ハマベハヤトビバエが東京湾内羽田沖廃棄物処理場で大量発生し, 1977,1978年7月中旬に, 大田区羽田3∿6丁目地区, 多摩川, 海老取川沿岸の住宅の灯火に日没より夜半にかけて大量飛来し, 不快害虫として問題化した。本種の被害地への飛来について, 1978年5∿11月までの期間, 被害地でライトトラップを用いて定点捕集を行い飛来消長を調査した結果, 7月中旬ごろのみ大量飛来があることが確かめられた。なお, 集中飛来期には, 一夜の捕集数が1,000頭以上になると住民から苦情が出るという関連性がみられた。発生源の羽田沖廃棄物処理場は東京国際空港の沖合に隣接して位置し, 497万m^2の面積を有する。1972年より浚渫土砂と下水処理場のスラッジを第2次送泥法によって混合投棄による埋立を行ってきているが, 1975年になって埋立面が海面上に現われ, 1978年には場内全体が沼地状態となっていて, この汚泥表層がハマベハヤトビバエの大量発生源となっている。処理場内ではハマベハヤトビバエとスガリミギワバエの2種が優占種として大量発生し, 6月から7月が両種とも発生ピークとなっている。ハマベハヤトビバエは7月上∿中旬に成虫が過密状態となると飛散が起こるようになる。発生源から飛び立った成虫が, 被害地まで東京国際空港を越えて, 約3kmの距離を飛来移動するが, この時期には東, 北方向の風が吹き, この風に乗って飛散するものと思われる。この風は梅雨末期特有の気圧配置によってもたらされるものである。また, 移動, 集中飛来要因として, 本種の走光性も大きな役割をもつものと思われる。
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