日本血栓止血学会誌
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34 巻, 1 号
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年頭のごあいさつ
Editorial
特集:凝固波形解析(CWA)のアップデート
  • 徳永 尚樹
    原稿種別: 特集:凝固波形解析(CWA)のアップデート
    2023 年 34 巻 1 号 p. 4-11
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/01
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    凝固波形解析(clot waveform analysis: CWA)は,プロトロンビン時間(prothrombin time: PT)や活性化部分トロンボプラスチン時間(activated partial thromboplastin time: APTT)などの凝固時間測定において得られるフィブリン形成に基づく凝固反応から,包括的に凝固能を評価する方法である.古くからトロンボエラストグラムやトロンビン生成試験などと同じく,播種性血管内凝固症候群や血友病など様々な病態における血液凝固能の評価法として用いられてきた.CWAは専用の機器を必要とせず,ルーチン検査のPTやAPTT測定から自動的にデータを取得できるため,臨床検査への活用に期待されている.近年ではPTやAPTTにおけるCWAのみならず,添加する試薬を変えた新たなCWAが開発され,その有用性が報告されている.現在CWAの機能が実装されている自動分析機は限られているが,続々と自動分析機へのCWA機能の実装が進んでおり,今後のますますの普及化と臨床検査法の一つとして確立されることに期待したい.

  • 荻原 建一, 野上 恵嗣
    原稿種別: 特集:凝固波形解析(CWA)のアップデート
    2023 年 34 巻 1 号 p. 12-21
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/01
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    血友病の凝固検査の特徴はAPTT延長にある.APTT測定時に得られる経時的な光強度情報(透過率,吸光度,散乱光量など)に基づく凝固波形解析から,血友病診療に有用なさまざまな情報が得られる.光強度変化を相対化することにより,凝固第VIII因子,第IX因子(FVIII, FIX)機能に焦点を当て,形成されるフィブリンの質的あるいは量的な影響を補正することが可能であり,実際に活用され始めている.血友病の診断においては,FVIII活性やFIX活性の1%未満の微量測定,genotypeとphenotypeを反映した包括的凝固機能 “coagulotype” の判定,APTT延長要因についての効率的な識別,などに凝固波形解析が有用である.血友病の治療においては,半減期延長型凝固因子製剤,バイパス止血製剤,非凝固因子製剤のモニタリングへの応用が研究されている.凝固波形解析は臨床検査室レベルの全自動凝固検査装置に実装可能であることから,汎用性が最も期待される包括的凝固機能検査法であると言える.

  • 新井 慎平, 奥村 伸生
    原稿種別: 特集:凝固波形解析(CWA)のアップデート
    2023 年 34 巻 1 号 p. 22-28
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/01
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    フィブリノゲン(fibrinogen: Fbg)は,臨床検査において活性値または抗原量として測定されている.Fbg異常の判断に両者の測定が有用であるが,多くの検査室ではClauss法に基づいた活性値のみを測定しているため,先天性Fbg異常症(congenital fibrinogen disorder: CFD)の見逃しが懸念される.近年,プロトロンビン時間(prothrombin time: PT)や活性化部分トロンボプラスチン時間(activated partial thromboplastin time: APTT)の凝固波形解析(clot waveform analysis: CWA)が精力的に研究され,様々な凝固異常や抗凝固薬の研究に応用されるようになった.筆者らはこのCWAをClauss法に応用し,CFDにおけるCWAパラメーターの特性を明らかにした.さらに,CWAパラメーターから抗原量に相当するFbg値を算出するシステムが開発され,日常診療で鑑別対象となる後天性Fbg低下症と質的異常を呈するdysfibrinogenemiaおよびhypodysfibrinogenemiaを鑑別可能であった.今後も本システムの検証は必要ではあるが,Clauss法におけるCWAを活用することでFbgの質的異常を評価できる可能性が示唆され,CFDスクリーニングに応用されることが期待される.

  • 蔵野 信, 志村 拓也, 涌井 昌俊, 矢冨 裕
    原稿種別: 特集:凝固波形解析(CWA)のアップデート
    2023 年 34 巻 1 号 p. 29-35
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/01
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    COVID-19患者では,凝固異常が合併しやすいことが知られている.私たちは,ACL-TOP 700 hemostasis testing systemにて,APTT凝固波形解析をしたところ,COVID-19患者では,高率に凝固波形パターン異常がみられることを経験した.その後の報告をみると,当該測定系以外の測定系では,このような波形パターン異常は報告されておらず,測定系特異的な現象と考えられる.一方で,凝固塊の形成速度,加速度を示す指標は,調べた範囲のすべての測定系で上昇しており,COVID-19での凝固異常をAPTT凝固波形解析は反映していると考えられる.その機序としては,現在のところ特定できていないが,凝固波形パターン異常を示す検体では,特にフィブリノゲンが高値を示していた.その他,ループスアンチコアグラント,VWF/ADAMTS13,血中脂質の変動などが要因として考えられる.一方で,その重症度,易血栓性との関連など臨床的な意義はまだ不明であり,今後の症例の蓄積が必要と考えられる.

  • 和田 英夫, 江崎 実, 市川 由布子, 池田 望
    原稿種別: 特集:凝固波形解析(CWA)のアップデート
    2023 年 34 巻 1 号 p. 36-42
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/01
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    凝固波形解析(clot waveform analysis: CWA)には,活性化部分トロンボプラスチン時間(activated partial thromboplastin time: APTT),プロトロンビン時間(prothrombin time: PT),トロンビン時間(thrombin time: TT)などがあり,エビデンスが集積されつつある.また,生理的な凝固能を評価するために,種々の修正CWAが開発されつつある.修正CWAには,CWA-PT/APTT,CWA-希釈PT(small amount TF induced FIX activation: sTF/FIXa),CWA-希釈TT,global coagulation and fibrinolysis testなどがある.CWA-sTF/FIXaはpeak heightの増加で過凝固状態を,peak timeの延長で血小板減少を示唆する.CWA-希釈TTはトロンビンバーストを反映し,global coagulation and fibrinolysis testは,凝固能に加え線溶能も評価できる.

  • 松本 智子, 下村 大樹
    原稿種別: 特集:凝固波形解析(CWA)のアップデート
    2023 年 34 巻 1 号 p. 43-52
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/01
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    凝固波形解析(clot waveform analysis: CWA)は自動凝固分析装置を用いた凝固機能評価法として発展している.CWAはプロトロンビン時間(prothrombin time: PT)や活性化部分トロンボプラスチン時間(activated partial thromboplastin time: APTT)の “凝固時間” のみならず,装置内で解析した結果を画面に表示することができ,汎用性が高いため,臨床検査室で凝固異常症の迅速な鑑別ができる.近年,CWAが出血性疾患だけでなく,血栓傾向を示す疾患に有用だと報告された.今後は,波形による鑑別の精度向上が課題である.一方,APTTによる凝固反応の後,フィブリン溶解過程を評価できる凝固線溶波形解析(clot fibrinolysis waveform analysis: CFWA)が登場した.CFWAは,間接的に凝固のみならず線溶能や線溶抑制効果を反映する画期的な方法で,血中の凝固・線溶バランスを評価することができる.CFWAは出血症状のみならず,血栓傾向や線溶亢進・抑制を半定量的に判断できる.臨床症状を反映する汎用性の高い検査法として今後,実用化に向けた努力が必要である.

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