日本小児血液学会雑誌
Online ISSN : 1884-4723
Print ISSN : 0913-8706
ISSN-L : 0913-8706
8 巻, 2 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
  • 駒田 美弘
    1994 年 8 巻 2 号 p. 77-89
    発行日: 1994/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    白血病細胞を含む癌細胞が不死の細胞であることを示す明確な証拠は得られていない.ある種のサイトカインは, 白血病細胞の増殖を誘導し, さらにautocrineあるいはparacrineの機構に深くかかわっている.興味深いことに, 患児由来の白血病細胞を体外の培養液中に移すと, 短時間のうちに, クロマチン凝集, 核の断片化などの特徴的な細胞形態の変化や, DNAの断片化が認められるようになり, アポトーシス細胞死が誘導される.このことは白血病細胞が自殺死の機構を有しており, その活性化が可能であることを意味する.また, 白血病細胞は生存していくための因子 (生存因子) を必要とし, その因子の欠乏によりアポトーシス細胞死が誘導される.さらに, c-myc, bcl-2, 癌抑制遺伝子p53などの遺伝子の発現の異常も白血病細胞における細胞死の抑制に関与していることが知られている.生存因子の欠乏による自殺死の誘導, あるいはサイトカイン併用による抗白血病剤の感受性の増強は, 白血病に対する生物学的治療として有効なものとなることが期待される.
  • 駒田 美弘, 伊藤 正寛, 矢崎 信, 尾坂 行雄, 本郷 輝明, 堀部 敬三, 吉川 哲史, 松山 孝治, 小島 勢二, 清水 信雄, 石 ...
    1994 年 8 巻 2 号 p. 90-96
    発行日: 1994/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    急性リンパ性白血病スタンダードリスク群 (SR-ALL) に対する8511プロトコールは, 頭蓋放射線照射を削除した場合の中枢神経系白血病の再発率を明らかにすること, 強力な交替維持化学療法の有効性を検討すること, 免疫療法の臨床的な効果について解析をすることを目的とした.85例の評価可能症例中83例に完全寛解が得られ, さらに, スタンダードな維持療法のA群, それに免疫療法を併用したB群, 強力な交替維持療法のC群の3群に振り分けられた.A, B群の間には無病生存率の差は認められず, 長期にわたる経過観察が必要ではあるが, 免疫療法の有効性は確かめられなかった.また, 中枢神経系白血病の再発率は, 83例中8例であり, 3群問に差はなかった.興味深いことに, 白血球数が10,000/μl未満と以上の群の間には, A, B群にて生存率に有意差が見られたが, C群では認められなかった.また10,000/μl未満群の生存率はA, B群 (74.8%, 79.2%) の方がC群 (50.6%) より良好であった.対照的に10,000/μl以上の群では, 5年生存率がC群において有意に高かった (p<0.05).以上の結果より, SR-ALLは白血球数によりさらにいくつかの群に分けることができ, 強力な交替併用療法は白血球数の比較的多い群に有効であると考えられた.
  • 再発例のsalvage療法について
    矢崎 信, 山田 薫, 駒田 美弘, 伊藤 正寛, 本郷 輝明, 堀部 敬三, 小島 勢二, 松山 孝治, 石井 睦夫, 鬼頭 秀行, 西村 ...
    1994 年 8 巻 2 号 p. 97-102
    発行日: 1994/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    我々は頭蓋放射線照射を除いたTokai POSG protocol 8511で寛解導入された83例のstandard riskALLのうち再発した34例のsalvage療法について検討した.再発部位はBM23例, BM+CNS3例, CNS8例であった.再発群とlCR維持群間では再発群の診断時の末梢白血球数が有意に多かった (p=0.040).BM単独再発例とBM+CNS再発例のうち20例が再寛解導入された.2CR中に骨髄移植を受けた10例と化学療法のみの10例の2CRの平均維持期間は化学療法群は474日, 骨髄移植群は1,141日であった.2CR後676日以後の無病生存率は化学療法群は26.7%, 骨髄移植群は65.6%であった (p=0.097).この群ではドナーがいる場合は同種骨髄移植が, ドナーのいない場合は抗体と補体で処理して自家骨髄移植するのが良いと考えられた.CNS単独再発例8例のうち7例はCSIで治療し, 1例ではTBI+CSIを含んだ前処置で自家骨髄移植を行った.まだ観察期間は短いが, CNS単独再発群のリコールが正常化してからの2CRの平均維持期間は1,233日, 無病生存率は64.3%と良好であった.
