日本小児血液学会雑誌
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4 巻, 2 号
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  • 林 泰秀
    1990 年 4 巻 2 号 p. 131-139
    発行日: 1990/06/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    近年の分子遺伝学の進歩により, 小児急性リンパ性白血病 (ALL) の染色体異常の切断点の近傍の遺伝子がクローニングされ, 転座に関与する遺伝子が次々と同定されてきた.本稿では染色体異常を (1) 転座型, (2) 欠失型, (3) 数的異常型の3型に分けて概説した.転座型では, B細胞系の14q32転座型は免疫グロブリン (Ig) の, T細胞系の14q11と7q35転座型はT細胞受容体 (TCR) 遺伝子の転座による再構成を用いて転座の相手の染色体上の遺伝子がクローニングされた.最近Pre-BALLでみられるt (1;19) も詳細に検討され, 従来より研究されている8;14転座型や9;22転座型でも新しい所見がみいだされ, 臨床像との関係が話題になっている.欠失型では9p-, 6q-, 12p-の研究が行われており, 癌抑制遺伝子が想定されている.数的異常型の研究は始まろうとしている.ALLの染色体の異常部位はALL発症または進展に関与する遺伝子の宝庫であり, 今後さらにたくさんの遺伝子が同定され, その構造や最終遺伝子産物の解明がなされ, 近い将来, ALLの予防と治癒可能な時代が到来すると思われる.
  • 河内 暁一, 伊東 亮助, 宮野 孝一, 北沢 淳一, 須藤 善雅, 葛西 幹雄, 荒井 宏治, 越前屋 竹寅, 佐藤 雄一, 横山 〓
    1990 年 4 巻 2 号 p. 140-146
    発行日: 1990/06/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    Myelodysplastic syndrome (MDS) は年長者に多くみられるため, 小児期における報告は少なかった.しかし最近小児の血液疾患を診るものにとってMDSは以前考えられていたほどにはまれではないことがよく認識されてきた.もちろん小児のMDSもFAB分類により診断されるがFAB分類では分類不可能な血液学的異常を示す例がある.Ill-defined dyshematopoiesisとの分類はまだ広く認められるにいたっていないが, 血球減少がみられていても病態が説明できないような患者の経過を観察する場合, また治療を行う場合もたいへん役立つと考えられる.われわれはill-defined dyshematopoiesisの診断基準に合致する症例10例について報告し, それらの血液学的特徴を検討した.10例中6例が4カ月から9年で白血病に移行した.初発時の血清LDH値が4001U/l以上, とくにLDHisoenzymeIIが高値をとることは白血病へ移行する可能性を示唆する因子であるかもしれない.小児におけるMDSないしill-defined dyshematopoiesis例のさらなる集積が必要であろう.
  • 岡崎 敏子, 中澤 眞平, 杉田 完爾, 森 泰二郎, 西野 和良, 安倍 隆, 木下 明俊, 鈴木 敏雄, 斎藤 みどり, 菊池 英之, ...
    1990 年 4 巻 2 号 p. 147-152
    発行日: 1990/06/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    年齢1歳未満の乳児白血病23例の細胞膜マーカーおよび染色体を検索し, その特徴を検討した.細胞膜マーカーでは, 急性リンパ性白血病 (ALL) 13例中11例はJ5 (CD10) 陰性で, HLA-DR, B4 (CD 19) 陽性であった.このうち2例はMY7 (CD13) が陽性で, 経過中にM5bに1ineage switch した.さらに4例は短期培養後に骨髄単球系抗原が陽性となった.急性非リンパ性白血病 (ANLL) 10例中6例が骨髄単球性あるいは単球性で, 4例が巨核球性白血病であった.染色体分析ではALL 9例中8例が, ANLL 6例中3例が11q23転座型であった.巨核球性白血病2例に+21を認めた.以上の結果から乳児白血病は, 細胞膜マーカー上では, 多様性に富んだ疾患群ではあるが, 巨核球性白血病を除いた大部分の白血病は, lymphoid系やmyeloid系の双方, とくにmonocytoid系へ分化可能な幹細胞由来で, biphenotypeの特徴を有していると考えられる.
  • 矢崎 信, 水野 美穂子, 鈴木 辰人, 和田 義郎, 大野 敏行, 安藤 恒三郎, 平林 憲之
    1990 年 4 巻 2 号 p. 153-159
    発行日: 1990/06/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    小児のPh1陽性ALLの2例で同種骨髄移植を行ったので報告した.症例1は, 13歳の男で第1寛解期にHLA一致, MLC陰性の兄より, 同種骨髄移植を行った.症例2は7歳の男で初発時は染色体正常であったが第1回目の骨髄再発時にPh1陽性の芽球が出現した.第2寛解期後3ヵ月目に発症した中枢神経系白血病治療直後の第3寛解期にHLA-A, B, DR一致, MLC陽性の母親から同種骨髄移植を行った.前処置は, 症例1はcyclophosphamide (60mg/kg×2) とaraC (39/m2×3) とTBI 10Gy, 症例2はcyclophsophamide (60mg/kg×2) とaraC (3g/m2×4) とTBI 10 Gyに中枢神経系白血病の治療のため脳脊髄照射を6Gy追加した.急性GVHDの予防は, 症例1はcyclosporine A単独, 症例2はcyclosporine Aと短期methotrexateの併用で行った.急性GVHDは, 症例1はII度, 症例2はI度であった.症例1は, 間質性肺炎および慢性GVHDを併発したが, 現在移植後39ヵ月でKarnofsky performance scale 100%, 症例2は, 現在慢性GVHDを併発しているが, 移植後8ヵ月で寛解中である.小児のPh1陽性ALLでは, もしも適当なドナーがみつかれば同種骨髄移植が第一選択と思われる.
