日本血栓止血学会誌
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25 巻 , 6 号
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特集:血栓性微小血管症(TMA)の最新の知見
  • 藤村 吉博
    2014 年 25 巻 6 号 p. 675-681
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/17
    ジャーナル フリー
    要約 : 血栓性微小血管症(TMA)は,細血管障害性溶血性貧血,血小板減少,細血管内の血小板血栓による臓器機能障害の3 徴候からなる病理学的診断名である.TMA の代表的2 疾患に血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)と溶血性尿毒症症候群(HUS)があり,共に先天性と後天性要因で生じる.TTP はvon Willebrand 因子切断酵素(別名ADAMTS13)の活性著減(<10%)で診断され,典型HUS は志賀毒素産生病原大腸菌感染に合併する.一方,非典型HUS の多くは補体第二経路の補体やその調節因子の遺伝子異常による.しかし,TTPとHUS を明確に識別できない疾患も数多く,これらには病理学的診断名TMA がそのまま用いられている.本特集ではこれらTMA の病態解析についての最近知見を紹介し,本稿ではそのoverview を述べる.
  • 山下 篤, 浅田 祐士郎
    2014 年 25 巻 6 号 p. 682-688
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/17
    ジャーナル フリー
    要約 : Thrombotic microangiopathyはthrombotic thrombocytopenic purpura(TTP),hemolytic uremic syndrome(HUS)などを総称する,もしくは病理学的変化を表現する単語として使用されてきた.TTP の特徴的な病理像は,全身緒臓器(とくに脳,心臓,腎臓,膵臓,副腎など)の細動脈を主体に,一部毛細血管にヘマトキシリンエオジン(HE)染色で薄いピンク色にまた血小板を反映して細顆粒状に染色される多数の血栓を認めることである.血栓は血小板やフォンウィルブランド因子に富み,フィブリンも存在する.HUS の特徴は,例外はあるもののほぼ腎臓に病変が限局することと,微小血栓に加えて,糸球体病変,皮質壊死,尿細管病変を認めることである.症例により病変の分布や程度は異なるが,病因にかかわらず,基本的な病理変化は同様であるとされている.血栓は小葉間動脈,細動脈,糸球体内の毛細血管に認め,血小板とフィブリンが主体と考えられている.
  • 小亀 浩市
    2014 年 25 巻 6 号 p. 689-696
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/17
    ジャーナル フリー
    要約 : 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)はVWF 切断酵素ADAMTS13 の活性著減によって起こる.症例数の大半を占める後天性TTP の主な原因は,ADAMTS13 活性を阻害する自己抗体(インヒビター)の出現であり,先天性TTP(= Upshaw-Schulman 症候群)の原因は,複合へテロあるいはホモ接合性のADAMTS13 遺伝子異常である.したがって,TTP の可能性が疑われる症例では,まず血漿ADAMTS13 活性を測定し,正常血漿に比べて10%未満に低下しているか否かを確認する.低下していた場合,インヒビター力価を測定し,陽性であれば後天性と判断する.インヒビター力価が陰性であれば,先天性TTP である可能性を考え,遺伝子解析を行う.ADAMTS13 遺伝子のダイレクトシーケンシングによって,複合へテロあるいはホモ接合性の原因変異が見つかる.ダイレクトシーケンシングで変異が確定しない場合,ゲノム定量PCR による解析で変異が見つかることがある.
  • 宮川 義隆
    2014 年 25 巻 6 号 p. 697-705
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/17
    ジャーナル フリー
    要約 : 非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)は,補体が異常に活性化して発症する血栓性微小血管障害症(TMA)である.非免疫性の溶血性貧血,血小板減少,腎不全を特徴とする.1970 年代に補体C3 が低下する溶血性尿毒症症候群(HUS)の一種と報告され,1990 年代は血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の亜型と見なされていた.小児に多いHUS の9 割が自然軽快するのに対し,aHUS は血漿交換療法を行っても発症から1 年後には約2 割が死亡,約5 割が慢性腎不全に至る難治性疾患として知られていた.2000 年代にaHUS の病態解明が進み,複数の補体制御因子に遺伝子異常があることが判明した.さらに,aHUS に対する初めての治療薬として補体C5 に対する抗体医薬エクリズマブが承認され,治療法が大きく進歩した.aHUS は希少疾病であるが故に,医療者の経験と情報が不足しており,医療現場ではTTP とaHUS との鑑別診断に苦慮することも多い.本稿ではaHUS の診断と治療について,最新の知見をもとに解説する.
  • 芦田 明, 玉井 浩
    2014 年 25 巻 6 号 p. 706-712
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/17
    ジャーナル フリー
    要約 : 溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome: HUS)は,微小血管症性溶血性貧血,血小板減少症,急性腎傷害の三主徴により診断される.志賀毒素産生性の腸管出血性大腸菌感染症に続発して発症するHUSは,HUS 症例の90%以上を占め典型的HUS とも呼ばれる.典型的HUS は比較的予後良好な疾患と考えられてきたが,2011 年北陸地方を中心に発生した集団食中毒事例やドイツを中心とした集団発生例では,重症例の占める割合が高く,再度その管理・治療法が注目されている.わが国でもこれらの動向を受け,2013 年に溶血性尿毒症症候群の診断・治療ガイドラインが策定され,公表された.本稿では典型的HUS の病因,病態,臨床症状,治療につきこの2013 年のガイドラインも踏まえたうえで概説する.
