日本血栓止血学会誌
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25 巻, 1 号
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特集:血液凝固の制御機構と臨床応用への展望
  • 坂田 飛鳥, 大森 司
    2014 年 25 巻 1 号 p. 5-10
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    要約:TFPI は外因系凝固反応を抑制する生理的なセリンプロテアーゼインヒビターである.TFPI は主に血管内皮上で作用し,TFPI・FXa 複合体がTF・FVIIa 複合体に結合することで外因系凝固反応開始を抑制する.3 つのKunitz 型ドメインを有し,K1 とK2 がそれぞれFVIIa, FXa と結合し活性を阻害する.TFPI の抗凝固能の完全な発揮にFXa を必要とすることは,生じた血栓に応じた凝固制御反応に重要と考えられる.また,TFPI による凝固制御が個体発生に重要な役割を持つこと,ならびにTFPI が直接的に血管構成細胞の増殖制御を引き起こすこと等が示唆されている.
  • 荻原 建一, 野上 恵嗣
    2014 年 25 巻 1 号 p. 11-22
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    要約:TFPI (tissue factor pathway inhibitor)にはTFPIαとTFPIβがあり,両者の血管内存在様式の詳細が明らかとなり,さらにTFPIαのC 末側2 つのドメインが第V 因子(FV)やプロテインS(PS)と相互作用し,それぞれ血小板プロトロンビナーゼ阻害(活性型FV 阻害),FXa 阻害促進(PS のTFPI cofactor 作用)といった新機能を有し,臨床像との関連も大きいことがわかってきた.これまで動脈硬化や血栓症におけるTFPI 検査の意義の探索や,遺伝子組換えTFPI 製剤による敗血症治療が試みられたが,まだ成功していない.一方,TFPI 阻害剤を用いた血友病治療は動物モデルで有効性が示され,複数の臨床治験が進行中である.今後,新知見をふまえた新たな臨床応用の展開が期待される.
  • 秋田 展幸, 鈴木 宏治, 林 辰弥
    2014 年 25 巻 1 号 p. 23-32
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    要約:血液凝固反応は,血漿中のセリンプロテアーゼ凝固因子前駆体の逐次的活性化により生成したトロンビンがフィブリノーゲンをフィブリンに変換することにより完結する.凝固反応の行き過ぎにより血栓症が引き起こされると考えられるが,生体はそれを制御する機構としてプロテアーゼインヒビターによる凝固制御系とプロテインC 凝固制御系を有する.プロテアーゼインヒビターによる凝固制御系において,中心的な役割を果たすのがセリンプロテアーゼインヒビター(SERPIN)であり,SERPIN 蛋白質の中で凝固制御において最も重要な役割を担っているのがアンチトロンビン(AT)である.加えて,AT は,抗炎症作用,腫瘍増殖抑制作用および抗ウイルス作用なども有することが示されている.
  • 加藤 衣央, 小嶋 哲人
    2014 年 25 巻 1 号 p. 33-39
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    要約:アンチトロンビン(AT)は,血液凝固における重要な生理的制御因子である.血栓性素因となる先天性AT 欠損症は種々の遺伝子変異により生ずることが判明しており,それらの発症分子病態を解明・理解することは患者の血栓症発症リスク管理に役立てることができる.また,近年,血栓症の新規概念としてアンチトロンビン抵抗性が提唱され,注目を集めている.一方,重症敗血症におけるAT 製剤およびヘパリンの併用についていくつかのサブ解析研究が報告されている.
  • 宮田 敏行, 水口 純, 鈴木 敦夫, 小嶋 哲人
    2014 年 25 巻 1 号 p. 40-47
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    要約:プロテインC,プロテインS,トロンボモジュリン,endothelial cell protein C receptor,(EPCR)は,プロテインC抗凝固系を構成する.活性化プロテインC(APC)は,プロテインS の存在下で,凝固反応の補助因子である活性化V因子(Va)と活性化VIII 因子(VIIIa)を限定分解し不活化することにより凝固系を抑制する.EPCR に結合したAPC(APC-EPCR 複合体)は,PAR1 依存性に抗炎症能,抗アポトーシス活性,内皮バリヤー機能の保護といった細胞保護作用を示す.APC は細胞障害能を持つヒストンを特異的に切断し細胞保護作用を示す.プロテインS はTFPI のXa 阻害活性を促進する働きを持つ.プロテインS は類似のドメイン構造をもつGas6 とともに,受容体チロシンキナーゼであるTAM レセプターファミリー(Tyro3, Axl, Mer)の活性化リガンドとして働くと考えられる.
  • 林 朋恵, 森下 英理子
    2014 年 25 巻 1 号 p. 48-54
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    要約:プロテインC(PC)凝固制御系は,血中に産生されたトロンビンが血管内皮細胞上のトロンボモジュリンと結合してはじめて発動される,いわばネガティブフィードバックの系であり,生体内における微妙な凝固反応に対応し得る非常に柔軟なしくみといえる.PC 凝固制御系因子の欠損あるいは異常は,生体内における向血栓性を高め,時に致死的な血栓症をもたらす.本稿では代表的なPC 凝固制御系因子であるPC, プロテインS(PS)両者の欠損症および活性化プロテインC(APC)レジスタンスの診断およびその臨床像について概説するとともに,APC の多面的な機能に注目した臨床試験の歴史についてもふれてみたい.
