日本胸部疾患学会雑誌
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31 巻, 10 号
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  • 南 智之, 井上 宏司, 小川 純一, 正津 晃
    1993 年 31 巻 10 号 p. 1207-1214
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    雑種成犬21頭を用いて, 開胸側肺虚脱下でのカルシウム拮抗剤投与 (nifedipine 2.5mg, 5mg舌下投与, nicardipine 30μg/Kg, 60μg/Kg静脈内投与) が肺血流に与える影響の解明を目的として実験を行なった. 静脈麻酔下に可動性ブロッカー付き気管内チューブを挿管, 開胸側肺を虚脱させてカルシウム拮抗剤を投与した. 左主肺動脈/上行大動脈血流比を虚脱肺の低酸素性肺血管収縮 (HPV) の指標として用いて, 以下の結論を得た. (1) 開胸側肺虚脱下のカルシウム拮抗剤投与により, シャント率は上昇し, 虚脱肺のHPVは抑制されるが, 動脈血酸素分圧 (PaO2) の低下は安全域に止まる. (2) PaO2が安全域に止まるのは, カルシウム拮抗剤投与により心拍出量が増加し混合静脈血酸素分圧が上昇することと, HPVがカルシウム拮抗剤を投与してもなお残存することが原因と考えられる.
  • 川上 誠, 宇佐美 郁治, 黒木 秀明, 五藤 雅博
    1993 年 31 巻 10 号 p. 1215-1219
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    臨床症状の安定したじん肺患者245名 (男性213名, 女性32名, 平均年齢67.0±8.3歳) に甲状腺ホルモン (T3, T4, TSH, free T3, free T4) を測定し, 肺機能 (% VC, FEV1.0, FEV1.0%, V25/HT), 血液ガス (PaO2, PaCO2, A-aDO2), 胸部X線所見との関係を検討した. その結果, (1) 生物学的活性の最も強い free T3 と% VC (r=0.15, p<0.05), FEV1.0 (r=0.17, p<0.05) の間に相関がみられた. (2) free T3とFEV1.0%, V25/HTとの間には相関はなかった. (3) free T3とPaO2, PaCO2, A-aDO2との間に相関はなかった. (4) free T3と胸部X線所見の間に明らかな関係はなかった. (5) 他の甲状腺ホルモンと肺機能, 血液ガス, 胸部X線所見との検討で, T3は free T3と同様な傾向をみたが, T4, free T4には明らかな関係はなかった. % VC, FEV1.0はじん肺症の重症度を反映しているため, free T3とじん肺症の臨床的重症度との関係が示唆された.
  • 植田 信策, 谷田 達男, 星川 康, 西村 俊彦, 渋谷 丈太郎, 岩渕 悟, 芦野 有悟, 小野 貞文, 小池 加保児, 藤村 重文
    1993 年 31 巻 10 号 p. 1220-1226
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺切除術後の右心不全等の心合併症の発生と術前一側肺動脈閉塞試験時の右室駆出率の変化との関連について検討した. 基礎心疾患のない肺切除予定の患者 (n=34) に一側肺動脈閉塞試験を施行し, 閉塞前と閉塞中の右室駆出率, 右室拡張末期容量, 及び収縮末期容量, 全肺血管抵抗を測定した. このデーターと術後心合併症の有無との関連について検討した. 閉塞試験による全肺血管抵抗の変化率に拘わらず右室拡張末期容量の変化率が120%以上になる例が6例あり, これらは術後にジギタリス, カテコールアミンあるいは抗不整脈剤の投与を必要とする血圧低下, 又は, 不整脈を合併した. このことより一側肺動脈閉塞試験時の右室拡張末期容量の変化率と肺切除術後の心合併症との関連性が示唆された.
