日本胸部疾患学会雑誌
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29 巻, 8 号
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  • 岡崎 望
    1991 年 29 巻 8 号 p. 943-953
    発行日: 1991/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    農夫肺症は酪農従事者に発生する過敏性肺炎であり, 原因抗原の一つである Micropolyspora faeni (Mf) に対する血清沈降抗体陽性率は, 喫煙者では非喫煙者の約1/8~1/2程度とされている. この現象の機序について, 家兎過敏性肺炎モデルを用いて, タバコ煙の短期 (5週), 長期 (20週) 曝露による抗体産生への影響, タバコ煙の30週曝露による肺胞マクロファージ (AM) の補助細胞機能に対する影響について検討し, 以下の結論を得た. 1) Mf特異的IgG, IgM抗体値は, 非タバコ煙曝露群 (N=6) に比し, 長期曝露群 (N=7) では気管支肺胞洗浄液, 血清とも有意 (p<0.01) に低下し, 肺と脾臓のMf特異的抗体産生細胞数も減少した. 2) AMのリンパ球増殖反応に及ぼす補助細胞機能は, AMの割合を漸増させるに従い長期曝露群で有意 (p<0.01) な抑制作用を示した. 以上より, 喫煙は実験的過敏性肺炎においてリンパ球, AM相互の機能に影響し, 曝露期間の長期化にともなって抗体産生に抑制的に作用すると考えられた.
  • 篠崎 史郎, 松沢 幸範, 吉川 佐和子, 藤本 圭作, 山口 伸二, 原田 和郎, 久保 恵嗣, 小林 俊夫, 関口 守衛
    1991 年 29 巻 8 号 p. 954-962
    発行日: 1991/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    体プレチスモグラフ (BP) 法の胸郭内気量 (TGV) 測定において, 自由に panting させた時の速度 (natural panting frequency (NF)), cheek support の影響を慢性閉塞性肺疾患 (COPD) 患者46名と健常非喫煙者 (control) 8名につき検討した. COPD群は閉塞性障害の軽い group I (specific airway conductance (SGaw)>0.1, n=18) と, 強い group II (SGaw<0.1, n=28) に分けて検討した. TGVは圧型BPで測定した. NFは control では2.00±0.43Hz (mean±SD), group Iでは1.92±0.78Hzであり, 閉塞性障害の強い group IIでは1.39±0.59Hzと他群より有意に低値を示した. また control と group Iでは, NFにおけるTGVと0.5~1.0HzにおけるTGVとの差は, それぞれ-0.01±0.07L, -0.06±0.16Lであり, ceek support を加えても変化はなかった. しかし, group IIにおいてはNFは低いにもかかわらず, この差は他群より大きく cheek support を加えることにより消失した (0.13±0.25から-0.06±0.27L, p<0.05). 以上の結果より, 閉塞性障害の強い患者ではNFは低い値を示すが, それにもかかわらずTGVは過大評価される傾向があること, またその要因としては cheek を含めた胸郭外気道の compliance の影響が大であること等が推定された.
  • 南部 静洋, 岩田 猛邦, 種田 和清, 郡 義明, 田口 善夫, 富井 啓介, 三野 真里, 柚木 由浩, 市島 國雄, 小橋 陽一郎, ...
    1991 年 29 巻 8 号 p. 963-970
    発行日: 1991/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    転移性肺胞石灰化症は高カルシウム血症を伴う悪性腫瘍や慢性腎不全に合併する稀な病態である. 本院剖検 (1966年~1989年) 2,993例中, 肺組織 Kossa 染色にて広範な肺組織カルシウム沈着を認めた8例の転移性肺胞石灰化症について, 基礎病変, 血清カルシウム, 腎機能, 胸部レ線, 骨シンチグラフィー及び組織学的病変を検討した. 基礎疾患は悪性リンパ腫3例, 多発性骨髄腫2例, 肺癌2例, 急性骨髄性白血病1例であり, 全例で血清カルシウムの上昇と腎機能低下を認めた. 胸部レ線はほぼ正常から浸潤影を呈する症例など多彩で, 転移性肺胞石灰化症に特異的所見はなかった. 骨シンチグラフィーでは2例に両肺びまん性の異常集積を認めた. 組織学的には肺胞壁へのカルシウム沈着による浮腫と線維化を認め, 呼吸不全の原因と考えられた. 高カルシウム血症, 腎不全を合併した悪性腫瘍では, 転移性肺胞石灰化症は重要な合併症であり, その診断には経時的な骨シンチグラフィーによる検索が有用である.
