日本胸部疾患学会雑誌
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33 巻, 6 号
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  • 大木 康生, 佐藤 伸之, 石田 明, 菊池 健次郎
    1995 年 33 巻 6 号 p. 593-598
    発行日: 1995/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    慢性肺疾患患者の安定期に観察される不整脈, 自律神経機能およびその生命予後との関係を24時間ホルター心電図を用いた不整脈解析および心拍変動解析により検討した.
    対象は男性の慢性肺疾患群67例 (陳旧性肺結核35例, 慢性肺気腫32例) と健常コントロール群10例で, 疾患群より観察開始後3年以内死亡群と5年以上生存群を選別し比較検討した.
    疾患群では最小心拍数が有意に高く, コントロール群でみられた最小心拍数の日内変動は消失していた. 不整脈による突然死はなかった. 死亡群と生存群の背景因子, 動脈血酸素分圧, 最小心拍数, 不整脈の発現頻度に有意な差はなかったが, 死亡群においてパワースペクトル解析上, LF/HF比の有意な低下が認められた. 以上より, 慢性肺疾患患者の生命予後には安定期に観察される不整脈やそれによる突然死の関与は少なく, 副交感神経優位の自律神経機能異常が関与する可能性が示唆された.
  • 二次元電気泳動法を用いての検討
    南 宏明, 松本 博之, 長根 忠人, 武田 昭範, 箭原 修, 中野 均, 山崎 泰宏, 長内 忍, 秋葉 裕二, 菊池 健次郎
    1995 年 33 巻 6 号 p. 599-604
    発行日: 1995/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺性心の病態, 診断および治療については種々の面から研究されている. しかし, 心機能のもとになる心筋構造タンパク質の変化についての報告は少ない. そこで本研究では3週間の低酸素 (10%O2) 曝露により肺性心を作成し, 心筋構造タンパク質の変化を二次元電気泳動法を用いて分析した. 5週齢のSDラットを10%O2/90%N2の低酸素環境下で3週間飼育した肺性心群と室内空気下で飼育したコントロール群で比較検討した. 一週毎に右室収縮期圧, Hb, Htおよび左右心室重量を測定後, 両室心筋の構造タンパク質を定量した. 低酸素後3週の両心室心筋でデスミンの増加を認めた. 著明に肥大している右室心筋のみならず, 肥大の軽度な左室心筋でもデスミンの増加したことは, デスミンの発現にホルモンなどの内分泌環境の変化や低酸素の直接影響が関与することを示唆させた.
  • 長谷川 潤, 佐藤 篤彦, 八木 健, 千田 金吾
    1995 年 33 巻 6 号 p. 605-611
    発行日: 1995/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    Muramyl dipeptide (MDP) の活性をさらに高めた合成誘導体であるロムルチド [MDP-Lys (L18)] について, 肺局所細胞の感染防御能に及ぼす影響について検討した. ラットを用いた基礎的実験でロムルチド投与により, 末梢血白血球数に比して気管支肺胞洗浄液中の総細胞数, ミノール化学発光による殺菌能及び白血球表面接着分子の発現が著増するのが観察された. さらに放射線療法を施行した肺癌患者における臨床的検討では, 気管支肺胞洗浄液細胞の回収総数と殺菌能の低下がロムルチド投与により軽度にとどまった. その結果, ロムルチドが肺局所細胞の感染防御能を増大させることが推察された.
  • 佐藤 敦子, 棟方 充, 網島 優, 南須原 康行, 本間 行彦, 川上 義和
    1995 年 33 巻 6 号 p. 612-617
    発行日: 1995/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    気管支喘息患者38名において, 42回の抗原吸入時の気道反応パターンとそれに影響を与える因子の解析を行った. 抗原吸入時のFEV1の経時的変化は, 即時型反応のみ陽性 (Isolated IAR), 即時型および遅発型反応陽性 (Dual), 遅発型反応のみ陽性 (Isolated LAR) の3群に分類された. Dual では, 動物抗原が22名中9名を占め, Isolated LAR では真菌が10名中5名を占めた. Isolated LAR において RAST score は他の群に比し有意に低値であり, 吸入24時間後に白血球数の有意な増加を認めた. 誘発前の呼吸機能及び気道過敏性, 皮内反応の陽性パターン, IgE RIST, 吸入抗原の種類および濃度, 末梢気流の指標としてのV25の経時的変化と気道の反応パターンと間に相関は認められなかった. 以上の結果から, 抗原吸入時の気道反応パターンは抗原の種類に依存する部分が大きいと考えられた.