  • 塚田 弘樹, 鈴木 栄一, 和田 光一, 荒川 正昭
    1993 年 31 巻 10 号 p. 1227-1234
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    慢性下気道感染症患者では, 血清IgA高値例が多い. 血清IgAの上昇が, 気道付着菌に特異的なものかを明らかにする目的で, 慢性下気道感染症患者の血清中緑膿菌特異的IgAを, 酵素免疫抗体法 (ELISA) を用いて測定し, その臨床像との関連を調べた. Pseudomonas aeruginosa BB5746株の超音波破砕抗原に対し, 下気道感染例のうち, 喀痰中緑膿菌持続陽性患者の血清, それ以外の菌による繰り返し感染患者の血清, さらに, IgA腎症患者血清, 及び健康成人血清のそれぞれを反応させ, 比較した. 緑膿菌持続陽性患者血清は, 他の3群に比して, 有意な吸光度の上昇を認め, 循環血中でも菌特異的IgAが存在することが確認された. 特異的IgAレベルは, 菌交代からの期間が長く, 胸部X線写真上, 病変が広範囲で, 気管支, 肺胞構造の破壊が強い症例で高かった. 菌特異的IgAの証明は, 緑膿菌定着が恒常的になった時期の推定に役立つことなどが示唆された.
  • 山岸 雅彦, 田中 裕士, 横川 和夫, 菅谷 文子, 本間 伸一, 本間 昭彦, 四十坊 典晴, 阿部 庄作
    1993 年 31 巻 10 号 p. 1235-1244
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    高容量スペイサー内にプロピオン酸ベクロメタゾン (BDP) を複数回噴霧した後に吸入する場合のBDPの肺内沈着率について基礎的検討をおこなうとともに, スペイサー (Volumatic) 内に4噴霧後吸入する方法の臨床的効果を検討した. Twin Impinger 法による in vitro の基礎的検討では, InspirEase, AeroChamber のいずれもがスペイサー内噴霧回数が増すにつれて肺内沈着率は低下したが, Volumatic では4噴霧までは低下しなかった. 臨床的検討では, 吸入ステロイド大量療法 (BDP800μg/日以上) 下の18名の慢性喘息患者に Volumatic を用いて12週間1噴霧-1吸入法で, つづいて同量のBDPを16週間4噴霧-1吸入法で吸入させたところ, 4噴霧-1吸入法期間では1噴霧-1吸入法期間と比較して, コンプライアンスの改善 (92.8%から99.2%; p<0.001), 発作点数の低下 (p<0.01), 吸入β-刺激薬使用数の低下 (p<0.05), %PEFRの改善 (p<0.05) がみられた.
  • 塩谷 寿美恵, 福崎 稔, 沓沢 智子, 岡本 正史, 太田 保世, 山林 一
    1993 年 31 巻 10 号 p. 1245-1250
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    我々は, プロトン磁気共鳴スペクトル法 (1H Magnetic Resonance Spectroscopy: 1H-MRS) を用いて, 静脈血から分離した106-107個のリンパ球のスペクトルを測定する方法を開発した. 本研究では, その病態にリンパ球の関与が考えられる疾患として, サルコイドーシス (サ症), 間質性肺炎者を対象に選び, この方法でリンパ球の変化が捉えられるか否かを検討した. スペクトルピークの定量化は自家製の Gaussian curve fitting ソフトにて行った. サ症, 種々の原因による活動性の間質性肺炎を有する症例では1H-MRスペクトルの (CH2)n, CH3ピークが正常コントロール群に比し有意に増高していた. また, サ症が改善した例, 非活動性の間質性肺炎例では正常パターンを示した. これら疾患でみられた1H-MRスペクトルの変化は, 細胞が活性化したときに見られる所見と一致しており, この方法は, 各種疾患におけるリンパ球の活性化を評価しうる検査法であることが示された.
  • 大野 彰二, 杉山 幸比古, 北村 諭
    1993 年 31 巻 10 号 p. 1251-1256
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    慢性呼吸不全状態にあるびまん性汎細気管支炎 (DPB) 症例に対するエリスロマイシン (EM) 長期投与の効果について検討した. 17例の在宅酸素療法 (HOT) を施行されているDPBおよび副鼻腔気管支症候群の患者に対して12ヵ月以上のEM投与を行い, 5例がHOTより離脱でき, ほかの5例に血液ガス所見の改善が認められた. これらの効果はEM投与1ヵ月後から現われ6ヵ月後まで続いた. 肺機能検査上からは, 一秒量の改善が顕著であった. EMの効果に影響を及ぼす因子としては, 症状出現よりHOTに導入される期間とHOTに導入されてからEMが投与される期間があげられた. また, 拘束性換気障害が少なく閉塞性換気障害が主体の症例にEMに対する反応が良好であった. 以上の成績から慢性呼吸不全状態にあるDPBに対してもEMが有効であることが示された.
