整形外科と災害外科
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  • 富田 雅人, 野村 賢太郎, 尾﨑 誠
    2023 年 72 巻 4 号 p. 595-596
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    [はじめに]当科で経験した肝転移を生じた骨軟部肉腫症例について検討を行った.[対象と結果]2006年から2021年の間に当科において生検または手術後に病理で肉腫と診断された症例は302例であった.そのうち,4例で肝転移を認めた.男性3例,女性1例で当科初診時平均年齢は54.5歳(59,63,66,30歳)であった.原疾患は,乳腺原発血管肉腫,腎臓原発悪性Glomus腫瘍,腸骨原発分類不能腫瘍,後腹膜Ewing肉腫であった.全例アドリアマイシンを含む化学療法を受けたのちに肝転移が発見された.肝転移を認めた4症例全てに肺転移を認めた.肝転移が直接死因と考えられたのは1例のみであった.肝転移発見後4,4,3ヵ月で死亡され,1例は発見後9ヵ月現在治療を継続している.肉腫の肝転移は切除することで予後の改善が得られるとする報告も散見される.術後の経過観察では肝転移を念頭に診察を行う必要があると考えた.

  • 大串 秀仁, 中山 鎮秀, 山本 卓明
    2023 年 72 巻 4 号 p. 597-602
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    軟部腫瘍における超音波検査の有用性についての報告が散見されるが,良悪性鑑別について確立された手法は無い.脂肪性腫瘍は特徴的な超音波所見により,診断の感度,特異度が高いとされるため脂肪性腫瘍を除外して悪性腫瘍のリスク因子の同定とスコアリングシステムの作成を行った.超音波検査が施行された軟部腫瘍および類似疾患の内,良性脂肪性腫瘍と組織学的診断の無いものを除く83例(良性59例,悪性24例)について年齢,性別,サイズ,組織型,腫瘍の形状,辺縁の性状,内部の性状,エコー輝度,腫瘍内部の血流を検討した.同定されたリスク因子から新たなスコアリングシステムを作成した.ROC解析でサイズによる良悪性のカットオフは40.5 mmであった.サイズ,辺縁の性状,内部の性状,内部の血流が有意なリスク因子であった.新たなスコアリングシステムの感度は67%,特異度は83%,AUC=0.80であり良悪性鑑別に有用であると考えられた.

  • 岡田 宗大, 柴田 光史, 三宅 智, 小林 駿介, 松永 慶, 蓑川 創, 柴田 陽三, 伊﨑 輝昌, 山本 卓明
    2023 年 72 巻 4 号 p. 603-606
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    腱板全層断裂に対して関節鏡視下腱板修復術を行った65歳以上の高齢者で外傷性腱板断裂群(以下,T群)21肩(男性13肩,女性8肩),非外傷性腱板断裂群(以下,A群)35肩(男性25肩,女性10肩)を対象とした.全例フットプリントを腱板断端で覆い一次修復を行い,術前,術後1年の臨床成績と再断裂率の比較を行った.腱板の断裂サイズはT群の方が有意に大きく,術前のJOAスコアはT群が有意に低かった.術後の再断裂率に有意差はみられなかったが,術後のJOAスコアはA群が有意に高値であった.T群で受傷から4ヶ月以降に手術を行った症例が8/21肩(38.1%)あり術後のJOAスコアが著しく低値であった.高齢者の外傷性腱板断裂は非外傷性腱板断裂と比較して術後の臨床成績が不良であった.受傷から手術までの期間が長いことが原因の1つとして考えられた.

