日本看護研究学会雑誌
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29 巻, 5 号
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  • 池田 七衣, 白井 文恵, 土肥 義胤
    2006 年 29 巻 5 号 p. 5_19-5_25
    発行日: 2006/12/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      院内感染は,患者への新たなる感染や多剤耐性菌の拡散に繋がることから,医療従事者にとって重要な問題である。院内感染対策に重要なことは,感染源を認識しその伝搬経路を遮断することである。頭髪は手指が触れる機会も多く,感染源及び伝搬経路となる可能性がある。そこで,シャンプーで洗髪した頭髪への,院内感染で重要な位置を占める黄色ブドウ球菌,緑膿菌,大腸菌の付着性について調べた。その結果,頭髪には多量の細菌が付着することが明らかになり,付着した細菌の40 ~ 60%はシャンプー洗髪でも遊離せず付着したままであった。また,黄色ブドウ球菌は,種々のシャンプー剤により殺菌されるが,緑膿菌や大腸菌は全く殺菌されないことも明らかになった。従って,多くの緑膿菌株や大腸菌株は,シャンプー洗髪しても一部が生きたまま付着し続け,再び増殖することから,頭髪が院内感染における感染源および伝搬経路となる可能性を強く示唆した。
  • 亀岡 智美, 舟島 なをみ, 山下 暢子
    2006 年 29 巻 5 号 p. 5_27-5_38
    発行日: 2006/12/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      研究目的は,看護学教員の教育ニードに関し,現状とそれに関係する特性を解明し,予測理論発展に向けた今後の課題を検討することである。文献検討に基づき概念枠組みを構築し,測定用具には,山下らの「教育ニードアセスメントツール(看護学教員用)」及び本研究において作成した看護学教員特性調査紙を用いた。研究協力に同意を得た全国の大学・短期大学・専門学校全138校に所属する看護学教員1577名を対象に郵送法による調査を行った結果,834名(52.9%)より回答を得,有効回答546部を統計学的に分析した。分析結果は,看護学教員が,その現状を教育に携わる看護専門職者としての望ましい状態に近づけることを必要としていることを示した。また,看護学教員の教育ニードに関係する17変数が明らかになり,考察を通し,看護学教員の教育ニードに関する予測理論発展に向け,今後経験的に検証する必要のある7仮説が導き出された。
  • 上田 恵美子, 古川 文子, 小林 敏生
    2006 年 29 巻 5 号 p. 5_39-5_47
    発行日: 2006/12/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     スタッフナースの心身の健康は,患者に対する看護の質を保証する上で重要な課題であるが,その実態と影響要因については明らかでない。本研究では,健康関連QOL(HRQOL),職業性ストレス要因,緩衝要因,個人要因の実態把握,各要因間の関係探索,HRQOLに及ぼす影響要因の検討を目的とした。対象者は近畿圏のスタッフナース500名で,HRQOLにSF-36下位尺度4項目,職業性ストレス要因に小林らの看護職職業性ストレス尺度,緩衝要因に影山らのコーピング尺度,自意識に菅原の自意識尺度を用い自記式質問紙調査を行った。その結果,SF-36の活力(VT)と心の健康(MH)は,20歳代,現喫煙者,看護職不向きと思う者,公的自意識の高い者が有意に低かった。またVTは達成感,気分転換,量的負荷からの影響,MHは質的負荷,達成感から有意な影響を受けていた。今回,主として達成感の充足支援と仕事負荷のコントロールがHRQOLの改善に重要であることが示唆された。
  • -看護専門学校教員の面接調査から-
    林 世津子, 柴田 真紀
    2006 年 29 巻 5 号 p. 5_49-5_57
    発行日: 2006/12/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      本研究は,看護専門学校教員5名を対象に,メンタルヘルス上の問題をもつ看護学生と関わる教員の葛藤を把握し,その解決のための示唆を得る目的で,半構成的面接調査を行った。その結果,語られた学生像からは対人関係能力の未熟さと,病的な人格の歪みが推測された。そのため教員は学生のメンタルヘルスの維持と学生を看護師に育てることの間で葛藤を抱いていた。とりわけ臨地実習では,学生に対して救出者感情や陰性感情を抱き感情的に巻き込まれ,患者の安全・安楽を守る必要性が高まることで葛藤が増強していた。さらに学生との関わりを他教員に非難され葛藤し,他教員のサポートを求めにくく,葛藤を増強させていた。
      葛藤解決の方向性として,メンタルヘルスの知識・技術を用いて学生を理解し関わること,葛藤の教員間での共感的に理解すること,葛藤を振り返り教育観を培うことが示唆され,教員のサポートシステムの整備が期待される。
  • 久野 典子, 山口 桂子, 森田 チヱ子
    2006 年 29 巻 5 号 p. 5_59-5_69
    発行日: 2006/12/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      本研究の目的は,在宅で重症心身障害児を養育する母親の養育負担感の特徴とそれに影響を与える要因を明らかにすることである。重症児をもつ母親304名に質問紙を配布し,有効回答177名を対象とした。結果,母親は明らかに負担を感じており,養育負担感は「日常生活上の大変さ」「養育上の不安」「社会的役割制限」の3下位尺度で構成されていた。「養育上の不安」は,3下位尺度の中で最も平均値が高く,多くの母親が児の療育や将来に不安に感じていた。母親が児を肯定的に捉え,夫の協力に満足し,周囲のサポート量も多い場合,母親の養育負担感は軽減に向い,特に「日常生活上の大変さ」と「社会的役割制限」の値を軽減させていた。しかしながら,児の障害や医療的ケアのある場合に大きく影響し,重度の心身障害児をもつ母親の養育負担感はより強いことが示唆された。
