日本看護研究学会雑誌
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10 巻, 4 号
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  • 橋本 裕惠, 中村 宣生
    1988 年 10 巻 4 号 p. 4_23-4_33
    発行日: 1988/09/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     女性が受胎に気付かぬ時期に一度でも多量に飲酒を行なうと胎児にどの様な影響が現れるかについて調べる目的で,次の様な実験を行なった。
     C57BL/6マウスの妊娠第4日目(以下E1群),6日目(E2群),8日目(E3群),および10日目(E4群)に25%エタノール(0.03ml/g.体重)の単回腹腟内投与を行ない,出産前日の第19日目に開腹し,胎仔への影響を調べた。なお,対照には妊娠第8日目に生理的食塩水投与(S群),ならびに無投与(C群)のものを設けた。その結果,E1群では高い胎仔吸収率および正常胎仔の発育障害を認めたが,外表奇形発生率は低かった(5%)。E2群では実験群の中では低い吸収率を示したが,奇形発生率はやや高く(13%),様々な奇形が認められ,発育障害はみられなかった。E3群,E4群では強い胎仔への障害がみられ,吸収・死胎率,奇形発生率ともに高く発育障害も観察された。E3群では奇形発生率は18%で奇形は頭部に集中しており,E4群では21%で奇形は四肢に集中する傾向を認めた。なお,対照群の外表奇形発生率はS群では2%,C群では3%であった。
     以上,エタノールのマウスでの胎仔毒性,催奇形性が再確認されたが,本実験によりこれまで報告の少ない器官形成期前(4日目,6日目)のエタノール投与でも,胎仔への影響が現れることが観察された。これらのマウス妊娠第4-10日目をヒトの妊娠週数にあてはめてみるとほぼ妊娠2週末-6週目にあたり,本結果を直ちにヒトにあてはめてみることは出来ないにしてもこれらの時期には妊娠を自覚しにくいので,看護上妊娠の可能性のある女性が大量に飲酒をすることはひかえる様に生活指導を行なうことが必要であろう。
  • 三好 淳美, 大串 靖子
    1988 年 10 巻 4 号 p. 4_34-4_44
    発行日: 1988/09/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     褥瘡予防上の示唆をえるために,青年男女106名を対象に,体格,肢位,寝具の条件を変えて体圧を測定,その体圧構成の要因を検討した。
     1) 後頭部,肩甲部の体圧はいずれの条件でも約20mmHg以下であった。
     2) 仙骨部,踵部の体圧はいずれの条件でも30mmHg以上であり,下肢屈曲時は1.8~2.1倍の高さになった。
     3) るいそう群の仙骨部体圧は寝具,肢位にかかわりなく,つねに高いが,肥満群はるいそう群より低く,しかもマトレスのほうがフトンより体圧は低かった。これは肢位の種類を問わず,また枕で下肢を支持したときもマトレスのほうが効果的であった。
     4) 踵部の体圧は下肢を屈曲したときは仙骨部にほぼ同じ程度に高く,下肢伸展位と下肢に枕を支持したときは30mmHg未満の体圧であった。
     5) るいそう群の踵部体圧は寝具条件にかかわりなくつねに高く,肥満群はるいそう群より高く,踵部ではフトンのほうがマトレスより高い体圧であった。
     るいそう傾向の場合は寝具の支持力にかかわりなく骨突出の程度や皮下組織の薄さ自体が高い体圧へ関連し,肢位の変化は他の体格群より大きく体圧へ影響を与える要素といえる。一方,肥満傾向の場合は重力の大きさが寝具,腰臀部の弯曲,下肢重力の方向の変化等へ影響する要因と考えられた。
  • 前田 ひとみ, 成田 栄子
    1988 年 10 巻 4 号 p. 4_45-4_52
    発行日: 1988/09/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     喫煙習慣のある妊婦の日常生活行動の特性と胎児への影響を知る目的で,熊本県U町の妊婦340名を対象に調査した。その結果,喫煙習慣のある妊婦やその胎児には,以下の様な特徴が見られた。
     1. 核家族で夫の喫煙率も高く,妊婦にイライラしやすい性格傾向の人が多い。
     2. 人工妊娠中絶の経験者が多く,日頃の食生活が貧弱で,飲酒率も高い。
     3. 出生児に男児が少く,低体重児,奇形の割合が高い傾向にある。
     これらの特徴以外に,未成年者の喫煙経験率の高さや妊婦には受動的喫煙の影響についての知識はあっても,家族の協力が得られていない実態も分かり,身体的問題のみならず,社会的側面の問題も伺われ,禁煙指導の必要性と難しさを示す結果が得られた。
  • 木村 紀美, 斉藤 陽子, 米内山 千賀子, 花田 久美子, 福島 松郎
    1988 年 10 巻 4 号 p. 4_53-4_59
    発行日: 1988/09/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     開復手術を受ける患者の家族77名に対して手術当日,術後1週目および退院時にSTAIを行い,家族の背景とSTAIの推移との関係を検討し,合せてCMIとの関連性も検討し以下の成績を得た。
     (1) 状態不安(STAI-I)は,家族全体では手術当日より術後1週目,退院時に有意に減少していた。
     (2) CMIにおけるSTAI-Iは,正常群,神経症的傾向群ともに有意差はなく,両者とも手術当日が有意に高かった。
     (3) 悪性疾患患者の家族のSTAI-Iは,良性疾患患者の家族より術後1週目,退院時に有意に高く,さらに手術当日から退院までの減少も少なかった。
     (4) 50歳以上のSTAI-Iは,手術当日から退院まで有意な減少はなかった。 (5) 特性不安(STAI-II)は,手術当日,術後1週目および退院時とほとんど変わらなかった。
  • 湯山 英子, 草刈 淳子, 青木 和夫
    1988 年 10 巻 4 号 p. 4_60-4_70
    発行日: 1988/09/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     夜間看護管理者には,看護婦が患者の安全・安楽を守り,適切に看護業務を遂行しているかを把握し,指導することが特に要請される。今回,一病院内の内科・外科各々2看護単位(1単位約60床)の夜勤をする病棟看護婦61名を対象に,夜間における看護業務上の問題点として「困ったこと」と業務遂行上の自信の程度の実態を明らかにし,夜間看護業務における業務管理システムと教育訓練システムの問題を把握して看護業務管理の改善のための基礎資料とすることを目的に質問紙調査を行った。
     その結果,次のような結論を得た。
     夜間看護業務上の「困ったこと」は,「当直医との連絡がとりにくい」と「患者急変時の救急カートの必要物品不足」が多く,診療科の特殊性が関与していることが示唆された。
     夜間看護業務27項目に対する看護婦の自信の程度は因子分析の結果,3つの因子が得られた。知識・技術,報告に関する業務については経験年数との関係がみられた。しかし,災害時の対処及び看護過程については経験年数との関係がみられず,今後はこれらの業務についての教育訓練の改善の余地があることが示唆された。
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