  • 松本 雅則
    2014 年 25 巻 6 号 p. 713-719
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/17
    ジャーナル フリー
    要約 : 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)は,全身の微小血管に血小板血栓を生じる予後不良疾患である.無治療の場合は90%以上が死亡するが,血漿交換を実施することにより致死率が約20%になることが報告されている.TTP の病因として,von Willebrand 因子(VWF)の切断酵素であるADAMTS13 欠損が報告された.後天性TTP では,ADAMTS13 に対する自己抗体が産生され,同酵素活性が低下することが明らかとなり,なぜ血漿交換が有効であるかの説明可能となった.血漿交換無効例も存在するが,治療後にADAMTS13 自己抗体が上昇していることが血漿交換無効例で報告されている.無効例・再発例に対して,経験的にシクロフォスファミド,シクロスポリンなどが使用されてきたが,最近ではCD20 に対するモノクローナル抗体リツキシマブの有効性が報告されている.
  • 菅原 恵理, 渥美 達也
    2014 年 25 巻 6 号 p. 720-724
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/17
    ジャーナル フリー
    要約 : 血栓性微小血管障害症(TMA)は,先天性と後天性に分けられ,後天性には特発性と,基礎疾患等に続発する二次性がある.二次性TMA の基礎疾患として最も多いのが膠原病である.膠原病患者で血小板減少,溶血性貧血を認めた場合には本症を疑うべきであり,末梢血塗抹標本での破砕赤血球の存在が診断に重要である.von Willebrand 因子の切断酵素であるADAMTS13の活性低下が診断の一助になるが,活性低下を認めない例も多い.定型的TTP では治療は血漿交換療法が第一選択であるが,膠原病関連TMA ではインヒビターの除去に加えて基礎疾患の疾患活動性の低下を目的としてステロイド治療や免疫抑制療法が必要なことも多い.膠原病関連TMA は特発性TMAと比較して,予後不良であり早期の診断と治療開始が極めて重要である.
  • 林 朋恵, 森下 英理子
    2014 年 25 巻 6 号 p. 725-731
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/17
    ジャーナル フリー
    要約 : 造血幹細胞移植後関連TMA(transplantation associated TMA; TA-TMA)は移植治療における重篤な合併症の一つであるが,その病態解明は十分とはいえず,未だ確立された治療も存在しない.移植前処置や感染症,GVHD およびそれに伴う高サイトカイン血症,カルシニュリンインヒビターの使用等が契機となって,①消耗性の血小板減少症,②微小血管での溶血性貧血,③微小血管血栓症による臓器障害を認めるが,現在使用されている診断基準も満足いくものとは言い難く,TMA と診断できていない症例も数多く存在するものと考えられる.近年,TA-TMA 病態における補体の関与など新たな知見が得られており,病態メカニズムに基づいた治療薬の使用経験も増えつつある.新たに治療薬として期待されている薬剤もふくめ,TA-TMAの診断,治療について概説する.
  • 八木 秀男
    2014 年 25 巻 6 号 p. 732-737
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/17
    ジャーナル フリー
    要約 : 薬剤関連TMA を引き起こす代表的な原因薬剤としてチクロピジンやマイトマイシンC などがある.チクロピジン関連TTP はADAMTS13 酵素に対するインヒビター産生で本酵素活性が著減しており,血漿交換が奏功することから予後良好である.チクロピジンの後継薬であるクロピドグレルでも頻度は少ないながらTTP が認められる.その特徴として投与後2 週間以内の発症が多く,投薬中止後にも発症する症例や再発を認めることから血漿交換抵抗例や無効例の存在が懸念されている.一方,薬剤関連HUS を引き起こす原因薬物としてはマイトマイシンC,シスプラチン,ジェムザールなどの抗癌剤,シクロスポリンやタクロリムスなどの免疫抑制剤が挙げられる.その発症機序はいまだ十分には解明されていないが,投与量に依存することから直接的に血管内皮細胞障害を引き起こし,腎障害を来すと推察される.
トピックス
  • 長尾 梓, 和田 育子, 前川 加代, 小島 賢一, 花房 秀次
    2014 年 25 巻 6 号 p. 738-741
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/17
    ジャーナル フリー
    要約 : 血友病医療は凝固因子製剤の進歩と定期補充療法の普及により,出血が予防されて関節障害が少なくなり,QOL が著しく改善している.わが国では血友病専門施設が少なく,施設間格差・地域格差が問題になっている.標準治療を構築するツールとしてクリニカルパスが様々な分野で開発されており,血友病の分野でも必要である.血友病医療においては止血管理のみならず,整形外科やリハビリ,感染症の管理など包括的な管理が必要とされる.それらを多職種間で円滑に管理するため当院で治療経過クリニカルパスを考案した.いずれの施設においても個々の患者を漏れなく経過観察できるよう構成されており,製剤の投与管理,関節評価や治療,今後血友病高齢者の管理まで可能なクリニカルパスを基本として地域連携クリニカルパスへの応用などを検討していきたい.
凝固・線溶・血小板タンパク質の機能発現機構
  • 大野 耕作, 武谷 浩之
    2014 年 25 巻 6 号 p. 742-747
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/17
    ジャーナル フリー
    Points①ヌクレオチド系アゴニスト(2-MeS-ADP)または非ヌクレオチド系アンタゴニスト(AZD1283)が結合したヒトP2Y12 の結晶構造が決定された.②P2Y12 のリガンド結合ポケットは2 つに分かれており,2-MeS-ADP はポケット1と2 にまたがって結合しており,AZD1283 はポケット1 のみに分子の長軸の方向を変えて結合していた.③P2Y12 の細胞外領域は可動性が高く,かさ高い内因性リガンドであるADP の結合ポケットへのアクセスを可能とする.④ポケット入口や細胞外領域は正電荷を帯びており,リン酸基などで負電荷を帯びた2-MeS-ADP が結合すると,リガンドを包み込むような構造変化を起こす.⑤立体構造からのシミュレーションにより,チエノピリジン系抗血小板剤であるプラスグレルの活性代謝物はポケット2 に結合していることが推定された.
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