日本小児血液学会雑誌
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12 巻, 5 号
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  • 西平 浩一
    1998 年 12 巻 5 号 p. 321-329
    発行日: 1998/10/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    臍帯血には増殖能の高い造血幹細胞, 造血前駆細胞が豊富に含まれている.最近, 臍帯血は造血幹細胞移植の新たな供給源として利用されており, 同胞間の臍帯血幹細胞移植の結果, 生着に十分な造血幹細胞が含まれること, さらに, 急性あるいは慢性GVHDの発症する危険性もきわめて低いことが示された.また, 国内でも同様に有望な結果が得られている.New York血液センターで1992年臍帯血バンクを設立し, 500例以上の非血縁者間臍帯血移植が実施されている.国内でも同胞間の臍帯血移植が成功し, 神奈川県立こども医療センターでは神奈川臍帯血バンクを1995年に設立した.本稿では神奈川臍帯血バンクのシステムを紹介し, 国内, 国外における血縁および非血縁臍帯血移植の現状を概説した.
  • 熊崎 寿美, 杉田 憲一
    1998 年 12 巻 5 号 p. 330-335
    発行日: 1998/10/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    同種骨髄移植を施行した寛解中の患者 (1歳から18歳) 11例で好中球のin vitro apoptosisを検討した.すなわち, 末梢血好中球を24時間培養し, apoptosisになった好中球の比率を形態, DNA含量から算定した.その結果, ステロイド剤非服用患者の好中球のapoptosisの比率は対照に比較し大きかった (p<0.05).しかし, ステロイド剤服用中の患者では差がなかった.また, 好中球のapoptosisの比率と末梢血白血球に占めるリンパ球比率は逆相関した (p<0.05).しかし, 活性化リンパ球 (HLA-DR+ T細胞) 比率, 好中球のCD95の発現量とは関係がなかった.また, hydrocortisone (HDC) (10-7mol) の添加で, 好中球のapoptosisは抑制されたが, その抑制の程度は患者で大きかった (p<0.05).さらに, 好中球のapoptosisへの患者血清の影響を検討したが, 対照血清と差はなかった.
  • 陳 同辛, 駒田 美弘, 張 小麗, 稲葉 寛人, 出口 隆生, 東 英一, 櫻井 實
    1998 年 12 巻 5 号 p. 336-345
    発行日: 1998/10/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    白血病患児における微少残存腫瘍 (MRD) の検出には, すでにいくつかの感度の高い検査法が報告されている.今回私たちは, 3カラーフローサイトメトリー (FCM) の, 残存白血病細胞検出法としての臨床的有用性について検討した.本研究では, CD10, CD22抗原陽性で, CD45抗原が陰性であることが, 白血病細胞のマーカーとなると考え, CD45陰性B前駆細胞性急性リンパ性白血病 (ALL) 23例を対象とした.患児骨髄中の白血病細胞は, CD10+/CD22+/CD45- or dimの形質を示し, 本法により, 104に1個の白血病細胞を検出できた.CD10+/CD22+/CD45- or dim細胞群は, 正常骨髄, 再生骨髄, および長期完全寛解を持続している白血病症例の骨髄には認められなかった.本法は, 残存白血病細胞を寛解導入治療開始後50日まで同定でき, また, 白血病細胞の漸増を, 骨髄再発が形態学的に確認される以前よりモニターすることも可能であった.以上より, 3カラーFCMは, 骨髄中の残存白血病細胞を鋭敏に検出できる検査法であり, ALL患児のMRDモニターリング法のひとつに加えてよいと考えられた.
