1.上信国境物見山(海抜1375.4m)を中心とする上州側の神津牧場において, 牛馬に襲来するアブの発生様相を, 1944年から46年にいたる3カ年にわたつて調査した.2.この地において採集されたアブの種類は第1表にしめした29種に達したが, これらのうち, マルガタアブ, キゴシメクラアブ, メクラアブ, アルパードアブ, ジャージーアブ, ホルバートアブ, シロスネアブ, キノシタシロフアブ, イヨシロオビアブの発生数はきわめて少なく, 全く採集されない年もあつた.3.3カ年を通じて5月には4種, 6月には14種, 7月には25種, 8月には18種, 9月には10種が採集され, 種類数, 個体数のもつとも多かつたのは7月で, 8月がこれについでいた.4.1946年の定量採集の結果では, 発生個体数のもつとも多かつたのは, 第2表にしめすごとくアオコアブで, アカバゴマフアブがこれにつぎ, 50匹以上採集されたものを優占種とすると, さらにタイワンシロフアブ, ヤマトアブ, シロフアブ, キスジアブ, アカウシアブおよびクロメクラアブをくわえて8種となるが, その飛来数は天候に非常に左右された.5.種類と個体数の関係はFisherのlogarithmic distribution, Prestonのtruncated discrete lognormal distributionのいづれの数学的モデルにもよくあてはまつた.後者のモデルにあてはめた結果から推定して, この地からは未記録種発見の可能性はあるもののようである.
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