  • 植木 純, 檀原 高
    1991 年 29 巻 8 号 p. 971-977
    発行日: 1991/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    食道超音波内視鏡 (Endoscopic Ultmsonograpy) は, 食道を介した縦隔, 肺門部の広範な心血管系の dynamic な形態の観察を可能とした. 従来より in vivo での観察が困難であった低圧系の血管である上大静脈に注目し, その動態, 特に体位変換に伴う内径の変化を検討した. 上大静脈は心拍に同期して形態を変え, 吸気時にその内径を増大し, 呼気時に減少させた. さらに体位変換に伴いその内径を変化させ, 右下側臥位 (最大径11.3±0.3, 最小径9.8±0.3〔平均±SEM, 単位: mm/体表面積m2〕), 背臥位 (最大径9.4±0.3, 最小径7.9±0.3), 左下側臥位 (最大径8.5±0.3, 最小径7.1±0.3) の順に有意にその径を減じた (N: 34, p<0.01). 上大静脈は肺循環系と同様に低圧系に属し, collapsible tube として共通の特性を有して, 呼吸, 体位などの生理的条件の変化に呼応し容易にその内径を変化させる.
  • 井上 雅樹, 本間 敏明, 斉藤 武文, 陶山 時彦, 青木 弘道, 松木 健一, 長谷川 鎮雄
    1991 年 29 巻 8 号 p. 978-983
    発行日: 1991/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    非パンティング (普通) 呼吸時特殊気道コンダクタンス測定における呼吸頻度の影響について検討するため, 肺気腫症20例と正常対照19例を対象にし, 体プレチスモグラフを用いて呼吸頻度を0.5~2.0Hzとし, 非パンティング呼吸時の気道コンダクタンスを測定, 検討した. 正常例では呼吸頻度の増加に従い tidal volume, mouth flow が有意に変化し, 特殊気道コンダクタンスも有意に低下, mouth flow と特殊気道コンダクタンス間には有意な負の相関を認めた. 肺気腫症例では呼吸頻度の増加に伴い tidal volume は著明に低下したが, 特殊気道コンダクタンスには有意な変化を認めなかった. しかし tidal volume と特殊気道コンダクタンス間には有意な正の相関を認めた. 今回の成績より非パンティング (普通) 呼吸時特殊気道コンダクタンス測定に際しては, 呼吸頻度, mouth flow, tidal volume が測定値に関与するため, これらのパラメーターを統一する必要があることが示唆された.
  • 秋山 一男, 饗庭 三代治, 柳 川洋, 吉良 枝郎, 三上 理一郎
    1991 年 29 巻 8 号 p. 984-992
    発行日: 1991/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    全国の32呼吸器・アレルギー専門施設を受診中の成人気管支喘息患者2,832名につきアンケート調査を主とした実態調査を実施した (平成元年9月18日~22日). 1) 性比は1:1, 50歳代が最も多かった. 成人期発症 (20歳以上) が79.8%を占めた. 通年型が68.2%で病型はアトピー型, 混合型, 感染型がほぼ同数であった. 2) 経口・吸入薬剤等の常用者が80%を占め, ステロイド依存性患者は約30%にみられた. 3) 発作時に点滴治療を受けたことがある人が76.9%, 酸素吸入を受けた人は43.1%, 人工呼吸管理を受けた経験のある人は4.8%にみられた. 発作入院歴, 夜間救急外来受診歴, 救急車利用歴のある人は, 各々59.5%, 51.7%, 24.8%であった. 4) 主治医判定による重症度は軽症が48.1%, 中等症が38.2%, 重症が12.7%であった. 5) 30施設より回答のあった成人喘息発作死症例は1年間で41名で全喘息受診患者総数 (推計) の約0.29%であった. 高齢者と在宅死が多かった. 今後, 喘息患者の救命救急体制の確立が緊急の課題と考えられる.