  • 水谷 あかね, 片岡 佳子, 森本 哲, 数田 紀久子, 森岡 義仁, 東道 伸二郎, 今宿 晋作
    1990 年 4 巻 2 号 p. 160-165
    発行日: 1990/06/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    遺伝子組換えヒト顆粒球コロニー刺激因子 (recombinant human granulocyte colony stimulatingfactor, 以下rhG-CSF) を18例の好中球減少児に投与し, 効果を検討した.投与は経静脈的あるいは経皮下的に行い, 投与量は症例によって増減した.先天性好中球減少症5例と再生不良性貧血2例のグループにおいて, rhG-csF非投与の対照観察期28日間中, 末稍血好中球数は1日も500/Ps1以上とならなかったのに対し, 投与により15.9±6.6日間, 500/μl以上を維持した (p<0.01).悪性固形腫瘍7例において, 化学療法後の骨髄抑制からの白血球の立ち上がりはrhG-CSF投与によって早くなり, 非投与観察期では17.8±2.5日で2,000/μl以上となったのに対し, rhG-CSF投与期では12.8±2.6日と短縮された (p<0.01).末期のALLおよびCMLにおいてはrhG-CSFの効果は認められなかった.全例においてrhG-CSF投与による副作用は認めなかった.
  • 中舘 尚也, 小林 良二, 畑山 由起子, 服部 拓哉, 石川 順一, 畑江 芳郎, 武田 武夫
    1990 年 4 巻 2 号 p. 166-171
    発行日: 1990/06/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    小児悪性リンパ腫 (以下, NHL) の26例の病態と予後を検討した.Overallな治療成績は, 治療方法が統一されていないため, preliminaryな検討ではあるが, 寛解導入率が85%, 2年 FFSが 45%で, 17ヵ月以降の再発は認めなかった.しかし, 統一された治療プロトコール (CCLSGNHL-プロトコール) の導入された昭和60年を境に, III・IV期において, 寛解導入率は90%と88%で有意差はなかったが, 昭和60年以前では寛解後17ヵ月以内に全例が再発していたのに対し, 昭和60年以降では2年 FFS は45%と改善していた.再発8例のうちlymphoblastic型NHL5例は全例が再寛解導入に失敗したが, diffuse large cell型とsmall non-cleaved型の各1例は再寛解導入に成功し, それぞれ, 再寛解導入後12ヵ月と61ヵ月以上disease freeで生存中である.
  • 平林 万紀子, 熊谷 昌明, 高橋 弘剛, 佐々木 道子, 恒松 由記子, 小出 亮, 藤本 純一郎
    1990 年 4 巻 2 号 p. 172-177
    発行日: 1990/06/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    左上腕骨に原発し, 右上腕骨と左大腿骨に転移の認められた骨原発性悪性リンパ腫の1小児例を報告する.症例は5歳の女児で, 左上腕の膨隆を主訴として来院した.末稍血と骨髄には異常細胞の出現は認められなかった.骨X線で左上腕骨に, 多発性の骨融解像と骨膜反応を認めた.この部位の生検組織像と表面マーカーの分析から, いわゆるcommon ALL型のフェノタイプの骨原発性悪性リンパ腫と診断した.また, 骨X線像で病変の存在が疑われた右上腕骨と左大腿骨の生検組織からも同様な所見が得られた.患児は発症48ヵ月経過しているが, 再発は認められない.
  • 宇都宮 靖, 辻 靖博, 松下 詠治, 原田 友一郎, 石谷 暢男, 星加 忠孝, 中島 匡博, 西川 健一, 岡田 隆好, 田中 清
    1990 年 4 巻 2 号 p. 178-182
    発行日: 1990/06/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    頻回輸血による二次性ヘモクロマトーシスと輸血後肝炎による肝硬変を呈した17歳の再生不良性貧血の男子例を報告した.患児は各種治療抵抗性であり, 輸血による保存的治療を行っていたが最終的には肝不全で死亡した.剖検所見では肝, 膵, 脾, 副腎, 甲状腺, 胃, 大腸にヘモジデリンが多量に沈着していた.とくに肝においては肝炎の存在を裏付ける著明なリンパ球の浸潤とともに, 線維化とクッパー細胞によるヘモジデリンの貪食像が見られた.治療を輸血に頼らなければならない症例には鉄過剰症に対する対応も考慮しなければならないと思われた.