  • -身体的反応と主観的評価より-
    近藤 由香, 小板橋 喜久代
    2006 年 29 巻 5 号 p. 5_71-5_82
    発行日: 2006/12/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      本研究の目的は,がん患者に漸進的筋弛緩法(以下PMR)を実施することによってPMRの習得状況を明らかにすること,また,がん患者のPMRの自己練習継続の効果を身体的反応と主観的評価より明らかにすることであった。その結果,1.PMRを習得し,2週間の自己練習を継続できたのは7名中4名であった。2.PMR実施後は,収縮期血圧値と脈拍数の低下は半数以上にみられ,身体感覚度得点は全てに上昇がみられた。3.自己練習を継続できた者は,2週間後には脈拍数の減少,身体感覚度得点値の上昇の傾向がみられた。しかし収縮期血圧値の変化はみられなかった。4.自己練習を継続できた者は,睡眠効果や検査・治療時の緊張緩和,また病気に対して気持ちが肯定的になるなどの効果がみられた。5.看護師は,がん患者一人一人に合った方法で指導を行い,その人がPMRを継続していくことができるように援助していく必要性が示唆された。
  • -作成した関係づくり行動尺度を使用して-
    尾原 喜美子
    2006 年 29 巻 5 号 p. 5_83-5_92
    発行日: 2006/12/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      看護学生の人との関係づくり行動はどのような因子により構成されているのか,又,関係づくり行動は大学の授業進度によりどのように変化するのかを明らかにすることを目的に調査・分析を行った。対象は大学看護学科2年生である。その結果,関係づくり行動は「機知性」「同調性」「向社会性」の3因子で構成されていた。3因子と授業前と授業後,実習後の授業進度にあわせた3時点の間に有意差はなかったが,多重比較分析によると「機知性」「向社会性」の間では有意差があった。得点を高中低の3群に分離し授業進度との関係をみると,低得点群の平均値が3因子とも急激に上昇し,高得点群の平均値は3因子共に下降した。授業前に関係づくり行動得点の低かった学生にとり学内演習や臨池実習は関係づくり行動獲得の有効な教育方法といえるが,授業前得点の高かった学生への教育方法については今後の課題である。
  • 西浦 ちひろ, 山田 一朗, 中谷 茂子
    2006 年 29 巻 5 号 p. 5_93-5_101
    発行日: 2006/12/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      昨今,我が国においてもDomestic Violence ; DVに対する社会的関心が高まっている。しかしながら,方法論的問題点から,DVの実態を把握することはきわめて困難である。
      そこで本研究では,大阪府T市内の某救命救急センターにおけるDV被害者の状況について明らかにすることを目的とした。
      調査の結果,DV被害者と考えられた患者数は,1998年から2001年の間に,女性8人,男性1人であった。主に看護記録による情報から,DVと判断されるまでの経緯は「入院時に被害者自身が告白した」「入院時に被害者の家族が告白した」「入院時に加害者が告白した」「治療経過の中で被害者が告白した」の4パターンに分類できた。さらに,医療者のDVに対する知識が不充分であったために,彼らが被害者の家族や関係機関との連携的役割を充分に果たしていないという現状が明らかとなった。
      DV患者の早期発見と治療に向けた,効果的システムの構築が望まれよう。
  • -内視鏡部門に勤務する看護師を対象とした半構成的面接調査-
    新居 富士美, 安部 恭子, 大島 操
    2006 年 29 巻 5 号 p. 5_103-5_108
    発行日: 2006/12/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      本研究の目的は,内視鏡室勤務における専門性として看護師に求められている能力を明らかにすることである。一地方都市の中規模病院2医療施設で内視鏡室に常勤している看護師4名を対象とした。内視鏡室勤務における看護師として難しいと感じる点,内視鏡室勤務における専門性の必要性の有無と理由等に関する質問項目を半構成面接調査にてデータを収集し,質的に分析した。その結果,「看護師に求められている能力」を看護師自身が感じている状況は,患者とのコミュニケーションや医療者との連携および検査の進行に関するものであり,1.検査・処置・作業の流れを予測して判断や行動に移す能力,2.短時間で情報収集・アセスメントして年齢や検査経験にあわせて説明する能力,3.内視鏡に関する処置技術と看護技術を並行して提供する能力,以上3つの能力が明らかになった。
  • -在宅医療に携わる医師・看護師の職種と所属機関別の分析から-
    前田 修子, 水島 ゆかり, 滝内 隆子
    2006 年 29 巻 5 号 p. 5_109-5_114
    発行日: 2006/12/01
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      本稿では,在宅療養者への十分な医療・衛生材料供給に向けての課題を考察することを目的に,医師と看護師の医療・衛生材料とその供給に関する捉え方について行った質問紙調査項目のうち「在宅における医療・衛生材料の供給について日頃感じている問題点・改善点・意見等」を,Berelson, B.の内容分析を参考に分類し,さらにサブカテゴリ・カテゴリ毎に医師・看護師の職種と所属機関別にその特徴を分析した。結果,17のサブカテゴリが形成され,さらに【医療・衛生材料の供給に関わる背景】【医療・衛生材料の供給の状況】【医療・衛生材料が十分に供給されないことによる支障】【医療・衛生材料の供給に関する要望】【医療・衛生材料の供給に関する疑問・戸惑い】の5つのカテゴリが形成された。以上より,今後の課題として,十分に供給できるための医療機関への支援対策と関係機関・職種に対する医療・衛生材料供給に関する制度や仕組みの周知が考えられた。
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