  • 永井 厚志, 坂本 匡一, 滝沢 敬夫, 森信 茂, 山野 優子, 長尾 憲樹, 石原 陽子, 香川 順
    1991 年 29 巻 8 号 p. 993-997
    発行日: 1991/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    気道閉塞の発症, 増悪因子として指摘されているサブミクロンの硫酸ミストの気道傷害についてモルモットを用い, 粒径1.1~2.1μmをピークとする硫酸ミストの暴露実験を行った. 光顕, 走査電顕観察では, 暴露3日目には中枢気道において線毛がやや疎となり, 1週間暴露では線毛の剥離が著しく, 4週間暴露では気道表面にわずかな線毛を認めるのみであった. 透過型電顕観察では, 上皮細胞の細胞質が気腔内へ膨隆したり, 複合線毛や基底側の細胞間隙の開大などの多彩な形態異常が観察された. 末梢気道では, クララ細胞の平低化がみられたが, その程度は軽度にとどまった. サブミクロンの硫酸ミスト暴露により, モルモットの中枢気道粘膜上皮に比較的高度な傷害がもたらされることが知られた.
  • 長岡 英世, 佐藤 忍, 細谷 順, 豊口 禎子, 仲川 義人, 高橋 敬治
    1991 年 29 巻 8 号 p. 998-1006
    発行日: 1991/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    血清テオフィリン総濃度 (T) が変化しないか低下しているにもかかわらず遊離型テオフィリン濃度 (F) が上昇する3症例を経験した. これらの症例では血清アルブミン濃度が低下していた. T, Fの変化の原因を解明するために人でFと血清アルブミン濃度との関係, 家兎でアミノフィリン単独投与時とアルブミン結合率の高いセファゾリン (CEZ) 併用時のT, Fの関係を検討した. 人でのFの割合 (F/T) は血清アルブミンと負の関係, 家兎ではCEZ投与量依存的にF/Tの上昇, Tの低下が見られた. これらの現象はテオフィリンの血清アルブミン結合部位に限度があるためと考えた. 3症例に於けるFの上昇は血清アルブミン濃度の低下が主因であり, Fの上昇による組織移行の増加がTの低下の原因と結論した. Tで臨床症状の説明が困難な症例ではFを測定するか, それが困難な場合は血清アルブミン濃度を測定し症状を評価する必要がある.
  • 小林 理
    1991 年 29 巻 8 号 p. 1007-1016
    発行日: 1991/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    特発性間質性肺炎と各種膠原病肺の症例について, 肺胞毛細血管の電顕所見を比較検討した. (1) 特発性間質性肺炎群では, 基底膜が正常に比べ肥厚しており, 微小循環系の障害が推測された. (2) 膠原病群では, 内皮細胞の腫脹と著しい基底膜の肥厚が認められ, より強い内皮細胞障害が推測された. (3) PSS群とMCTD群では, 内皮細胞の変性や基底膜の多層化が多くみられ, 膠原病群のなかでも特に内皮細胞障害が強いと考えられ, 肺高血圧症との関連が注目された. (4) Microtubular structure は, SLE群, 皮膚筋炎・多発性筋炎群, PSS群, MCTD群に認められた. (5) Weibel-Palade body は, PSS群とMCTD群のみに認められた. (6) 内皮周囲細胞は, PSS群とMCTD群に増加が目立ち, 微小循環系の障害との関係が示唆された. (7) 今回検討した症例の中には, 電顕的に内皮細胞下や間質に沈着物が認められた症例はなかった.
  • 岸本 卓巳, 佐藤 利雄
    1991 年 29 巻 8 号 p. 1017-1021
    発行日: 1991/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    胸部X線上胸膜プラークを認める31例の肺胞から末梢気道あるいは全身性の免疫能について検討を加えた. 31例全例には明確な石綿曝露歴があったが, 気管支肺胞洗浄 (BAL) 液中に含鉄小体を認めたのは21例のみであった. BAL液中の含鉄小体数別にBAL液中の白血球あるいはリンパ球サブセットを検討したところ, 石綿曝露量が多くなるにつれて, 好中球とTリンパ球数の減少とBリンパ球の増加がみられた. また石綿濃厚曝露者ではCD25陽性細胞が著明に増加していた. 一方, 全身性の免疫能では, 石綿高濃度曝露者においてCD25陽性細胞, Soluble IL-2 receptor が低下しており, 全身性の免疫能の低下が示唆された.
  • 上岡 博, 大熨 泰亮, 森高 智典, 木浦 勝行, 美馬 祐一, 堀口 隆, 畝川 芳彦, 田端 雅弘, 柴山 卓夫, 前田 忠士, 瀧川 ...
