グァテマラ産ブユS. haematopotumのO. volvulusミクロフィラリアの摂取, 後者のブユ胸筋への移行および感染幼虫への発育を, 主媒介ブユ種S. ochraceumを対照として, 実験感染により検討した。その結果, ミクロフィラリアの摂取, 移行に関しては両種ブユ間で本質的な差はみられなかった。すなわち, ミクロフィラリアの摂取は, S. haematopotumで, 1∿293,S. ochraceumで2∿1050と差がみられるが, 胸筋へ移行したのはそのうち, 前者ブユ種で1∿7(平均3), 後者ブユ種で1∿29(平均1)と少数で差をみとめなかった。しかし, 吸血後24時間のブユ胸筋への移行率は, ミクロフィラリアを100以上取りこんだ個体で比較すると, S. haematopotumで44.4% S. ochraceumで83.3%と差がみられた。次に, 22℃の恒温条件下でブユを飼育した場合, 最初の第3期幼虫はいずれのブユ種においても, 吸血後8∿9日に死亡した雌の頭部から見いだされた。しかし, S. ochraceumの場合と異なり, S. haematopotum体内での幼虫発育は不揃いで, 吸血後9日以降でも第1または2期幼虫が44.2∿87.1%を占めていた。また, ブユ両種間で9日目までの生存率には差が認められなかったが, 生存ブユのうち第3期幼虫を保有していた割合はS. ochraceumにおいて高かった。以上の結果から, S. haematopotumは, O. volvulvsの実験的媒介者としてはS. ochraceumよりいくぶん劣ると考えられた。
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