  • 郡司 勇治, 原田 和博, 鞭 熙, 飯塚 敦夫, 柳澤 正義, 中村 耕三
    1990 年 4 巻 2 号 p. 183-186
    発行日: 1990/06/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    われわれは, 背部痛にて発症し, 3週の経過で急速に両側下肢麻痺, 知覚障害, 膀胱直腸障害を呈した後縦隔原発のDumb-bell型悪性リンパ腫の一例を経験したので報告する.単純X線写真で傍胸椎部に腫瘤陰影を認め, 脊髄造影で完全閉塞, MRIで, 脊柱管内への進展を認めた.生検もかねて, 緊急に椎弓切除術を施行した.腫瘍は椎間孔を通して傍脊椎部より脊柱管内硬膜外腔に進展していたため, 脊柱管内のみ腫瘍を適出した.腫瘍組織は, 小円形細胞腫瘍で, 免疫組織化学的検索にて, MT1が陽性で, T細胞型の悪性リンパ腫と診断された.術後, 化学療法が奏功し, 傍脊柱部の腫瘤陰影は直ちに消失し, 神経学的症候に関しても改善し, 術後6ヵ月を経過した現在, 歩行可能となり, 知覚障害, 膀胱直腸障害も改善しておりdlsease free survivalの状態を続けている.
  • 大和田 葉子, 小澤 武史, 杉田 憲一, 江口 光興, 古川 利温
    1990 年 4 巻 2 号 p. 187-191
    発行日: 1990/06/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    血小板減少を伴った自己免疫性好中球減少症の一乳児例を報告した.症例は5ヵ月男児で, 全身の点状出血を主訴として来院した.末稍血検査所見では白血球i数6,000/μlで, 好中球の著明な減少があり, 血小板数も2,000/μlと著減していた.骨髄検査では, 有核細胞数16.9×104/μl, 巨核球数90/μlであった.しかし, 血小板の付着した巨核球はみられず, 好中球分葉核球は減少していた.また, 中毒顆粒が豊富であった.免疫学的にはPA-IgG, NB-IgGが陽性であった.自己免疫性好中球減少症および血小板減少症と診断しプレドニゾロンと非修飾型γ-グロブリンで治療した.血小板数は治療開始早期より増加したが, 好中球数は20日後になり増加を認め3ヵ月後退院した.しかし, その後も出血傾向および感染を繰り返し治療の必要な状態が続いている.
  • 青木 智寿, 西田 勝, 河 敬世, 勇村 啓子
    1990 年 4 巻 2 号 p. 192-196
    発行日: 1990/06/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    リンパ系, 骨髄系両方の形質を示したPh1染色体陽性急性白血病の1例を報告した.症例は12歳男児, 末稍白血球数33.4×104/cmm, 白血病細胞71%, 骨髄では白血病細胞71.8%, FAB分類M2, ミエロペルオキシダーゼ染色陽性, 染色体分析は治療前Ph1染色体陽性, 寛解後は陰性となった.細胞表面形質ではIa, CD19 (B4), CD10 (CALLA), CD33 (My9) それぞれ陽性, フローサイトメトリーによる二重染色で同一芽球でJ5, My9が陽性であった.免疫グロブリンの遺伝子分析ではJHに1本の再構成バンドが認められた.本例はmixed lineage leukemia (hybrid leukemia) のbiphenotypic leukemiaと思われる.腫瘍細胞起源はリンパ球, 骨髄球いずれにも分化能を有する多能性造血幹細胞レベルでの腫瘍化の可能性が考えられる.
  • 藤枝 幹也, 脇口 宏, 久川 浩章, 野村 伊知郎, 久保田 晴郎, 島内 泰宏, 友田 隆士, 倉繁 隆信
    1990 年 4 巻 2 号 p. 197-202
    発行日: 1990/06/30
    公開日: 2011/03/09
    ジャーナル フリー
    3例の慢性特発性血小板減少性紫斑病 (ITP) に対し, γ-グロブリン (γ-G1) 1g/kg/月の反復投与を試み, 2例で寛解導入に成功した.いずれも慢性ITP発病4-6年後に γ-Gl 1g/kg/月反復投与が開始され, 症例1 (女児) は5回投与後, 症例2 (女児) は6回投与後に寛解状態となった.症例1は1年後に再発したが, さらに1年後に再寛解に導入され, 症例2は2年間の寛解が持続している.症例3 (男児) はγ-Gl反復投与で出血傾向は改善したが, 血小板の増加は一過性で, 現在も治療中である.なお, 3症例全例に Platelet associated IgG (PAIgG) 値, natural killer (NK), lymphokine activated killer (LAK) 活性の改善, 正常化が認められたが, 症例3のNK, LAK活性の回復は一過性で, CD8+HLADR+高値と CD4/CD8比逆転が持続した.副作用は, 1例で頭痛が認められたが, γ-Gl中止により速やかに改善した.以上, 月1回の γ-Gl 19/kgの反復投与は, 速効性であることに加え, 免疫異常の是正も可能であることから, 難治性の慢性 ITPに有効な治療法と考えられた.
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