    1991 年 29 巻 8 号 p. 1022-1028
    発行日: 1991/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺癌266例, 良性呼吸器疾患345例を対象に, 血清SLX, CEA, SCC, NSE値の意義を比較検討した. 血清CEAの肺癌における陽性率 (44.4%), 良性呼吸器疾患における疑陽性率 (15.3%) はいずれも4種類のマーカーの中で最も高率であった.. 血清SLXの陽性率は32.0%とCEAに比し低率であったが, 病期との相関は良好であり, 疑陽性率も7.2%と低率であった. 血清SCCとNSEはそれぞれ扁平上皮癌, 小細胞癌において特異的に上昇していた. 4種類のマーカーを用いた判別分析では, 肺癌と良性呼吸器疾患との正判別率は70%にすぎなかった. 治療効果との関係では, 腺癌ではSLX, 小細胞癌ではNSEとSLXが治療効果と有意の相関を示した. 血清腫瘍マーカーは, 肺癌の診断では, 胸部X線, 喀痰細胞診に比し sensitivity が劣り, さらに特異的なマーカーの探索が必要と思われたが, 治療効果のモニターには, 腺癌ではSLX, 小細胞癌ではNSE, SLXが適していると考えられた.
  • 早川 啓史, 佐藤 篤彦, 千田 金吾, 岩田 政敏
    1991 年 29 巻 8 号 p. 1029-1036
    発行日: 1991/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    高 heparin precipitable fraction (HPF) 血症による皮膚潰瘍を呈した特発性間質性肺炎 (IIP) 症例の経験を契機として, 各種間質性肺炎 (IIP 18例, 膠原病肺9例, 肉芽腫性肺疾患7例), 肺感染症 (肺炎6例, びまん性汎細気管支炎12例) および肺癌 (9例) における血漿HPF値の測定を試みた. 急性増悪期のIIP 6例中全例に血漿HPF値の上昇がみられた. 一方, 膠原病肺や過敏性肺炎では, 急性経過を呈する症例でも増加傾向は少なかった. 肺感染症および肺癌では, 全体の22%に血漿HPF値の上昇を認めた. 各種炎症性パラメーターとの関連性をみると, 血漿HPF値の増加は赤沈,α1-グロブリン,α2-グロブリン, C3, フィブリノーゲンおよびCRP値の上昇と相関していた. 以上より, 肺疾患での血漿HPF値の測定は, 診断に対する有用性は低いが, IIPの急性増悪の評価においては1つの指標になり得ることが示唆された.
  • 佐藤 勝重, 中村 清一, 小関 隆, 山内 富美子, 馬場 美智子, 三上 正志, 小林 龍一郎, 藤川 晃成, 長岡 滋
    1991 年 29 巻 8 号 p. 1037-1041
    発行日: 1991/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    56歳女性. 右耳痛・右顔面痛を主訴に当院耳鼻咽喉科を受診, その後右耳介及びその周囲に水疱形成がみられ, 急性呼吸不全を呈して当科に紹介された. 血中抗帯状疱疹ウイルス抗体価は1,024倍と上昇, 神経学的に多発性脳神経麻痺を呈し, 胸部X線写真上右下肺野に浸潤影が見られた. 多発性脳神経麻痺を合併した Ramsey Hunt 症候群と診断, 急性呼吸不全の原因は反回神経麻痺による中枢部気道閉塞と嚥下性肺炎によるものと考えられた. 抗生剤と抗ウイルス剤 (アシクロビル) の併用により著明な改善がみられた. 文献的検索では, 下部脳神経麻痺を合併した Ramsey Hunt 症候群の報告は比較的少なく, さらに, 呼吸器合併症を呈した症例は稀であった.
  • 西 耕一, 山田 素宏, 森下 大樹, 中村 勇一, 村田 義治, 藤岡 正彦, 村本 信吾, 村上 眞也, 関 雅博, 安井 正英, 藤村 ...