  • 臨床活動性との関連について
    友田 恒一, 米田 尚弘, 塚口 勝彦, 吉川 雅則, 徳山 猛, 夫 彰啓, 福岡 和也, 仲谷 宗裕, 成田 亘啓, 田坂 博信
    1995 年 33 巻 6 号 p. 618-624
    発行日: 1995/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    Mycobacterium-avium-intracellulare complex (MAC) 症患者の末梢血単球 tumor necrosis factor alpha (TNFα) と interleukin-6 (IL-6) 産生能とをMAC由来の puried protein derivative-B (PPD-B) 抗原刺激, 非刺激下で測定し, 臨床像との関連を検討した. 非刺激下ではTNFα産生能は活動例, 非活動例, 健常者の順に高く, IL-6産生能は活動例, 健常者, 非活動例の順に高かった. 抗原刺激時では, TNFα産生能は活動例に亢進し, 特に排菌持続期間長期の症例ほど亢進し, 栄養障害の指標である血漿アミノ酸バランスの指標である Fischer 比 (BCAA/AAA) と有意な逆相関が認められた. IL-6産生能は活動例, 非活動例とも健常者に比べ有意な産生低下が認められた. 単球TNFα, IL-6産生能はMAC感染時の臨床病態と密接に関連していると考えられた.
  • 鈴木 淳夫, 角坂 育英, 金子 昇, 喜屋武 邦雄, 中野 邦夫, 栗山 喬之
    1995 年 33 巻 6 号 p. 625-629
    発行日: 1995/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    モノクロタリン (Mct) 投与後のラット肺におけるサイトカインの関与について気管支肺胞洗浄 (BAL) を施行して得た肺細胞を培養し, その上清から Interleukin-2 (IL-2) 活性能を測定し検討した. 4週齢, 雄, SD系ラットを用い, Mctを投与後1, 2, 3週目に右室収縮期圧測定後, 取り出した肺にて大BALを施行した. 大BALにより得た肺細胞を2.5×105/mlに調整し24時間培養した後, 上清から Interleukin-2 (IL-2) 活性能を bioassay 法にて測定した. 実験結果は, IL-2活性能はMct投与後2週でのみ有意な増加を示した. Mct投与後2週目は, 組織学的には滲出期から増殖期に変わる時期であり, この時期にIL-2活性能が増加したことから, Mct投与後ラット肺においてサイトカインにより各種細胞が互いに活性化し, 病像を進行させ, ラット肺高血圧の成立に関与していることが示唆された.
  • 塩田 雄太郎, 竹本 剛, 山口 和男, 小野 哲也, 丸川 將臣, 加地 正郎, 新屋 晴孝
    1995 年 33 巻 6 号 p. 630-634
    発行日: 1995/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    60歳男性が喀血を主訴に入院した. 胸部X線写真では右肺は完全に虚脱し, 右の胸腔は石灰化を伴う物質により占拠されていた. 喀痰より結核菌が検出されたため, 抗結核剤にて加療を行った. 入院4ヵ月頃から多量の喀血を認めたため, 気管支鏡下にトロンビンを局所投与したが効果はなかった. 患者の右肺は完全に虚脱しており胸腔内の石灰化も著明で外科的切除はかなり困難と考えられた. 血管造影にて, 右第7, 8, 9, 10, 12肋間動脈からの extravasation が認められたためそれぞれの血管に対して塞栓術を施行したところ喀血は消失した. 本症例では肋間動脈からの出血がどのような経路で気道内への出血となったのか明瞭ではないが胸腔内に出血しそこからさらに気道内へ流入した可能性が高いものと考えられた.