  • 大根田 滋子, 杉田 憲一
    1994 年 8 巻 2 号 p. 103-108
    発行日: 1994/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    健康成人の末梢血単球のinterleukin-2receptor (IL-2R) の発現は, α鎖とβ鎖ともにlipopolysaccharide (LPS) 添加で増強したが, IL-2添加では増強しなかった.hydrocortisone (HDC) を添加すると, IL-2Rの発現に対するLPSの効果は抑制された.HL60細胞の増殖は, IL-2あるいはLPSを添加培養した単球によって抑制された.また, IL-2あるいはLPSを添加し48時間培養した単球の培養上清もHL-60細胞の増殖を抑制した.HL60細胞をIL-2またはLPS添加単球より得た上清とともに培養した後の形態による検討では, HL-60細胞にクロマチンの凝集や核の濃縮などの変化が見られた.HDCにて単球を前処置すると, IL-2とLPSによって認められた前記のすべての作用は消失した.抗TNF-α抗体で単球を前処置した場合もLPSの効果は抑制されたが, IL-2の効果は抑制されなかった.
  • 藤波 彰, 中西 康詞, 中川 喜美子, 田窪 良行, 迫 正廣, 小西 省三郎
    1994 年 8 巻 2 号 p. 109-116
    発行日: 1994/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    急性白血病15例, 悪性リンパ腫1例, 計16例の男児に化学療法, 睾丸放射線照射後の性腺機能について検討した.2例は初発時に睾丸浸潤があり, うち1例に睾丸両側に放射線照射を施行した.他の2例は睾丸再発を認め, 睾丸摘出後反対側に放射線照射を施行した.現在全例治療中止後1~9年寛解を続けている.治療中止時に睾丸生検, LHがRH試験を行った.また最近のtestosterone, FSH, LH値, Tanner分類, 睾丸容積などを調べた.化学療法のみの13例は, LH-RH, testosterone, FSH, LH値とも正常であるが, 治療中止時の睾丸生検像では, 8例に精細管内の精祖細胞数の減少が認められた.放射線照射を施行した3例とも性腺機能障害があり, 精細管障害だけでなく, Leydig細胞障害も認められた.今後性成熟について長期間観察する必要がある.
  • 血中動態および副作用を中心に
    高村 まゆみ, 麦島 秀雄
    1994 年 8 巻 2 号 p. 117-122
    発行日: 1994/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    1985年から1992年までに自家骨髄移植を施行した進行性神経芽腫ll症例を対象にその残存腫瘍の再発予防を目的に13-cis-RAを100mg/m2/day (分2) 連日経口投与を行い, その血中動態と副作用にっいて検討した.13-cis-RAの血中濃度は投与量に比例して上昇し内服後2~6時間後 (平均4時間後) にピークがみられたが, いずれも24時間後にはほとんど検出されなかった.また腎障害を伴った症例では有意なピークの上昇が認められた.副作用は全例に軽度の粘膜障害, ALP, およびTGの上昇がみられ, その他GOT, GPT, Ca, cholesterolが増加し, 特に腎障害を有した2例で副作用が著明にみられた.13-cis-RA (100mg/m2/day) の12時間毎の連日経口投与は自家骨髄移植後でも骨髄抑制はみられず, 一部の患児を除いては副作用も軽度であり, 腎障害が存在しなければ投与可能であった.
  • 佐山 圭子, 関口 典子, ウエハラ 真理, 内田 寛, 北林 耐, 太田 正康, 松下 竹次, 江木 晋三, 森田 豊彦
    1994 年 8 巻 2 号 p. 123-128
    発行日: 1994/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    症例は初診時14歳の女性.1988年5月に急性白血病と診断された.ハイリスク症例であり, 初回寛解中の1989年12月に末梢血幹細胞移植術を施行され, 1990年3月に退院した.しかし, 同年6月に骨髄検査にて再発が確認された.再発後は, 強力な化学療法での再寛解は得られなかった.1991年1月, 突然, 高熱と咳漱が出現し, 胸部X線上で, 右下肺野に, 円形の浸潤影がみられた.様々な治療にかかわらず, 症状や血液所見は悪化し, 1991年3月に死亡した.剖検より肺胞タンパク症と肺梗塞が証明された.血液学的悪性腫瘍やその治療による免疫能異常状態が, 肺胞タンパク症をひきおこす一要因であると推測されている.文献上, 血液学的悪性腫瘍患者の肺胞タンパク症合併は散見されるが, 小児科領域では極めてまれなので, 若干の考察を加えて報告する.