  • 中村 博幸, 柏原 光介, 深井 祐治, 千場 博
    1993 年 31 巻 10 号 p. 1257-1261
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺クリプトコッカス症は宿主免疫抑制状態に併発する疾患と考えられてきた. しかし肺クリプトコッカス症は基礎疾患を有さない健康人にも発生することがある. 最近我々は3例の原発性肺クリプトコッカス症を経験したので報告する. 症例1・産褥期6週の30歳女性. 主訴は咳嗽, 微熱, 胸部X線写真上, 右S2及び左S6に浸潤影が認められた. 経気管支擦過診及び組織生検にて肺クリプトコッカス症と診断された, 症例2・51歳男性. 検診にて胸部異常陰影を指摘され来院. 胸部X線写真上, 左S9に小結節影が認められた. 経皮的肺穿刺診にて肺クリプトコッカス症と診断された.
    症例3・58歳男性. 検診にて胸部異常陰影を指摘され来院. 胸部X線写真上, 右S8に結節影が認められた. 経気管支擦過診及び組織生検にて肺クリプトコッカス症と診断された. 3症例とも免疫機能の低下は認められなかった. 若干の文献的考察を加え報告する.
  • 玉置 淳, 多賀谷 悦子, 千代谷 厚, 兼村 俊範, 山内 富美子, 金野 公郎, Noritaka Sakai
    1993 年 31 巻 10 号 p. 1262-1268
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    種々の気管支拡張薬の作用機序を検討する目的で, イヌ気管支平滑筋の弛緩反応に対するカリブドトキシン (ChTx) とウアバインの効果をみた. ChTxおよびウアバインは, サルブタモール, フォルスコリン, DBcAMP, ニトロプルシドによる弛緩反応を抑制したが, ベラバミル, BRL38227に対する反応には影響を与えなかった. 以上の効果は拡張薬の濃度条件によって異なり, 低濃度では Ca-activated K-channel が, 高濃度では Na-K-ATPase の関与が顕著であった. したがって, 細胞内サイクリックヌクレオチドの産生がこれらのコンポーネントを活性化させ, 平滑筋の再分極あるいは過分極を介し気道を拡張させるものと考えられた.
  • 田村 厚久, 松原 修
    1993 年 31 巻 10 号 p. 1269-1278
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺動脈腫瘍塞栓症における臨床像と病理所見の関係を解明するため, 肺癌を除く癌剖検318例を検討した. 67例 (21%) には1個以上の肺動脈に腫瘍塞栓を認め, 12例 (3.8%) では腫瘍塞栓は多発性で死亡に寄与するものだった. この12例 (肝癌6例, その他6例) を肺動脈腫瘍塞栓症症例とし, 詳細に解析した. 肝癌では亜広範肺血栓塞栓症様の, 他の癌では急性の微小肺血栓塞栓症様の臨床像を示していた. 剖検肺では肝癌の全例に肉眼的, 顕微鏡的腫瘍塞栓と3例に肺梗塞を認め, 他の癌の全例に毛細血管に及ぶ顕微鏡的腫瘍塞栓と4例にびまん性肺胞傷害を認めた. 肝癌1例と他の癌2例には tumor thrombotic microangiopathy の所見も認めた. 肝癌では大静脈への, 他の癌ではリンパ路への浸潤が発症経路と考えられた. 肺動脈腫瘍塞栓症は均一な疾患ではなく, 腫瘍の種類や広がりと関係して急性, 亜急性肺性心やびまん性肺胞傷害など様々な形の肺血管床の傷害像を示す事を臨床医は熟知する必要がある.