  • 別府 穂積, 野寺 博志, 新 謙一, 吉村 信行, 月本 光一, 長嶋 洋治
    1995 年 33 巻 6 号 p. 635-639
    発行日: 1995/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    進行期胸腺癌の治療には化学療法, 放射線療法が重要だが確立されたプロトコールはない. 我々は両者の併用により寛快を得た胸腺癌の1例を経験したので報告する. 症例は79歳, 男性. 1992年11月5日咳, 痰, 呼吸困難を主訴に来院した. 来院時, レ線上左胸水および心膜水貯留, 胸部CT上, 前縦隔腫瘍を認めた. 腫瘍は経皮的生検にて胸腺原発扁平上皮癌と考えられた. 腫瘍は左胸膜と心嚢に浸潤していたため手術不能と判断し, 化学療法 (CDDP+VDS+MMC, 全身投与) を施行した. 心嚢液に対しては, 排液後, MMCを心嚢内に注入した. さらに, 放射線療法 (59Gy前縦隔部照射) を実施し, 全身状態の改善をみた. 照射終了後2年5ヵ月間, 再発, 転移はみられない. 本症例は進行期にある胸腺癌に対しての治療プロトコールの確立のため有用な情報を提供するものと思われた.
  • 富田 正雄, 綾部 公懿, 原 信介, 岡 忠之, 赤嶺 晋治
    1995 年 33 巻 6 号 p. 640-644
    発行日: 1995/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺癌術後9ヵ月目に発生した右主肺動脈の急性大血管性肺血栓症例に対して人工心肺装着下に血栓摘除術を行った. 本症の肺癌術後の腫瘍塞栓との鑑別点, 手術適応を中心に検討し, 内科的治療に拮抗する症例では外科的治療を考慮する必要があることを強調した.
  • 寺嶋 毅, 仲村 秀俊, 目黒 周, 藤森 斉, 森 正明, 山口 佳寿博, 金沢 実, 加藤 良一, 小林 紘一
    1995 年 33 巻 6 号 p. 645-651
    発行日: 1995/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    骨髄異形成症候群の経過中に発症した肺胞蛋白症の1例を報告する. 症例は57歳, 男性. 1985年の健康診断にて汎血球減少を指摘され, 1991年7月に骨髄検査を施行され骨髄異形成症候群と診断された. 1993年9月より労作時呼吸困難を自覚し, 同年10月の胸部X線写真で両側びまん性陰影を指摘され入院となった. 胸部CTでは両側中下肺野に air bronchogram を伴った浸潤影を認めたが, 胸膜直下は病変は乏しく, いわゆる bat wing pattern を呈した. 気管支肺胞洗浄液は乳白色で沈澱物を伴っていた. 経気管支肺生検で肺胞腔内にPAS (periodic acid-schiff) 染色陽性の充満物質を認め, 肺胞蛋白症と診断した. 肺胞マクロファージの貪食能をFITC標識粒子を用いて検討したところ, 健常人に比べ貪食能が低下していた. 左肺, 右肺の全肺洗浄を施行したが, 呼吸不全が進行し, 1994年4月12日死亡した.
  • 西 耕一, 雨宮 徳直, 水口 雅之, 大家 他喜雄, 藤村 政樹, 松田 保
    1995 年 33 巻 6 号 p. 652-659
    発行日: 1995/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    胃食道逆流 (GER) は, 欧米において慢性持続性咳嗽 (CPC) の主因の一つとされているが, 本邦ではむしろ稀な病態である. 我々は, このGERが原因でCPCをきたした症例を経験したので報告する. 症例は, 25年以上乾性咳嗽が持続していた65歳の女性で, 気管支拡張薬, 抗アレルギー薬, ステロイド薬, および鎮静薬を投与されても咳嗽は改善しなかった. 約5年前から咳嗽の悪化と共に胸やけを伴うようになったことから, GERが咳嗽の原因である可能性が疑われた. 内視鏡的に逆流性食道炎の所見が認められ, 食道pHを24時間モニターすると, GERによりpHが4以下となった状態で咳嗽が発現することが判明し, その時間は全体の約7%を占めた. H2拮抗薬またはプロトンポンプインヒビターを投与すると, 咳嗽および胸やけはいずれも消失したことから, GERによるCPCと診断した. GERが原因でCPCを呈することは, 本邦では稀であるが, 忘れてはならない原因の1つである.