  • 橋本 貴美子, 三宅 智, 柴田 光史, 小林 駿介, 松永 慶, 山本 卓明
    2023 年 72 巻 4 号 p. 607-610
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【はじめに】腱板の引き出し緊張度を少なくすることは腱板修復にとって理想的である.本研究の目的は低緊張での腱板修復術の治療成績を明らかにすることである.【方法】2018年9月から2019年8月までの間に同一術者が鏡視下腱板修復術を行った肩腱板断裂24肩(平均フォロー期間24.8カ月,手術時平均年齢65.2歳,中断裂12肩,大断裂12肩)を対象とした.不全断裂,小断裂および肩甲下筋腱単独断裂症例,再修復術,部分修復術,直視下手術を行った症例は除外した.術中にデジタルテンションメーターを用いた.腱板引き出し緊張度10 N以下の位置にアンカーを設置し,single-row法かtriple-row法で修復した.術後臨床成績および再断裂率を後ろ向きに調査した.【結果】平均JOAスコアは術前(51.1点)と比べ最終観察時(95.0点)に有意に改善していた(p<0.001).術後再断裂率は4.2%(1/24肩)であった.【まとめ】低緊張での腱板修復術の臨床成績は良好であった.

  • 井上 三四郎, 井村 洋, 原 俊彦, 浜崎 晶彦, 美浦 辰彦, 藤村 謙次郎, 園田 和彦, 小宮山 敬祐, 久保 祐介, 白崎 圭伍, ...
    2023 年 72 巻 4 号 p. 611-618
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    飯塚病院式大腿骨近位部骨折術翌日転科システム(Fix and Relay以下FR)というユニークな連携を紹介したい.FRは,患者の抱える問題が「高齢者の骨折」から「骨折した高齢者」へと変換したタイミングで,主科が整形外科ら総合診療科へ,主治医が整形外科医からホスピタリストへ変換するシステムである.2022年4月から8月の間にFRを行った55例患者を対象とした.2015年に当院で手術加療を行った214例を対照群として統計学的に比較検討を行った.検討項目は,早期手術,遅延理由,合併症(総数,重篤なもの,死亡),退院時骨粗鬆症治療率,入院期間とした.その結果,早期手術が有意に少なく,退院時骨粗鬆症治療率が向上していた.合併症や死亡率は変わらなかった.

  • 植田 博也, 森田 周作
    2023 年 72 巻 4 号 p. 619-624
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    [はじめに]大腿骨近位部骨折の治療においては,各国のガイドライン上,早期手術が勧められているが,受傷後すぐに受診しないケースも多く経験する.本研究では,2021年度当院で同骨折に対し手術施行した123例の,受傷から来院までの時間,受診が遅れた原因などについて調査した.[結果]受傷から受診までの平均時間は11.6時間(中央値2時間),受傷から3時間以内に受診した症例は60%,院外手術待機時間は総手術待機時間の23%を占めていた.また遅れの原因としては,様子をみていた,独居で連絡困難などが多かった.[考察]重篤な状態と認識されず受診が遅れるケースが多くあり,早期手術を可能とするためには,同骨折は緊急手術が必要な重篤な疾患であることを啓蒙する必要がある.また入院まである程度の時間を要することから,手術待機時間は,「入院から」ではなく,基本的には「受傷から」として論じるのが望ましいと考える.

  • 石川 樹, 武市 憲英, 池間 正英, 伊志嶺 博, 大槻 健太, 仲宗根 哲, 西田 康太郎
    2023 年 72 巻 4 号 p. 625-627
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【はじめに】当院は宮古医療圏唯一の地域医療支援病院であり,大腿骨近位部骨折手術の大部分を行っている.離島という限られた医療資源を有効利用するために,当院では早期手術と自宅退院を心がけて取り組んできた.当院における大腿骨近位部骨折の治療成績を検討したので報告する.【対象と方法】対象は2021年1月から12月までに当院で手術を行った大腿骨近位部骨折155例である.年齢,男女比,骨折部位,治療法,手術待機日数および待機理由,入院期間と転帰を調査した.【結果】手術時年齢は48~103(平均83.2)歳,骨折型は頚部骨折が84例,転子部骨折が69例,転子下骨折が2例であった.手術待機日数は1~13(平均1.97)日,待機理由は週末入院が最多であった.入院期間は7~88(平均28.6)日,術後転帰は自宅退院が77例(49.6%)であった.【結語】手術待機日数と入院期間は全国平均より短く,後方支援病床が少ないことを反映して自宅退院が多い傾向にあった.

