牛精子の生存に対するアマイド(ギ酸,酢酸,プロピオン酸,ブチル酸,マロン酸,乳酸,吉草酸)の凍害防止効果を,錠剤化凍結法を用いてしらべた。
0.31,0.93,1.55,2.17,3.1M濃度(終末)のアマイドを含む卵黄クエン酸ソーダ液で採取精液を10倍に希釈し,20°Cに30分おいた後の精子生存率を観察した。また次の実験では同様に希釈した精液を5°Cに冷却し,希釈後2~3時間で,その0.1m
lを凍結した。凍結1~5時間後40°Cとの金属板上で融解し,そのままおよび融解液(緩衝液加牛乳,原精液とほぼ等張)を加えて精子の生存状態を観察した。
1.20°C,30分後における各種のアマイド濃度中の精子の生存
乳酸アマイド処理区が各濃度を通して最良の成績を示し,対照のグリセリンのそれとほぼ同じであった。
次いで酢酸,プロピオン酸,ギ酸,ブチル酸のアマイドの処理区の順に精子生存成績が低下し,とくにブチル酸アマイド処理区では1.55M濃度で精子はほとんど死滅した。
供用したアマイド中で分子量の大きい( ?? 102)マロン酸アマイドは1.55M濃度まではかなり良好な精子生存成績を示したが,それ以上の濃度は溶解度の低いため実験できなかった。なお吉草酸アマイドは毒性が強いようで.希釈直後に精子は死滅した。
この実験成績は,これらのアマイドの牛精子に対する透過性および毒性の程度を示すものと考えられる。
2. 凍害防止効果
供用したすべてのアマイドはブチル酸および吉草酸のアマイドを除き凍害防止効果を示した。良好な効果がギ酸,酢酸ならびに乳酸のアマイドで認められ,その効果は対照のグリセリンのそれと同じかまたはそれに近い。
プロピオン酸およびマロン酸のアマイドの効果は前3者に比べ明らかに劣っていた。
ギ酸および乳酸のアマイド処理精子は,凍結,融解後いわゆる融解液で再希釈することにより,その精子生存(運動)率が対照的な変化を示す。すなわち前者では著しい改善を,乳酸アマイドでは明らかな低下を示した。
対照のグリセリン,DMSO,エチレングリコールの3者の比較では,グリセリンが最良の効果を示し,次いでエチレングリコール,DMSOの順であった。
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