  • 山口 伸二, 川島 彰, 本田 孝行, 松沢 幸範, 久保 恵嗣, 関口 守衛
    1995 年 33 巻 6 号 p. 660-664
    発行日: 1995/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    慢性膵炎の経過中に大量の左側胸水を認めた48歳の男性について報告した. 胸水は血性であり, そのアミラーゼ値 (16,000 Somogyi) は, 血中 (659 Somogyi) に比し異常に高値を示しており, また, 好酸球性胸水 (好酸球分画27%) を呈していた. 画像診断的には横隔膜に達する多房性の仮性膵嚢胞を認めた. また, 下大静脈及び脾静脈内に血栓が認められ肝門部周囲の広範な炎症を示唆していた. 膵嚢胞及び膵体尾部合併切除術を施行されたが, 嚢胞から胸腔内へのあきらかな交通は確認できなかった. 症例は術後速やかに軽快し, 退院した. 肺癌など種々の疾患に高アミラーゼ胸水, 好酸球性胸水が合併するという報告は多い. また, 膵炎の経過中に胸水を合併することもよく知られているが, 慢性膵炎に好酸球性胸水を合併した症例はきわめて稀であり, 若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 叶 宗一郎, 小林 英夫, 桐生 拓司, 川口 真平, 上部 泰秀, 永田 直一, 相田 真介, 玉井 誠一
    1995 年 33 巻 6 号 p. 665-669
    発行日: 1995/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は62歳女性. 当科初診の1年半前, 検診にて左中下肺野に3cm大の淡い腫瘤影を指摘された. 近医で経過観察中, 陰影増大を認めたため当科紹介. 経気管支生検で, B細胞優位の小型リンパ球浸潤がびまん性に認められ, 腫瘍性増殖が疑われた. また Sjögren 症候群の存在も明らかとなった. 4ヵ月後, 手術目的にて再入院. 胸部X線上, 初回入院時と比較し軽度の陰影縮小を認めた. 切除標本での検討から, びまん性小細胞型悪性リンパ腫 (IgGκ型) と診断. 遺伝子解析でもH鎖遺伝子の再構成を認め, B細胞性リンパ腫であることを確認した. 切除標本では明らかな収束性変化, 壊死などは認められず, 陰影変化は一時的な自然退縮の可能性が考えられた. 低悪性度群に属する本症の natural behavior の面から興味深い症例と思われ報告した.
  • 小池 輝明, 滝沢 恒世, 赤松 秀樹, 栗田 雄三, 横山 晶, 本間 智子
    1995 年 33 巻 6 号 p. 670-673
    発行日: 1995/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    外科的に切除した膿胸合併肺癌の1例につき文献的考察を加え報告する. 症例は53歳の男性で, 肺癌に対する気管支鏡検査の2日後より発熱し膿胸を併発した. 胸腔ドレナージその他の保存的治療にても症状が軽減せず, 肺癌の存在する右下葉および膿胸腔を切除した. 術後は順調に経過し術後約3週で退院したが胸腔内再発にて術後5ヵ月癌死した. 膿胸合併悪性肺腫瘍に対する外科手術は文献上は国外で7例, 本邦で3例報告されている. 危惧された術後合併症の発生は意外に少なく, また, 長期生存例の報告もあることより膿胸合併肺癌に対する外科的切除の意義はあると考えられた.
