慢性腎疾患に罹患した児童,生徒を対象に長期に医療を受けることや入院生活を体験することにより,その後の生活に,不適応や問題傾向がみられるかどうかについて調査し,次のような結果を得た。
1.学校の担任教師や家族への面接調査から,問題傾向として指摘された内容の項目について特に多いものは,自己中心的,神経質,根気なしが8人中5人にみられた。次いで自制力なし,消極的であった。
2.個人適応においては,不安傾向が8人中7人に,社会適応においての問題傾向は,社会規範の自覚不足,社会的成熟の遅れ,攻撃,衝動傾向ありが8人中5人にみられた。しかし,面接調査結果は,子どもの生活自体の一般要素を多く含むため,問題指摘が多くてもそれだけで断定することはできない。
3.DTSG検査結果で,特性項目で適応状態に明らかに問題のあるものは,1人だけで,個人,社会適応ともに著しく劣っていた。
4.DTSG検査の特殊診断項目について,各項目ごとに一般児と対象児を比較した結果,①情緒の安定,②公正さ,③根気強さ,④自主性において,数が少ないため有意差があると断定はできないが両者の間にかなりの差がみられた。これらの問題傾向は,非社会性傾向にあるといえる。
5.人間関係をクラスのソシオメトリーによりみると,問題としてあげられるものに,排斥のみ多く受けているものが2人あり,この2人は孤立状態にあることが考えられた。
6.人間関係を面接によりみると,3人に問題傾向の指摘があり,ソシオメトリーにより出された2人と,退院後一時的に学校において協調性を欠いた子ども1人であった。
7.DTSG検査による人間関係は,クラス平均の範囲に満たないものが3人あり,これは,面接調査で指摘された3人と一致していた。
8.学習の遅れと学習態度については,退院後何らかの学習の遅れがみられたものは,8人中6人で,入院期間が短かく,成績の優れた2人には遅れがみられず,また学習意欲も高いという結果であった。
学習態度も,情緒面,人間関係面に問題傾向のある3人に学習の遅れもみられ,学習に対する自主性の欠如,意欲の低下といった関連が予想される結果であった。
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