  • 伊藤 隆史
    2014 年 25 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    要約:トロンボモジュリンは血管内皮細胞表面に発現している抗凝固因子である.凝固因子トロンビンの作用ベクトルを,活性化プロテインC 産生という抗凝固方向へと転換する作用を有していることから,トロンボモジュリンと命名された.血管内皮細胞特異的にトロンボモジュリンを欠失したマウスは,血栓症を自然発症して死亡してしまうことから,この分子が病的血栓症を防ぐうえで必要不可欠であることがわかる.また,近年は,抗凝固作用だけでなく,抗炎症作用も持ち合わせていることが明らかになり,注目を集めている.
  • 池添 隆之
    2014 年 25 巻 1 号 p. 61-69
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    要約:トロンボモジュリン(TM)の細胞外領域を人工的に作成したリコンビナントTM(rTM)が,播種性血管内血液凝固症候群(DIC)に対する治療薬として,2008 年5 月から日本で発売され臨床使用されている.このrTM は抗凝固作用のみならず,抗炎症作用と血管内皮細胞保護作用を併せ持つ非常にユニークな薬剤である.発売開始後既に5 年が経過し,我々は急性前骨髄球性白血病,造血細胞移植後の内皮細胞症候群や敗血症をはじめ,様々な基礎疾患に合併した195 例のDIC 患者をrTM で治療し,その有効性と安全性を裏付けるデータを得たので本稿で紹介する.
総説
原著論文
  • 鈴木 隆史, 嶋 緑倫, 内海 英貴, 川杉 和夫, 坂田 洋一, 野上 恵嗣, 花房 秀次, 藤井 輝久, 堀越 泰雄, 新井 盛大, 松 ...
    2014 年 25 巻 1 号 p. 75-81
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    要約:ツロクトコグアルファは,Bドメインを切断した新規の第三世代ヒト遺伝子組換え第Ⅷ因子製剤である.本剤の安全性および出血抑制効果を検討する目的で12歳以上の重症型血友病A患者を対象に国際多施設共同第III相試験が実施された.9人の日本人を含む15カ国150人の患者に定期補充療法が行われた.定期補充療法中の年換算出血率(中央値;回/人・年)は,全集団(150人)で3.66,9人の日本人では0であった.報告された499件の出血エピソードの89.4%が本剤の投与2回以内で,日本人の6件の出血ではすべて1回で止血した.止血成功率は全集団で84.5%,日本人では100%であった.試験期間中にインヒビター発生や重要な安全性の問題は認めなかった.本剤による血友病A患者の定期補充療法および出血時治療は安全かつ有効であり,両集団の止血治療成績は一貫するものと考えられた.
  • 今泉 益栄, 伊藤 俊広, 三浦 明, 早坂 広恵, 加藤 美由紀, 森谷 恵子, 藤野 秀一, 村上 由則
    2014 年 25 巻 1 号 p. 82-91
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    要約:2011.3.11 東日本大震災による社会的インフラの崩壊は製剤供給と医療機能を遮断し,血友病患者は生活と診療の基盤を同時に喪失した.本研究は,被災県血友病患者の震災体験と災害時ネットワークの調査記録である.対象者は震災1 年後の調査に回答した血友病患者62 名(20 歳以下18,21 歳以上44;居住県:岩手13,宮城43,福島3).外傷や製剤喪失など直接的被害は約10%であったが,避難環境が困難を増強した.約50%が通院や通勤,関節症状,製剤確保や家庭注射などで困難を経験し,震災1 年後も約10%が身体症状や不安・精神的問題を訴えた.血友病ネットワークとして「医療機関」が最も有用であり,「生活周囲」「患者同士」「製薬会社」は有用と同程度に不足と感じられた.ネットワーク状態に関する「患者同士」の良~不良は他ネットワークの自己評価と相関を認めた.本調査記録は血友病における災害の備えに貴重な資料となる.
トピックス
凝固・線溶・血小板タンパク質の発現機構シリーズ
  • 奥田 美香, 橋本 康平, 荒木 辰也, 中冨 靖, 濱本 高義
    2014 年 25 巻 1 号 p. 99-109
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/03
    ジャーナル フリー
    Points
    ①FVIIIは,FIXaによるFX活性化の補因子であり,正常な止血機構を維持するために重要な因子である.
    ②結晶構造解析は,2008年以降,Bドメイン欠失型分子を中心に進められている.
    ③Aドメインは,FVIIIの活性発現に寄与し,特にA2ドメインはその役割の中心を担う.
    ④Bドメインは,FVIIIの細胞内プロセッシングや細胞内輸送に関与する.この機能にはBドメイン内のN型糖鎖が関与している.
    ⑤Cドメインは,リン脂質やFIXaと相互作用し,特にC2ドメインがその役割の中心を担う.
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