宮城県下14地域(Fig.1)において, 牛舎から脱出する蚊を加藤式畜舎用トラップを用いて1963年7月下旬から9月下旬まで, 毎週2日定期的に採集して蚊の発生の季節消長を調査した.採集蚊はコガタアカイエカ, シナハマダラカ, キンイロヤブカ, オウクロヤブカ, アカイエカの5種類であった.各蚊の種類ごとに各地域での発生の季節消長パターンの類型化を試みると : コガタアカイエカ(Fig.2);1)角田, 古川, 気仙沼, 宮黒(1峰性), 2)岩沼, 塩釜(発生のピークが顕著でない), 3)岩出山, 登米(1峰性であるが発生時期がおくれる), シナハマダラカ(Fig.3);1)角田, 宮黒, 気仙沼(顕著な2峰性), 2)岩沼, 登米(発生のピークが顕著でない2峰性), 3)塩釜, 古川, 岩出山(発生の第2ピークが顕著でない2峰性), キンイロヤブカ(Fig.4);1)角田, 岩沼, 宮黒, 古川(1峰性), 2)登米, 塩釜, 岩出山(2峰性), 3)気仙沼(発生のピークが顕著でない1峰性), オウクロヤブカ(Fig.5);1)岩出山, 白石, 塩釜(1峰性), 2)角田, 岩沼, 気仙沼, 宮黒(2峰性);3)登米(発生期間が長い2峰性), アカイエカ(Fig.6);1)角田, 岩出山, 岩沼(1峰性か2峰性), 2)宮黒(発生のピークが顕著でない), 3)塩釜, 気仙沼, 古川(1峰性)のように各種類とも3つの異なる発生季節消長パターンに類型化される.各地域における蚊個体群構造の季節変化(Fig.7)は, その場所の地域性と関係があるようである;すなわち, この季節変化のパターンは水田地域(古川, 岩出山など)と都市地域(塩釜, 宮黒, 気仙沼)の2つに大きく分けられる.
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