  • 上田 祐二, 安岡 劭, 小倉 剛
    1993 年 31 巻 10 号 p. 1279-1284
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    トロンビンを含むセリンプロテアーゼ群の肺線維芽細胞増殖促進活性 (Fibroblast growth stimulating activity) を比較し, その作用機序を in vitro の系で検討した. 各酵素に特異的な合成基質分解活性で酵素量を判定し, FGAの測定系に7×100~7×105unit/mlの酵素を添加した. ヒトトロンビン, ウシトリプシンおよびウシα-キモトリプシンはFGAを示したが, α-キモトリプシンのFGAは前2者のそれに比l低値であった. ブタ膵エラスターゼとヒト好中球エラスターゼはFGAを示さず, 逆に細胞障害活性を示した. トロンビンの触媒基と結合する低分子阻害物質 argatroban (MW. 526) は, トロンビンの酵素活性および来FGAを共に阻害した. これらの成績は, セリンプロテアーゼの中には少なくともFGAを示す群と示さない群があり, そのFGAは触媒基を介する酵素作用による, ことを示唆している. 個々の肺線維症で, プロテアーゼがどの程度その線維化に関与しているかを追求する必要がある.
  • 嶋内 明美, 原 通廣, 堀場 通明, 進藤 丈, 加藤 聡之, 横井 豊治
    1993 年 31 巻 10 号 p. 1285-1290
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は15歳女性, 入社検診で胸部X線写真の異常を指摘され当科を受診した. 両側肺の多発結節影に対し気管支鏡下肺生検を施行したが確定診断を得られず, 開胸肺生検にて Epithelioid Hemangioendothelioma (EHE) と診断された. EHEは1975年に Dail らが報告して以来, 徐々に解明されつつある疾患であるがその報告例は少ない. 血管内皮細胞由来の腫瘍であることから, 血管内皮細胞特有の第8因子関連抗原や Weibel-Pallade 小体の証明が診断の際有用で, 本症例ではいずれも確認された. なお, 患者は特に症状もないため郷里にて経過観察中である.
  • 妹川 史朗, 佐藤 篤彦, 谷口 正実, 白井 敏博, 豊嶋 幹生, 中澤 浩二, 閨谷 洋, 新井 冨生, 早川 啓史, 千田 金吾
    1993 年 31 巻 10 号 p. 1291-1296
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は65歳, 女性. 検診で胸部異常陰影を指摘され当科を受診した. 胸部X線写真上右S2に胸膜陥入を伴う長径約3cmの結節影, 左S4に径5mmの結節影を認めた. 右S2の結節影のTBBで非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を認めたが, 悪性所見は認めず, 特殊染色や同部位の組織, 洗浄液の培養で抗酸菌, 真菌は検出されなかった. ツ反は陰性で右B4bのBALFではリンパ球分画46%と増加し, CD4/CD8比は7.2と上昇していた. また, 後の詳細な問診の結果15年前にサルコイドーシスの診断にてステロイド剤の投与を受けており, 当時の斜角筋リンパ節生検で非乾酪性類上皮細胞肉芽腫が確認されいることが判明した. 以上から結節影を呈したサルコイドーシスと診断した. 2年間の経過観察で同陰影は変化していない. 胸部X線写真上胸膜陥入像を伴う結節影を呈したサルコイドーシスは極めて稀であり, 画像上肺癌との鑑別が問題となった.
  • 坂東 琢麿, 野田 八嗣, 広瀬 仁一郎, 太田 五六, 柴田 和彦, 藤村 政樹, 松田 保
    1993 年 31 巻 10 号 p. 1297-1302
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は50歳の男性で, 主訴は咳嗽と呼吸困難であった. 塗装業に従事し始めた約1ヵ月後から呼吸困難が出現し, 胸部X線像にてびまん性陰影が認められたが, 入院にて急速に改善したため再び塗装業に復帰したところ, 徐々に喘鳴を伴う呼吸困難が増悪した. 画像診断からびまん性間質性肺炎が疑われた. 気管支肺胞洗浄および肺生検にてアレルギー性滲出性間質性肺炎と考えステロイド剤を投与したところ, 画像所見, 呼吸機能ともに急速に改善した. 職場で使用していた Toluene Diisocyanate (TDI) についての暴露試験は陽性で, 本例はTDIによる過敏性肺臓炎と診断された. 本例においてはその病初期に気道過敏性が亢進し, 気道可逆性が認められたことから, 気管支攣縮すなわち気管支喘息様病態が併発したと考えた. イソシアネートによる過敏性肺臓炎の呼吸困難の増悪には気管支攣縮が関与しているかも知れない.
