共に稀とされる第V, 第VIII因子合併欠乏症に慢性好中球性白血病 (CNL) を発症した62歳女性例での血液・凝固学的検査成績を報告する. 白血球増多 (とくに分葉好中球増多) と脾腫が顕著であったが, Ph
1染色体は陰性であり
BCR/ABL再構成にも異常がなくCNLと診断した. Karyotypeは常染色体第11番長腕の部分欠失 (46, XX, del (11) (q23)) を示していた. 出血傾向が特徴的で, PTとAPTTの延長を認めたが, 循環抗凝血素の存在は否定的で第VIII因子インヒビター, ループスアンチコアグラント, 抗カルジオリピン抗体はいずれも陰性であり, 第V, 第VIII因子の軽度欠乏 (各活性量22%, 45%, 各抗原量10%, 51%) に起因することが判明した. 臨床経過上, 白血球数の増減と第V, 第VIII因子活性量の増減には関連性はなく, CNLを基礎疾患として発症したインヒビター症候群は否定的である. 家系の検査から, 本症例は第V因子欠乏症を合併した血友病Aもしくは血友病A保因者とも考えられないので先天性第V, 第VIII因子欠乏症と考えられる. 近年, 常染色体第18番のq21 (18q21) に存在するERGIC-53遺伝子異常が第V, 第VIII因子欠乏症の病因遺伝子として報告されている一方で, 本症例は従来には報告のない, CNLを後天的に発症した先天性第V, 第VIII因子合併欠乏症として貴重な症例と思われる.
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