  • 伊藤 保彦, 蔡 霊芝, 渡辺 恵子, 植田 高弘, 右田 真, 土居 寿子, 金子 清志, 前田 美穂, 福永 慶隆, 山本 正生
    1994 年 8 巻 2 号 p. 129-134
    発行日: 1994/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    7歳男児.1988年1月 (1歳6カ月) common ALL発症.TCLSG11-H2プロトコールで完全寛解.2カ月後に1回目, その3カ月後に2回目の骨髄再発.強力な多剤併用化学療法により再寛解は得たが, 真菌性多発肝膿瘍を併発.次第に肝硬変・脾機能充進・門脈圧充進症へと進行し, さらに胸水貯留・食道静脈瘤よりの吐血などの合併症を呈した.1992年4月中枢神経系への再発.MTX, HC, AraC髄注と頭蓋照射28Gy施行し, 更にMTX大量療法を含む強化療法を2回施行.その際VPl6も合計750mg/m2投与した.1993年1月, ANLL (M5b) 発症.細胞はASD陰性だったが, HLA-DR, CD13, CD14, CD11, CDl8陽性, 貧食能, O2-産生能を認めた.染色体は45XY, -7, -21, +i (21q), t (6;14) (p22;q23).抗癌剤耐性に関わるP糖蛋白が58%陽性であった.厚生省ANLL共通プロトコールで治療を開始したが, 1994年3月現在寛解は得られていない.2次性白血病の発生予防および治療法の研究が今後重要であると考える.
  • 犬飼 岳史, 杉田 完爾, 白石 恭子, 小鹿 学, 合井 久美子, 手塚 徹, 飯島 純, 中澤 眞平
    1994 年 8 巻 2 号 p. 135-141
    発行日: 1994/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    ALLに肺アスペルギルス症を発症した2例を報告した.2例とも末期例で骨髄抑制が強く抗真菌剤の投与にもかかわらず死亡した.剖検で肺にアスペルギルス菌塊を認めたが周辺組織への細胞浸潤は認められなかった.自験例を含む小児白血病と悪性リンパ腫に合併した肺アスペルギルス症30例を検討し以下の点を明らかにした. (1) 急性白血病に発症することが多い. (2) 多くの症例で抗真菌剤が予防投与されている. (3) 治癒例は寛解導入中か完全寛解中の強化療法時に発症し, 死亡例のほとんどが再発・末期の症例である. (4) 治癒例の多くはアスペルギローマを形成し外科的切除を受けている. (5) 治癒例のほとんどがAMPH-Bを投与されている. (6) 寛解導入中に死亡した4例中2例が血胸による突然死である. (7) 確定診断のほとんどが切除標本か剖検によっている.したがって, その克服には確実な予防法や早期診断法の確立が必要と考えられる.
  • 朴 永東, 中島 充, 阪井 利幸, 河原 信吾, 辻 幸余, 嶋 緑倫, 北奥 恵之, 日浅 義雄, 吉岡 章
    1994 年 8 巻 2 号 p. 142-146
    発行日: 1994/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    血清ferritinが著しい高値を呈したKi-1リンパ腫の4歳, 男児例を報告する.発熱, 喘鳴, 頸部リンパ節腫脹を主訴に当科に入院した.入院時, 血清色rritin, LDHを含む各種検査値は概ね正常範囲内であった.入院2週間後の第1回頸部リンパ節生検像では, 貧食像を伴う組織球を認めたことより, VAHSを疑い, 治療を開始したが改善なく, ferritin は3,595ng/ml, LDHは2,891IU/lに上昇した.第2回生検を右深頸リンパ節, 左側頭部リンパ節, および皮膚病変に対して行った.生検像で, 貧食像を示す未熟な組織球の存在より, いったん, 悪性組織球症を疑ったが, 免疫学的検索ではKi-1, EMA, IL-2Rが陽性であったことより, Ki-1リンパ腫の最終診断に至った.多剤併用化学療法 (VP16, THP-ADR, mPSL, Ara-C), 放射線療法により, いったん部分寛解したが, 全過程3カ月で死亡した.なお, 最終的には色rritinは35,181ng/ml, LDHは7,110IU/lと著明な高値を呈していた.一般に, Ki-1リンパ腫では血清ferritinは上昇しないとされているが, 自験例では経過中に著しい高値を呈し, しかも病勢に一致して増減した.血清財ritinが一部の本症では病勢, 治療効果判定の有用な指標になり得る可能性を示した.