    1991 年 29 巻 8 号 p. 1042-1046
    発行日: 1991/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は, 67歳の男性で, 前胸部痛および呼吸困難を主訴として入院した. 胸部X線写真や胸部X線CT写真から後縦隔腫蕩が認められた. 心エコーでは, 腫瘍による左房の圧排が認められ, 血行動態においても, 肺動脈圧および肺動脈楔入圧の上昇が認められた. 腫蕩の由来は不明であったが, 腫瘍による左房の圧迫により肺水腫が生じているものと考えられ, 腫瘍の生検と左房の減圧目的で試験開心術を行った. 生検の結果, 紡錘型細胞からなる肉腫であることが判明し, 術後胸骨は閉鎖せず, 皮膚のみ縫合して, 左房の減圧を施した. 剖検では, 腫瘍は食道下部において食道平滑筋層と連続しており, 胸水 myoglobin が高値でもあることから, 食道原発平滑筋肉腫と診断された. 食道原発平滑筋肉腫自体も稀であるが, 左房の圧迫による肺水腫を呈した報告はなく, きわめて珍しい症例と考えられたため報告した.
  • 岩橋 徳明, 鈴木 章夫, 田村 伸介, 河合 豊, 三宅 光富, 松田 良信, 前田 重一郎, 中野 孝司, 波田 寿一, 東野 一彌
    1991 年 29 巻 8 号 p. 1047-1051
    発行日: 1991/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は38歳男性, サワガニ生食の数ヵ月後労作時呼吸困難出現. 近医受診し両側の胸水貯留を指摘され兵庫県医科大学第3内科に紹介入院となった. 入院時, 両側胸水および心嚢液貯留を認めた. 血清, 胸水, 心嚢液中のIgEの著増, 好酸球増加を認めたため, 血清, 体液を用いてオクタロニー法を施行し, 宮崎肺吸虫の特異沈降抗体を認め, 本症例を宮崎肺吸虫症と診断, ビチオノール投与にて軽快した.
  • 小山 泰弘, 阿児 博文, 堅田 均, 濱田 薫, 春日 宏友, 西川 潔, 成田 亘啓, 飯岡 壮吾, 北村 惣一郎, 北川 正信
    1991 年 29 巻 8 号 p. 1052-1058
    発行日: 1991/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は65歳の男性. 咳, 痰, 喘鳴, 呼吸困難を主訴として入院した. 胸部X線所見では過膨張所見に加えて両下肺野を中心に軽度の小粒状影を認めた. 気管支拡張剤の投与で症状は軽減し, PaO2も改善したが, 末梢血中好酸球分画の増多とIgE値は高値が持続し, X線陰影も変化しなかった. 本症例は肺気腫, 気管支喘息だけでは説明がつかないため, 開胸肺生検を施行. 病理組織学的所見では肺気腫の所見に加え, 肺胞腔および気道末端壁から胞隔にかけ小円形細胞と好酸球の浸潤を多数認め, 肺動脈枝は細胞浸潤と肉芽増殖を認め狭窄していた. 本症例は肺気腫, 気管支喘息に合併していた遷延性好酸球性肺炎の症例と考えられた.
  • 五十嵐 知文, 平沢 路生, 渋谷 由江, 夏井坂 徹, 浅川 三男, 鈴木 明
    1991 年 29 巻 8 号 p. 1059-1063
    発行日: 1991/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は12歳男性. 咳嗽, 喀痰, 発熱を主訴に来院した. 胸部単純X線像, CT像でほぼ全肺野にわたり気管支肺動脈影に連続した小葉中心性の分布を示す粒状影, 肺野濃度の不規則な上昇を認め, びまん性汎細気管支炎 (diffuse panbronchiolitis: DPB) と同様の所見であった. 気管支鏡では気管支内に食物残渣を認めた. 一方, 本例は食道の拡張像を認め食道Ba像, 食道内圧曲線より食道アカラシア (F型, II度, B型) を有していた. 本例は, アカラシアによる慢性, 反復性の誤嚥歴を有し, このためびまん性誤嚥性細気管支炎 (diffuse aspiration bronchiolitis: DAB) に一致する病変を併発したものと考えた.
  • 青島 正大, 亀山 伸吉, 村井 容子, 山崎 峰雄, 神谷 達司, 宮崎 徳蔵
    1991 年 29 巻 8 号 p. 1064-1069
    発行日: 1991/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    81歳, 男性の Theophylline による横紋筋融解の1例を経験した. 喘息発作の治療のため Aminophylline 250mgの点滴を受けた後, 両下肢の脱力が出現し, 血清CPK 31, 450IU (CPK-MM 100%) とMM型優位の高CPK血症の他筋逸脱酵素の上昇, 血清ミオグロビン及び尿中ミオグロビン値の著増を認めた. 入院当日から Theophylline 投与を中止し, 保存的治療により横紋筋融解に伴う急性腎不全を併発することなしに軽快した. Theophylline による横紋筋融解の報告例としては本例は世界で11例目, 本邦で2例目である.