  • 日比 成美, 澤田 淳, 秋山 佑一, 久保田 優, 今宿 晋作
    1998 年 12 巻 5 号 p. 346-350
    発行日: 1998/10/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    京都府 (市部を含む) における小児造血器悪性疾患 (15歳未満) の発症頻度を京都府全体および地域別に検討した.1990年から1994年の5年間に京都府全体で発症した小児造血器悪性疾患患者数は83人で, 病型別には, ALL 57例 (68.7%), ANLL 19例 (22.9%), MDS 2例 (2.4%), CML 4例 (4.8%), JMML1例 (1.2%) であった.発症頻度は, 15歳未満の人口10万人年比3.70人で, 病型別には, ALL 2.54人, ANLL0.85人, MDS 0.09人, CML 0.18人, JMML 0.04人と諸外国からの報告とほぼ同等であった.地域別にみると京都府下4医療圏での発症頻度は, 丹後・中丹医療圏1.59人, 中部医療圏2.04人, 京都・乙訓医療圏4.95人, 南山城・相楽医療圏2.24人で, 有意に京都・乙訓医療圏で高く (p=0.023), 逆に丹後・中丹医療圏で低い結果であった (p=0.026).いっぽう, 乳児期 (生後12ヵ月未満) に発症した患者数は83人中8人 (9.6%) (ALL 5人, ANLL 3人) で, 乳児白血病の発症頻度は6.62人であった.これまでの報告では, 乳児白血病の発症頻度は3-4人といわれていることから, 京都での発症頻度が高い傾向にあると思われる.なぜ京都・乙訓医療圏において小児白血病患者の発症頻度が高いのか, 今後さらに検討を続ける必要がある.
  • 小児CML研究会調査報告
    稲光 毅, 大賀 正一, 真部 淳, 迫 正廣, 生田 孝一郎, 矢部 みはる, 堀部 敬三, 岡村 純, 松山 孝治, 月本 一郎, 上田 ...
    1998 年 12 巻 5 号 p. 351-358
    発行日: 1998/10/31
    公開日: 2011/08/17
    ジャーナル フリー
    わが国における若年型慢性骨髄性白血病の後方視的アンケート調査を行った.1986年から1995年の10年間に診断された若年型慢性骨髄性白血病の50症例が, 47施設から登録された.診断時の年齢は2ヵ月から5歳6ヵ月, 年齢の中央値は2歳1ヵ月, 男女比は約2 : 1 (男児34例, 女児16例) であった.予後調査が可能であった49例の生存率は23.3%で, そのうち同種造血幹細胞移植を受けた14例の生存率は49.0%, 非移植例35例の生存率は13.7%であった.移植の前処置として, 14例中13例に全身放射線照射が施行されていた.非移植例の予後不良因子として, 診断時年齢が高いこと (2歳以上), 血小板数が低いこと (33,000/μl未満), 脾腫が小さいこと (5cm未満) が示唆された.強力な化学療法を受けず経過が良好であった5例のうち, 4例の診断時年齢は1歳未満であった.
  • 栗山 貴久子, 内藤 岳史, 橋田 哲夫, 大塚 拓治, 日比 成美, 今宿 晋作, 澤田 淳
    1998 年 12 巻 5 号 p. 359-363
    発行日: 1998/10/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    12歳で悪性貧血 (PA) を発症した男児例を報告した.患児は全身倦怠, 顔色不良を主訴に入院した.入院時, RBC 1.21×106/μl, Hb 4.7 g/dl, MCV 113.9 fl, MCH 39.2 pgと大球性高色素性貧血と好中球減少がみられた.血清のvitamin B12は低下し (190 pg/ml), 抗内因子抗体, 抗胃壁細胞抗体が陽性であった.骨髄検査では, 赤芽球の異形性と巨赤芽球性変化, 巨大後骨髄球, 好中球過分葉を認めた.胃内視鏡検査にて萎縮性胃炎が確認された.Schilling試験は57Co標識内因子, 58Coとも血中濃度が1.43%, 0.41%と著しく低値で, McIntyre II型PAと診断した. Vitamin B12の補充療法を開始したところ速やかに全身症状, 血液所見は改善したが, 萎縮性胃炎には高率に胃癌を合併する可能性があり, 定期的な内視鏡的検索が必要と思われた.
