結合サブユニットをコードしている.遺伝子ターゲティング実験によってこの転写因子複合体は成体型造血の初期発生にとって重要な役割を担っていることが明らかにされている.多くの染色体転座関連AMLI融合遺伝子産物が, 正常AMLl機能に対するドミナント・ネガティブ作用によって白血病発症に関わっていることが, in vitroin vivoでの実験で示されてきた.また, 注意深い臨床研究によってAML1のゲノム突然変異が, ある種の白血病発症と深く関わっていることも明らかにされている.さらに, マウスモデルを用いた実験や大規模な臨床研究によってAML1/CBFB関連白血病の発症経路の多段階をすべて明らかにしていこうとするプロジェクトが動きはじめている.本総説では正常造血および白血病発症におけるAMLI作用の分子基盤の現時点での理解について解説する.
  • マクロファージ活性化症候群と血球貧食症候群
    横田 俊平
    2001 年 15 巻 2 号 p. 81-87
    発行日: 2001/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
  • 金兼 弘和
    2001 年 15 巻 2 号 p. 89-94
    発行日: 2001/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    分子生物学の進歩によって先天性血液免疫異常症の多くが単一遺伝子異常に基づくことが解明され, 遺伝子診断が行われるようになつてきたが, 遺伝子解析は時間と労力を有するため, 簡易診断が望まれる.X連鎖無γ-グロブリン血症, Wiskott-Aldrich症候群/X連鎖血小板減少症, X連鎖リンパ増殖症候群の3疾患を対象として, 特異的なモノクローナル抗体を用いてフローサイトメトリーにより細胞内蛋白を検出する簡易診断法と遺伝子解析について概説する.フローサイトメトリーによる患者・保因者診断は感度ならびに特異性にすぐれているが, より正確な診断および遺伝カウンセリングには遺伝子解析も重要である.フローサイトメトリーによる簡易診断法は, 非典型例を含めた先天性血液免疫異常症のスクリーニングに有用であると思われ, 特異的なモノクローナル抗体があれば, 他の遺伝性疾患の診断にも応用可能と思われる.
  • 野々山 恵章
    2001 年 15 巻 2 号 p. 95-98
    発行日: 2001/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    先天性免疫不全症の治療は, 根治療法と支持療法とに大別される.前者の治療法として, 幹細胞移植は, 先天性免疫不全症の中で, 重症複合型免疫不全症, Wiskott-Aldrich症候群, X連鎖劣性高IgM症候群などが適応となる.骨髄移植, 臍帯血移植, 末梢血幹細胞移植, mini-transplantationが症例に応じて施行されている.遺伝子治療は, X-SCIDで造血幹細胞へ共通γ鎖を導入する方法で成功例が報告された.支持療法として, γ-グロブリン定期補充は, 抗体産生不全症に効果を示す.T細胞機能不全ではP.cariniiに対するST合剤の予防内服, Cryptosporidium pavumや真菌に対する感染予防が必要である.自己活性化T細胞輸注療法も感染に対して一定の効果を上げている.先天性免疫不全症では, 早期診断, 早期治療を行い, 適応があれば良い状態で幹細胞移植することが現時点でのもっとも有効な治療戦略である.
  • 寛容と免疫遺伝の視点から
    佐治 博夫, 丸屋 悦子
    2001 年 15 巻 2 号 p. 99-102
    発行日: 2001/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    アロ細胞免疫の主役はHLAと考えられてきたが, 造血幹細胞移植 (SCT) データの解析は, マイナー組織適合抗原 (mHa) の重要性を明確に示した.すなわち, mHaはメイジャーと同等またはそれ以上にアロ免疫のターゲット分子として重要であることがわかってきた.アロ免疫の抗腫瘍効果は組織適合性抗原と腫瘍抗原をともにターゲットにしており, 腫瘍のエスケープ戦略に打克つ手玉は, 自己の腫瘍免疫の修復を主眼とするものより格段に多くなる.なぜなら, おそらくは1,000ほどの多型性がimmuno-dominant mHaの候補になりうるからである.長期に維持される母児間マイクロ・キメリズム (long-term feto-maternal microchimerism) やミトコンドリアmHaの発見は, 総合的・生物学的適合性コンセプトを要求する.すなわち, メイジャー/マイナー適合抗原という分子多様性の「物質的」適合性に加えて, 母児寛容や血縁関係などの「現象的」適合性を考慮すれば, 「許容ミスマッチ」移植が選択できる.すなわち母子間やNIMA (non-inherited maternal antigens) 相補性同胞は適合性の良いドナー候補である.
  • 田中 淳司
    2001 年 15 巻 2 号 p. 103-108
    発行日: 2001/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    同種造血幹細胞移植 (allo-SCT) 後には, 移植片対宿主病 (GVHD) が発症し, 患者の予後を左右することが稀ならずしてある.しかし, GVHDは同じく同種移植後の免疫反応の一つであり白血病などの再発防止に重要なはたらきを有する移植片対白血病 (GVL) 効果と表裏一体の関係にある.このため, 宿主の組織・臓器を障害するGVHDのみを抑制し, GVL効果と非特異的な免疫応答能を温存することができれば, allo-SCTの安全性と有効性が飛躍的に向上し, その適応範囲も拡大していくものと考えられる.T細胞の抗原認識の段階でCD28/B7やCD40/CD40Lなどを介するcostimulationを抑制し, 抗原特異的な免疫寛容状態を誘導するのがもっとも魅力的なGVHD制御の方法と考えられるが, 臨床応用には至っていない.