  • 森本 哲, 森本 佳子, 生嶋 聡, 東道 伸二郎, 沢田 淳, 日比 成美, 今宿 晋作
    1994 年 8 巻 2 号 p. 147-152
    発行日: 1994/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    症例は10歳男児.1歳時, 難i治性中耳炎, 出血性皮疹, 頭蓋骨破壊, リンパ節腫脹を呈し, 2歳時, 頭蓋骨と皮膚の生検にてLangerhans cell histiocytosis (LCH) と診断された.主要臓器の機能不全はなかったが, vinblastine, methotrexate等の多剤化学療法に抵抗性で, 新たな骨病変や肝脾腫の出現をみた.Etoposide (VP16) により部分寛解を得たが, 放射線照射, interferon-α, cyclosporine Aは無効であった.6歳時, 下垂体性小人症と診断され, MRI-CTで蝶形骨洞浸潤, 下垂体茎の肥大, 後葉のbright spotの消失をみた.その6カ月後に尿崩症を発症し, 下垂体茎の肥大化と後葉の低信号化の進行, 後葉の腫大をみた.7歳時, 良好な部分寛解状態を得, VP16の総投与量も15,400mg/m2に達したためVP16投与を中止した.8歳時, 寛解に至り化学療法を中止した.10歳の現在, 成長ホルモンとDDAVPによる補充療法のみで寛解を維持している.
  • 伊従 秀章, 藤沢 康司, 赤塚 順一
    1994 年 8 巻 2 号 p. 153-157
    発行日: 1994/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    筆者らは, Epstein症候群の血小板抗体について検討したので報告する.症例は14歳女児で, 3歳時より慢性ITPとして経過観察されていたが, 1991年血小板減少が著明のため当科に紹介された.患者は6歳時より両側性感音性難聴があり, 入院時血小板は1,000/μ1, 末梢血に巨大血小板を認めた.15歳時腎炎を発症.入院後, インターフェロン, プレドニン, 大量γ一グロブリンで加療したが効果なく, 月経過多が持続するため1992年8月12日に脾摘を行った.その結果血小板上昇はないものの出血傾向は改善した.本症例のPAIgGは62.0% (control 4.6%), PAIgMは41.8% (control 10.1%), PBIgGは68.5% (control 25.5%) といずれも陽性であったが, 血小板膜glycoprotein IIb/IIIaに対する特異抗体は陰性であった.これらの結果より, 本症における血小板減少には遺伝的要因のみならず, ITPとは少し異なってはいるものの, 免疫的機序が関与しているものと思われた.
  • 小原 明, 沢井 清, 田村 京子, 大野 百合子, 田中 宗史, 沢 文博, 月本 一郎
    1994 年 8 巻 2 号 p. 158-162
    発行日: 1994/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    rG-CSFに反応せず, 重症細菌感染症を繰り返しているKostmann型先天性好中球減少症5歳女児に, 同種骨髄移植を施行した.移植はHLA一致, MLC陰性の妹より行い, 前処置はTAI9Gyおよびcyclo-phosphamide 50mg/kg4日間投与にて行った.移植後順調に経過し感染症も激減したが, 造血は不完全キメラであった.移植後539日に拒絶され, その後rG-CSF大量投与に反応し好中球が増加したが, 他の血球系は回復せず, 再移植を行った.しかしながら再移植後51日に腎不全にて死亡した.
  • 百名 伸之, 具志堅 俊樹, 楚南 盛章
    1994 年 8 巻 2 号 p. 163-167
    発行日: 1994/04/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    症例は6歳の男児.急性リンパ性白血病の診断で治療を行っていたが, 31カ月後に骨髄再発を認めた.この間Eschericnia coli L-Aspを2,000単位/m2/回×42回点滴静注で使用していた.再寛解導入療法を開始後, 8回目のL-Asp静注時にアナフィラキシーが認められ, 以後L-Aspを除く他の治療を試みたが寛解導入不能であった.MTT色素還元法による薬剤感受性試験の結果, L-Aspが有効であったため, Erwinia L-Asp, Ara-C, methotrexate, vincristine, prednisoloneの併用療法を行ったところ過敏反応を認めず完全寛解が得られた.この後測定した患児の抗L-Asp IgG抗体価は94U/mlと高値であった.以上より過敏反応でE. coli製剤を継続使用できない症例にも, Erwinia製剤は安全に使用でき, 有用であると思われた.
feedback
Top