  • 小畑 秀登, 城戸 優光, 金 成泰, 永田 忍彦, 吉松 博
    1991 年 29 巻 8 号 p. 1070-1074
    発行日: 1991/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    骨巨細胞腫は, 骨の良性腫瘍であり局所再発を繰り返すことは多いが肺への転移は稀である. 今回, 我々は肺に多発性に転移した骨巨細胞腫を経験したので報告する. 症例は, 28歳男性. 23歳の時, 右肘頭部に疼痛が出現しX-Pにて右尺骨上端に骨融解像が認められたため, 某院整形外科にて骨掻爬, 自家骨移植を施行されている. 当時の, 病理診断は良性骨巨細胞腫であった. 8ヵ月後および1年8ヵ月後に, 局所再発のため再手術を受けているが, いずれも病理組織像は良性骨巨細胞腫であった. 昭和63年5月に咳嗽, 発熱等の感冒様症状が出現し, 近医を受診した. このとき, 胸部X-Pにて多発性の腫瘤影を発見され, 当院に紹介. 入院後, 開胸肺生検にて, 骨巨細胞腫の肺転移と診断され, 同時に腫瘤をすべて摘出した. 初発7年後の現在も再発をみていない.
  • 網島 優, 常田 育宏, 岩田 一朗, 牧野 裕樹, 西浦 洋一, 川合 栄邦, 真栗 真
    1991 年 29 巻 8 号 p. 1075-1078
    発行日: 1991/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は41歳男性. 職場健診で胸部X線写真上陰影の増大を指摘された. 写真上は右中肺野に辺縁の比較的明瞭な結節影があり1年間で明らかな増大傾向が認められた. 胸部CT, 経気管支擦過等の諸検査で確診は得られなかったが肺癌を疑い右下葉切除術を施行した. 切除標本には2個の腫瘤形成が認められ, 光顕像, 偏光顕微鏡像, 電顕像にてアミロイド結節と診断した. その後の検索では他部位にアミロイド沈着は認められず原発性の結節性肺アミロイドーシスと診断した. 免疫組織化学的検索では既知のアミロイドの抗血清とは反応せず, 未知のアミロイド蛋白である可能性も示唆された. また電顕像でアミロイド結節内部の多核巨細胞周囲の細胞膜陥凹部にアミロイド線維束が放射状に配列する“amyloid star”像が認められ, 巨細胞がアミロイドの生成に関与していることが臨床例で示された貴重な症例と考えられた.
  • 小林 英夫, 高草木 護, 中沢 堅次, 向井 万起男
    1991 年 29 巻 8 号 p. 1079-1082
    発行日: 1991/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    経気管支肺生検により診断しえた肺好酸球性肉芽腫症の1例を報告した. 症例は, 24歳, 男性で, 主訴は発熱, 咳嗽であった. 胸部CTにより多発性小嚢胞と小結節性病変の存在を認め, 本症が疑われた. 経気管支肺生検により, 好酸球浸潤を伴う, S100蛋白陽性の組織球様細胞の集簇を認め, 確定診断が得られた. 従来, 好酸球性肉芽腫症の診断における経気管支肺生検の評価はあまり高くないが, 早期ないし活動性の時期においては, 経気管支肺生検により診断可能な症例が少なくないものと思われた.
  • 金 栄治, 谷口 隆司, 河原崎 茂幸, 鷹巣 晃昌
    1991 年 29 巻 8 号 p. 1083-1087
    発行日: 1991/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    通常型の Wegener's 肉芽腫症は, 上下気道, 腎の壊死性肉芽腫性血管炎および糸球体腎炎をその三徴とする. それに対し限局型のWGでは, 通常型と同様の肺病変が認められるが, 腎病変がないことが特徴である. 58歳女性の限局型WGの1例を経験したので報告する. 患者は胸部異常陰影を主訴として入院した. 開胸肺生検にてWGに一致する壊死性肉芽腫性血管炎を認めた. 腎および副鼻腔等他の臓器には異常はみられなかった. 肺陰影は cyclophosphamide および steroid 剤投与にて改善した. 退院18ヵ月後においても, 患者の全身状態は良好で, 陰影の増悪は認められない.
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