日本血栓止血学会誌
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Editorial
特集:敗血症性DICのマネージメント
  • ~敗血症性DIC臨床試験の患者選択基準の視点から~
    松岡 義, 安尾 俊祐, 射場 敏明
    原稿種別: 特集:敗血症性DICのマネージメント
    2024 年 35 巻 3 号 p. 370-377
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/11
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    播種性血管内凝固(disseminated intravascular coagulation: DIC)は,敗血症患者に合併し,重篤な出血や臓器機能障害を引き起こす.1990年代に厚労省からDIC診断基準(JMHW-DIC)が発表され,以降,国際血栓止血学会(International Society on Thrombosis and Haemostasis: ISTH)DIC診断基準(ISTH-DIC),急性期DIC診断基準(JAAM-DIC),sepsis-induced coagulopathy(SIC)基準と種々の基準が提唱されてきた.敗血症性DICに関する研究は,本邦からの報告が多く,使用される基準もJMHW-DICからJAAM-DICへと変化してきた.一方,海外ではISTH-DICが使用されている.これまでの研究結果から,近年の臨床試験では,患者選択に各種診断基準に加え重症度指標を付加する研究も増加してきた.各基準の目的に応じた使い分けが重要であり,本稿では,これまでの臨床試験で使用された診断基準の変遷を提示し,各基準の特性を理解することを目的とする.

  • 生塩 典敬, 山川 一馬
    原稿種別: 特集:敗血症性DICのマネージメント
    2024 年 35 巻 3 号 p. 378-383
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/11
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    敗血症の臓器障害の一つである播種性血管内凝固(disseminated intravascular coagulation: DIC)は,合併すると死亡リスクが高まるとされている.しかしながら,DICに対する治療法として実施される抗凝固療法の有効性はいまだ確立していない.敗血症性DICは,immunothrombosisという生体防御反応としての血栓形成傾向が局所から全身に播種することで生じる病的な反応であるとされる.また敗血症性DICは血管内皮細胞障害に伴う凝固制御機能不全や線溶活性化の抑制を伴い,致死的な多臓器不全の原因となっていると考えられている.このような敗血症から敗血症性DICに至る病態メカニズムの理解は,抗凝固療法を行う上で重要である.現時点では,抗凝固療法の最適な治療対象患者は敗血症性DICであることに加えて,重症度の高い症例やアンチトロンビン活性が低い症例であることを示唆するエビデンスが散見される.敗血症性DICに対する抗凝固療法の有用性についてはさらなるエビデンスの集積が待たれる.

  • 土田 拓見, 和田 剛志
    原稿種別: 特集:敗血症性DICのマネージメント
    2024 年 35 巻 3 号 p. 384-390
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/11
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    敗血症性DIC患者においては,アンチトロンビン(antithrombin: AT)はトロンビンとの結合による消費や,血管透過性亢進に伴う血管外漏出などにより活性値が低下する.ATは主にトロンビンと活性化第X因子の阻害による抗凝固作用だけでなく,炎症反応も惹起するトロンビンの阻害とグリコカリクスへの結合を介した抗炎症作用を有することから,その投与は敗血症性DICに対して効果が期待される.日本版敗血症診療ガイドライン2024(J-SSCG 2024)は,敗血症性DIC患者に対するATの投与を弱く推奨しているが,国際的にはAT投与の効果は本邦ほど重要視されていない.その結果,近年の敗血症に対するAT投与の効果を検討する報告は殆ど本邦発となっているが,着実な研究の蓄積によりAT投与の対象とすべき患者群やその有効性が示されてきている.本稿では,ATの生理学的機能/作用機序を確認し,ATの投与対象や今後の研究展望について,これまでのエビデンスと近年の報告を交えて解説する.

  • 藤江 直輝, 梅村 穣
    原稿種別: 特集:敗血症性DICのマネージメント
    2024 年 35 巻 3 号 p. 391-398
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/11
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    近年の医療技術の進歩にも関わらず,敗血症は全世界で年間約5,000万人が発症し,うち1,100万人が死亡すると推定されている.本邦では,敗血症に伴う播種性血管内凝固(disseminated intravascular coagulation: DIC)に対し,抗凝固薬である遺伝子組み換え型ヒト可溶性トロンボモジュリン(recombinant human soluble thrombomodulin: rTM)が幅広く用いられている.日本版敗血症診療ガイドライン(J-SSCG)2020においてはrTMを投与することを弱く推奨していたが,現時点でそのエビデンスは十分とはいえず,有用性についての結論が出ていない.また,2019年に多国間第III相試験(SCARLET trial)の結果が公表されたがその研究手法の限界が多く指摘された.本稿では,敗血症性DICに対するrTMの効果や位置付けに関して,J-SSCG2024改訂にあわせた最新の知見を報告する.

  • 十時 崇彰
    原稿種別: 特集:敗血症性DICのマネージメント
    2024 年 35 巻 3 号 p. 399-403
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/11
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    敗血症性播種性血管内凝固(disseminated intravascular coagulation: DIC)は頻度が高く致死率の高い合併症である.日本版敗血症診療ガイドラインでは敗血症性DICに対して抗凝固療法が推奨されており,アンチトロンビンと遺伝子組み換えトロンボモジュリン(rTM)が使用される.

    これらの薬剤は抗凝固作用だけでなく抗炎症作用を有しており,作用機序からもアンチトロンビンとrTMの併用療法が効果的である可能性がある.基礎実験では併用療法の相乗効果が報告されているが,臨床研究では様々な報告があり一定の見解は得られていなかった.系統的レビュー・メタ解析の結果から併用療法は出血合併症を増やすことなく,統計学的に有意ではなかったものの死亡率を改善する傾向にあった.併用療法が有効な患者群の可能性として,AT活性値50%以下が一つの指標として示唆されているが,今後のさらなる検討が必要である.

総説
  • ―本邦の検査方法と最新のISTH-SSC推奨事項との比較―
    熊野 穣, 内藤 澄悦, 山﨑 哲, 家子 正裕
    原稿種別: 総説
    2024 年 35 巻 3 号 p. 404-413
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/11
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    ループスアンチコアグラント(lupus anticoagulant: LA)は「個々の凝固因子活性を阻害することなく,リン脂質依存性の血液凝固反応を阻害する免疫グロブリン」と定義され,リン脂質依存性の凝固反応で検出される.国際血栓止血学会標準化委員会(The Subcommittee on Lupus Anticoagulants and Antiphospholipid Antibodies of the Scientific and Standardization Committee of the International Society on Thrombosis and Haemostasis: ISTH-SSC)では,希釈ラッセル蛇毒時間(dilute Russell’s viper venom time: dRVVT)と活性化部分トロンボプラスチン時間(activated partial thromboplastin time: APTT)をベースとした原理の異なる2試薬でのLA確認試験を推奨している.さらに,LA確認試験実施前の関連凝固検査の実施,結果解釈の標準化指標であるnormalized ratio,患者検体を正常検体と1:1で混和して凝固時間が補正されるかを確認するミキシングテストなども推奨事項に含まれているが,本邦の検査方法とは異なる点も多々見受けられる.本稿では,LA検査方法について本邦とISTH-SSCの推奨事項の比較を行い,本邦での標準化に向けた活動と今後の展望について述べる.

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