症例は46歳の男性. 全身リンパ節腫脹, 肝脾腫, 腎機能不全のため, 精査目的で入院した. 入院時検査所見で, 異常リンパ球の増加を伴う白血球増多, 高Ca血症, 腎機能低下, 血清の成人T細胞性白血病 (以下ATL) ウイルス抗体高値を示し, リンパ節生検及び骨髄検査の結果, ATLと診断された. 抗癌薬治療により, ATLは寛解状態に入り, ステロイド薬投与と補液によって高Ca血症及び腎不全も改善傾向にあったが, 次第に低酸素血症が増悪し, 胸部X線上, 肺水腫像を呈した. 経気管支肺生検の結果, 肺胞中隔に瀰漫性の石灰沈着を認め, 肺の異所性石灰沈着を証明した. 本症は生前確診に至った例は珍しく, また肺水腫の発生には高Ca血症の是正や腎不全の治療が関与しているとも考えられている. 今後, 高Ca血症を伴う腫瘍性疾患などで, 急速に進行する肺水腫を見た場合, その鑑別診断には本症をも含頭に置き, 補液などにあたって細心の注意が必要であると思われれる.
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