  • 木内 哲也, 田中 紘一
    2001 年 15 巻 2 号 p. 109-113
    発行日: 2001/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    肝移植では, 肝とともに移入される造血幹細胞の存在によって, graftとhostの間の細胞交通はより複雑となる.肝移植後には, 免疫抑制剤の減量が比較的容易で, HLAの直接的寄与も低いとされるが, 液性免疫の関与も示唆されている.拒絶の成立にはさまざまな背景因子の関与が知られているが, 難治性拒絶や慢性拒絶に至る機i序については不明な点も多い.一方, とくに血縁者間生体肝移植において致死的GVHD発生の危険は無視できないものであるが, 発生の背景機序については不明な点も多い.Graftとhostとの間の両方向の交通には, HVGからGVHDに至る広い平衡帯があり, 免疫寛容における重要な役割を果たしている可能性が高い.
  • 木村 宏
    2001 年 15 巻 2 号 p. 114-118
    発行日: 2001/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    Because of the recent advances in the technology of organ/hematopoietic stem cell transplantation, opportunistic virus infections have become problematic. The management of cytomegalovirus, Epstein-Barr virus, varicella-zoster virus, and herpes simplex virus are very important because these viruses latently infect hosts and reactivate during immunosuppression. Since these viruses are detectable from healthy individuals, a quantitative analysis is necessary for the diagnosis of reactivation. Real-time quantitative PCR is a fast, convenient, reproducible method for monitoring viral loads. The assay has been shown to be useful for the management of virus infections in immunocompromised hosts. The other recent advance in the management of viral infections is monitoring virus-specific immunity by using a combination of intracellular interferon-γ detection and flow cytometry. With this method, the frequency of virus-specific CD8+ T cells can be rapidly determined.
  • 溝口 史剛, 外松 学, 金沢 崇, 小川 千登世, 森川 昭廣
    2001 年 15 巻 2 号 p. 119-123
    発行日: 2001/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    Burkittリンパ腫の患者に対し非血縁者間骨髄移植 (BMT) を施行し, 移植後に門脈血栓症 (PVT) を発症した症例を経験した.症例は15歳の男児で, 右頸部腫脹を主訴に近医を受診, 病理学的検査でBurkittリンパ腫と診断された.放射線治療・化学療法で完全寛解を得たが再発したため, 前処置として全身照射, etoposide, ifbsfamideを使用してBMTを施行した.Day24よりFDP, D-dimerが上昇し, 血栓検索のため施行した超音波検査で門脈内にhighecho領域を認め, CTで門脈に血栓を認めた.PVT発症時, 血中proteinC, antithrombin IIIの低下はなく, thrombomodulinが軽度上昇していた.Urokinaseとheparinにて血栓溶解療法を開始し, day55のCTで血栓の消失を確認した.SCT後には稀ではあるがPVTを発症することがあり, 超音波検査はその診断にきわめて有効であった.PVTの原因としては移植後の過凝固状態と血管内皮細胞障害が考えられる.
  • 清野 純子, 久保田 優, 宇佐美 郁哉, 小林 健一郎, 濱畑 啓悟, 筒井 孟
    2001 年 15 巻 2 号 p. 124-128
    発行日: 2001/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    7歳時発症と思われる発作性夜間血色素尿症 (PNH) の1例を報告した.発症時, 軽度の血小板減少を認めたが溶血所見に乏しく, 特発性血小板減少性紫斑病と診断された.経過観察中, 汎血球減少を認めるようになり, 13歳時より血清LDHが上昇した.しかし, sugar water testやHam testは陰性であった.15歳のとき, 感染を契機に初めて肉眼的血尿をみた.フローサイトメトリーの検索から, 種々の血球成分の表面抗原であるCD55やCD59の発現が低いことより, 最終的にPNHの診断が下された.小児期のPNHは, 発症時溶血所見に乏しく, 正しい診断が困難な例が少なくない.原因不明の溶血や汎血球減少をみたとき, 病初期にCD55やCD59の発現の検索が必要と思われる.
  • 川村 陽一, 松本 浩, 古池 雄治, 藤塚 聡, 子川 和宏, 廣井 禎之, 関根 勇夫, 鶴沢 正仁
    2001 年 15 巻 2 号 p. 129-133
    発行日: 2001/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    初診時に血清NSEが高値であった縦隔原発非ポジキンリンパ腫 (NHL) の1歳男児例を報告した.胸部単純X線およびCT検査にて縦隔腫瘤を認め, 検査所見上, 血清NSEが110ng/mlと著明な高値を示した.経皮的針生検でNHL (diffuse, lymphoblastic, T-celltype), 病期はMurphy分類のStage IIIと診断した.ポリクローナル抗体を用いた腫瘍組織のNSE染色も陽性であった.CCLSG NHL960プロトコールに従い, 化学療法を施行し, 完全寛解を維持している.血清NSE高値のNHLにおいては血清NSEが治療効果判定のためのマーカーとなる可能性があり, 今後多数例での解析が望まれる.
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