  • 高野 義久, 種田 和清, 郡 義明, 田口 善夫, 富井 啓介, 松村 栄久, 三野 眞里, 郷間 厳, 井上 哲郎, 小橋 陽一郎
    1995 年 33 巻 6 号 p. 674-677
    発行日: 1995/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    脈絡膜転移を伴った肺癌の1例を経験した. 症例は72歳, 女性. 入院の2ヵ月前から以前にはなかった飛蚊症を両眼に自覚していた. 近医で胸部X線上左S3に腫瘤影を指摘され, 当院へ紹介された. 経皮吸引細胞診にて肺癌 (低分化型扁平上皮癌) と診断した. 全身検索では転移性脈絡膜腫瘍と転移性腎腫瘍を多発性に認めた. 全身化学療法を施行し, 原発巣が縮小するにつれ, 脈絡膜腫瘍も縮小し, 飛蚊症は自覚しなくなった. 転移性脈絡膜腫瘍は臨床的に稀であるが, その原発部位として肺癌は乳癌とともに頻度が高く, 転移の一形式として注目すべきである. 肺癌の診療にあたる際は飛蚊症をはじめとして患者の眼症状にも気をつける必要があると考えられた.
  • 田中 博幸, 小林 英夫, 叶 宗一郎, 川口 真平, 上部 泰秀, 永田 直一
    1995 年 33 巻 6 号 p. 678-681
    発行日: 1995/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は59歳男性. 呼吸困難, 発熱及び全身の紅斑にて入院. 胸部X線写真にて両側中下肺野にびまん性の網状, 線状影と, 胸部CTにて下葉を中心としたびまん性の肺野濃度上昇を認めた. ARDSを思わせる急速な経過をとり, 入院40時間後, 発症10日後に呼吸不全により死亡した. 剖検にて肺は著明に硬化し, びまん性肺胞障害を呈していた. 心筋内には, フクロウの眼様ないし毛虫様の細胞 (Aschoff 細胞) が集籏した Aschoff 結節を認めた. このリウマチ熱に特異的とされる Aschoff 結節の存在よりリウマチ熱と診断した. 近年リウマチ熱の激減により呼吸器内科領域ではほとんど報告がなく, 貴重な症例と考え報告した.
  • 冬野 玄太郎, 小林 龍一郎, 伊賀 六一, 堀尾 裕俊, 野守 裕明, 古寺 研一, 森永 正二郎
    1995 年 33 巻 6 号 p. 682-685
    発行日: 1995/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例はフォン・レックリングハウゼン病の17歳男性. 主訴は労作時呼吸困難. 1994年4月下旬より労作時呼吸困難が出現. 徐々に増悪するため当院受診. 胸部単純X線にて左側大量胸水を認め入院となった. 胸腔穿刺を行い血胸であり, 持続排液の前に出血源の検索のために血管造影を行った. 下横隔膜動脈より腫瘍濃染像を認め, 血胸の原因は横隔膜面の腫瘍からの出血を疑った. 胸腔ドレーンで排液後, 左中下肺野に胸膜外徴候を呈する巨大腫瘤を認めた. 出血源の検索と処置の目的で開胸術を行った. 腫瘤は易出血性で毛細血管に富み悪性神経鞘腫と診断された. 動脈性破綻性出血の所見はなく, 血胸の原因は腫瘍の栄養血管からの出血と診断した. 腫瘍摘出は不可能であったため試験開胸とした. これまでフォン・レックリングハウゼン病に血胸を伴った症例は, 我々が調べた限りでは5例報告されている. 血胸の原因は神経鞘腫の栄養血管からの出血や腫瘍を貫通する肋間動静脈, 腫瘍に接する鎖骨下動脈の断裂と報告されている.
  • 渋佐 隆, 田中 裕士, 伊藤 英司, 千葉 弘文, 横川 和夫, 平澤 路生, 森 雅樹, 浅川 三男, 阿部 庄作, 佐藤 昌明
    1995 年 33 巻 6 号 p. 686-690
    発行日: 1995/06/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺結核に対する人工気胸術後39年後に発症した胸壁原発悪性リンパ腫症例を経験したので, その画像診断について報告する. 症例は, 79歳男性で右側胸部腫瘤の疼痛で来院した. 腫瘤は胸壁, 軟部組織, 肋骨等を破壊し, 皮膚に自潰瘻孔を形成していた. 診断は胸腔内容物掻爬時の組織所見から得られた. CTでは鑑別できなかった膿胸と腫瘍がMRIでは異なる信号であり, 鑑別に有用と思われた.
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