  • 藤森 勝也, 鈴木 栄一, 荒川 正昭
    1993 年 31 巻 10 号 p. 1303-1307
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例: 69歳, 女性. 約6週間, 夜間に強い乾性咳嗽を認め, 抗生剤, 鎮咳去痰薬で軽快しなかった. 鼻・副鼻腔疾患, 喫煙歴, 吸入歴, アレルギー歴はなく, 末梢血好酸球数, IgE, CRP, 寒冷凝集素価, マイコプラズマ抗体価に異常なく, 胸部単純X線所見, 呼吸機能検査でも異常なかった. 胸やけを認めたことより, gastroesophageal reflux (GER) による慢性持続咳嗽 (CPC) を疑った. 胃透析で, 食道へのバリウムの逆流を, また上部消化管内視鏡検査で, 逆流性食道炎を認めた. 気管支鏡下気管支生検では, 一部に扁平上皮化生や基底膜の肥厚, 上皮下のリンパ球の集族巣を認め, 気管支の慢性炎症像であった. H2受容体拮抗薬とシサプリドのみを内服し, 6週間でほぼ咳嗽は消失した. 以上より, Irwin らの診断基準に従って, GERによるCPCと診断した. 本例の咳嗽発生機序の一つとして, GERにより食道を逆流してきた胃酸が, 一部 microaspiration され, 気管支粘膜に炎症をおこしている可能性が考えられた.
  • 渡部 直巳, 三浦 淳彦, 山口 悦郎, 鈴木 潤一, 川上 義和
    1993 年 31 巻 10 号 p. 1308-1312
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は61歳男性. 胃癌の再発, その肺, 脳転移に対し, 天然型IFN-αの連日単独治療を行った. 55回投与時より38℃台の発熱, 労作性呼吸困難が出現, 胸部聴診にて両側全肺野に fine crackle を認めた. 胸部CTではびまん性に微細小粒状陰影が出現し, 経気管支肺生検 (TBLB) の結果, 軽度の胞隔の肥厚並びに炭粉沈着を伴った1.5mm大の肉芽腫様変化を認め, 薬剤中止とステロイド治療にて軽快した. 本症例はIFN-αの単独治療例でありかつ進行性の肺拡散能の低下から, IFN-αによる薬剤性肺炎と診断した. IFN治療に際しては, 重篤な肺障害の出現に十分な注意が必要であると考えた.
  • 村田 嘉彦, 草島 健二, 大石 不二雄, 高野 智子, 平山 典保, 佐藤 信英, 木村 文平, 下出 久雄, 河端 美則
    1993 年 31 巻 10 号 p. 1313-1316
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺に孤立結節影を呈した Mycobacterium avium complex (MAC) の2例を経験した. 症例1は75歳女性で, 右中葉S4に3cmの結節影を認めた. 気管支洗浄液の培養でMACを認め, 抗結核薬により改善した. 症例2は75歳男性で, 右下葉S9に4cmの結節影を認めた. 生検後の培養でMACを認めたが内服治療で改善せず, 下葉切除を行った. MAC症の肺病変の中で孤立性結節影を呈する例は稀であり, さらにMAC症の通常の空洞性病変と異なり孤立性結節病変の分布は文献的にも全肺野に均一である傾向があった.
  • 平田 守利, 森田 正純, 前防 昭男, 原 秀樹, 吉本 崇彦, 平尾 文男
    1993 年 31 巻 10 号 p. 1317-1321
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は61歳, 女性, 事務職で, 喫煙歴, 常用薬剤はなかった. 平成3年2月頃より乾性咳嗽, 3月中頃より血痰, 右側胸部痛を自覚し, 3月18日当科入院となった. 入院時胸部X線上, 正面では右上肺野に巣状浸潤影が, 側面ではS3に3cm×4cmの腫瘤様陰影として認められた. 第5病日, 気管支鏡検査を施行. 気管支の狭窄, 閉塞所見は見られず, TBLBにて油性成分を貪食したマクロファージ (lipidaden macrophage) が多数認められ, BALのスダンIV染色にて陽性細胞が見られた. 詳細な問診により外因として家庭用殺虫剤の関与が明らかにされ, 外因性リポイド肺炎と確定診断された. 抗生剤の投与のみで諸症状は速やかに改善し, 胸部X線上陰影もほぼ消失した. 現在外来フォロー中であるが, 再発は見られていない. 殺虫剤による外因性リポイド肺炎の報告は本邦ではみられず,興味ある症例として報告する.