  • 太田 茂, 岩見 美香, 成田 努, 東野 克巳, 鈴木 淳史, 多賀 崇, 島田 司巳
    1998 年 12 巻 5 号 p. 364-368
    発行日: 1998/10/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    Hodgkin病 (以下HDと略) の治療後における心合併症の報告は欧米では多数報告されているが, 本邦ではきわめて少ない.われわれはHDの治療経過中に心タンポナーデを発症し, 治療終了後にtherapyrelated pancytopeniaをきたした症例を経験したので報告する.症例は14歳男児, 前上縦隔原発のHD (nodular sclerosis) でmodified MOPPおよびセミマントルと縦隔部に総計36.3Gyの照射を行った.化学療法6クール目の前半終了後から突然, 胸痛, 胸内苦悶感および呼吸困難が出現した.心嚢穿刺の結果, 心タンポナーデと診断され経皮的ドレナージにて軽快した.細胞診によりHDの浸潤は否定された.その後, 1クールの化学療法後に治療終了となったが, しだいに大球性貧血となり汎血球減少となった.骨髄は低形成であったが, 染色体検査は正常であった.オキシメトロン投与にて経過観察したところ, ほぼ4ヵ月で汎血球減少は改善し現在治療終了後5年を経過しているが無病生存中である.
  • 柳瀬 卓也, 中村 利美, 高橋 弘昭
    1998 年 12 巻 5 号 p. 369-373
    発行日: 1998/10/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    初診時より広汎な骨髄浸潤を認めた横紋筋肉腫の11歳女児を報告する.症例は全身倦怠感と四肢出血斑を主訴として当科に入院した.入院時身体所見で出血斑以外異常はなく検査所見で血小板減少, 高Ca血症, 高LDH血症, 高尿酸血症を認めた.骨髄は好塩基性の芽球によってほぼ占められていたため当初白血病との鑑別に苦慮したが, 腫瘍細胞のマーカー検査で骨髄癌症が疑われ精検したところ, 肛門周囲に腫瘤が発見され, 生検にて胞巣型横紋筋肉腫の病理診断を得た.同時に腫瘍細胞の染色体検査にて2番, 13番の異常が指摘されたためRT-PCR法によるPAX3-FKHRキメラ遺伝子を検討したところ, この融合遺伝子が証明されたため最終的にt (2;13) (q35;14) 染色体転座を有する進行性の胞巣型横紋筋肉腫と診断した.小児において白血病様の骨髄像を呈する骨髄癌症を見た場合, 迅速診断のためには胞巣型横紋筋肉腫に特異的な融合遺伝子の検索はぜひ試みられるべき検査である.
  • 川崎 浩三, 松岡 尚, 星井 嘉信, 鮎川 浩志, 古川 漸
    1998 年 12 巻 5 号 p. 374-377
    発行日: 1998/10/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    再寛解導入療法中にメッケル憩室穿孔から敗血症性ショックをきたした8歳男児例を報告する.5歳2カ月時に急性リンパ性白血病と診断.完全寛解が得られたものの, 治療終了3カ月後に中枢神経に再発した.Vincristine, prednisolone, daunorubicin, cyclophosphamideおよび三者髄注で再発7病日に髄液は3 cells/mlかつ細胞診は正常化した.11病日に腹痛を訴えたが, 平熱で腹膜刺激症状は認めなかった.13病日に発熱, 血圧低下および低血糖をきたし4時間後に永眠した.病理解剖で, メッケル憩室の潰瘍穿孔から腹膜炎を生じたことが判明した.化学療法中の患者において, メッケル憩室炎を急性腹症の鑑別にあげる必要がある.
  • 土屋 邦彦, 中野 裕美, 石田 宏之, 日比 成美, 今宿 晋作
    1998 年 12 巻 5 号 p. 378-383
    発行日: 1998/10/31
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    全身型若年性関節リウマチ (s-JRA) を基礎にマクロファージ活性化症候群 (MAS) を発症した2歳男児例を報告した.MASはibuproftnの投与開始3日後から発症し, 不機嫌, 高熱, 肝腫大, リンパ節腫大に加え汎血球減少, 肝機能障害, 脂質代謝異常や凝固線溶系異常を示した.骨髄には少数の血球貧食像を認めた.患児はprednisolone (PSL) 2mg/kg/日, cyclosporineA (CyA) 3mg/kg/日の静脈内投与で治療され, 投与開始48時間以内に解熱し, 検査異常もすみやかに改善傾向を示した.HPSにおいて予後不良因子を示唆する高サイトカイン血症に対して, PSL+CyAの併用療法は有効と考えられる.
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