クロイエバエの幼虫・蛹の発育所要日数, 成虫の摂食習性, 卵巣発育経過, 幼虫産出サイクルおよび生理的齢に関して調べた。15,20,25,および30℃の4恒温下での発育所要日数は, 幼虫期でそれぞれ10.1,6.4,5.3,4.0日で, 蛹期はそれぞれ29.4,15.8,11.3,8.7日だった。発育零点は幼虫で4.8℃, 蛹で8.4℃であった。有効積算温度は幼虫で101.5日度, 蛹で187.0日度であった。本種の1年間の発生回数は, 北海道十勝地方で3∿4回と推定された。雌成虫の野外での血液摂取率は3.9%と低かった。雌成虫は1齢後期幼虫を産出することが確認された。卵巣発育経過において, 2対の卵巣小管の左側の最も発達した濾胞が羽化後5∿6日で成熟し, 次に右側の濾胞が8∿9日後に成熟し, 以後2∿3日間隔で左右交互に成熟卵が形成された。排卵は成熟した濾胞が形成された直後に交互に起こった。卵は排卵後約16∿24時間で子宮内で孵化し, さらに少なくとも約16∿24時間で1齢後期幼虫に成長した。野外では羽化後約7∿9日で幼虫産出が起こると推定された。野外で捕獲された交尾終了後の成虫の幼虫産出は, 30℃で2日, 25℃で3日間隔が最も頻度が高かった。雌成虫の生理的齢は卵巣小管内基部の黄体(follicular relic), 濾胞の発育段階, 子宮内容物などによって五つのカテゴリーに分離され, それらのおのおのにおいて日齢が算出され, クロイエバエ雌成虫の生理的齢, 日齢の推定はある程度の範囲内で可能であることがわかった。
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