  • 中積 泰人, 野村 将春, 安井 正英, 藤村 政樹, 松田 保, 北川 正信
    1993 年 31 巻 10 号 p. 1322-1326
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    非ステロイド性消炎鎮痛剤の一つであるトルフェナム酸による薬物性肺臓炎の1例を経験したので報告した. 症例は23歳女性で主訴は咳嗽, 発熱. 近医で腰痛のためトルフェナム酸などを内服. 9日目後より四肢に紅斑, 発熱, 咳嗽, 呼吸困難が出現したが内服薬の中止後改善傾向にあった. その後再度内服し症状が増悪したため当科入院となった. 胸部X線上両側中下肺野を中心に斑状影, 小粒状影を認めた. 気管支肺胞洗浄液では総細胞, リンパ球, 好酸球の増加とCD4/CD8比の上昇がみられ, 経気管支肺生検では肺胞壁と間質に小円形細胞と好酸球の浸潤を認めた. 入院後症状は改善し, 肺陰影も消失した. トルフェナム酸による challenge test, 薬剤リンパ球刺激試験が陽性であった. 以上よりトルフェナム酸による好酸球性肺炎と診断した. 本例は本邦第1例目である.
  • 前崎 繁文, 河野 茂, 田中 研一, 松田 治子, 光武 耕太郎, 宮崎 幸重, 朝野 和典, 賀来 満夫, 古賀 宏延, 原 耕平
    1993 年 31 巻 10 号 p. 1327-1331
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は57歳, 男性. 昭和60年に肺結核の診断にて左上葉切除術を受けた. 昭和63年, 喀痰より Aspergillus 属が検出され, 胸部X線にて左上葉の遺残空洞内に菌球を認め, 肺アスペルギローマと診断された. 平成4年6月よりアムホテリシン来B (AMPH) の経皮的空洞内注入を開始. AMPHの投与総量が1,000mgとなった時点でも菌球の縮小を認めないため, 9月よりウリナスタチン10万単位の全身投与を21日間併用した. 炎症所見は改善し, 菌球も完全に消失し, ウリナスタチンの併用が肺アスペルギローマの治療に有効と考えられた.
  • 浜岡 朋子, 佐久間 啓也, 河野 典博
    1993 年 31 巻 10 号 p. 1332-1336
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は, 激しい呼吸不全と発熱で入院した64歳の男性である. 胸部レントゲン上両側びまん性の網状影を認め, 動脈血ガス分析にて著しい低酸素血症を認め, 両肺に Velcro-rale を聴取したことから特発性間質性肺炎が疑われ, 同時に比較的徐脈や, 白血球が増加しなかったことからクラミジア感染症も疑われた. ステロイドパルス療法およびMINOの投与が著効を示した. 入院時のオウム病クラミジアCF抗体価が32倍だったためクラミジア肺炎と診断され, 鳥類との接触がなかったためさらに microplate immunofluorescence antibody technique (MFA法) による血清学的検査を行い, Chlamydia pneumoniae 感染を示唆する結果となった. Chlamydia paneumoniae の感染で重篤な呼吸器症状を示した希な症例と考え, 報告した.
  • 金子 保, 池原 邦彦, 斉藤 千代子, 綿貫 祐司, 大久保 隆男
    1993 年 31 巻 10 号 p. 1337-1340
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は27歳, 女性. 前胸部痛と左頸部腫瘤を主訴に来院した. 胸部X線写真で両側上縦隔影の拡大を, 胸部CT写真では縦隔内に多発性の腫瘤影を認め, 縦隔脂肪組織は不明瞭となっていた. 左頸部のリンパ節生検により乾酪壊死を伴う肉芽腫を確認して, 頸部・縦隔リンパ節結核症と診断した. 抗結核療法により, 頸部および縦隔腫瘤ともに順調に縮小した. 縦隔リンパ節結核は成人では比較的稀な疾患であり, 肺野病変がない場合には他の縦隔腫瘍との鑑別が問題となる. CT所見の特徴を含め文献的考察を加えて報告した.
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