  • 小林 弘明, 笹木 慶, 鷲見 昌克, 永尾 祐治, 越智 康博, 木戸 健司
    2023 年 72 巻 4 号 p. 628-632
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【目的】大腿骨近位部骨折はしばしば初療を非整形外科医が担う事もあり,見逃される症例が散見される.大腿骨近位部骨折の診断補助にD-dimerが有用であるか検討した.【方法】大腿骨頸部骨折または大腿骨転子部骨折の手術症例309例322股を対象とした.術前D-dimer値と受傷からD-dimer測定まで時間の関係を示し,測定時間が24時間以内の256股のD-dimer値のパーセンタイル値を算出した.24時間以内の大腿骨頸部骨折においては,D-dimerの中央値を境に2群に分け,D-dimer高値群に寄与する因子を検討した.【結果】受傷後24時間以内に測定した256股のD-dimer値は中央値23.6μg/ml,最小値1.3μg/ml,5パーセンタイル値4.5μg/mlであった.大腿骨頸部骨折において,受傷後より早期である事,非転位型の骨折である事がD-dimer高値群の独立した因子であった.【結論】受傷後24時間以内のD-dimer値は大腿骨近位部骨折の診断補助に有用であり,非転位型骨折や不顕性骨折の見逃し減少に期待できる.

  • 笹栗 慎太郎, 池村 聡, 塩本 喬平, 伊田 修陸, 中尾 侑貴, 安原 隆寛, 由布 竜矢, 加藤 剛, 泊 真二
    2023 年 72 巻 4 号 p. 633-636
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【目的】(検討①)当院における両側大腿骨近位部骨折症例の特徴を検討すること(検討②)傾向スコアマッチングを用いて片側例と両側例の患者背景を統一し,両側例の危険因子を検討すること.【対象】(検討①)当院で両側とも手術を行った67症例を対象とした.(検討②)傾向スコアマッチングで年齢・性別・BMIといった患者背景を統一し片側群50例,両側群50例で比較検討した.【結果】(検討①)初回骨折から対側骨折までの期間は中央値18カ月で1年以内が34%と最多であった.対側骨折時に骨粗鬆症の治療が行われていたのは17%と低かった.(検討②)対側骨折前の歩行レベルが両側骨折の有意なリスク因子であり(P=0.0009, 95%CI:2.26-17.29, Odds Ratio:6.2)車いすもしくは補助具使用下での歩行レベルは両側骨折のリスクが高いことが分かった.【結語】両側近位部骨折を予防するためには片側骨折後早期から歩行レベル回復を目的とした多面的アプローチによる治療が必要と考えられた.

  • ―施設再入所率および転院―
    西村 博行, 浦上 泰成
    2023 年 72 巻 4 号 p. 637-645
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    施設入所中に受傷し,回復期リハを行った大腿骨近位部骨折患者158名の施設再入所率と転院を検討した.同時に,自宅在住の大腿骨近位部骨折患者545名と比較した.元の施設に戻らなかった施設入所者30名のうち,26名(83.9%)は,元の施設より再入所率が高い施設に入所していた.施設入所した自宅在住者では,自宅再入所率(自宅復帰率)より高い施設への入所率は,86.7%であった.施設再入所率は,その施設が供給する介護量を示唆することから,元の施設より再入所率が高い施設への入所は,患者が必要とする介護量の増加が考えられた.今回,元の施設より再入所率が高い施設への入所率は,自宅と施設で変わらず,施設入所者の介護量増加は自宅在住者と同程度と考えられた.急性期病院および療養型病院への転院率も,施設入所者と自宅在住者で変わらず,施設入所者は,自宅在住者に比べ,医学的に不安定ではないことが示唆された.

  • 伊田 修陸, 池村 聡, 笹栗 慎太郎, 中尾 侑貴, 安原 隆寛, 由布 竜矢, 加藤 剛, 泊 真二
    2023 年 72 巻 4 号 p. 646-649
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【はじめに】非転位型大腿骨頚部骨折に対して骨接合術が適応になるが,術後,大腿骨壊死症(ONFH)などで骨頭圧潰が生じることがある.【対象】2015年~2021年の間,当院で大腿骨頚部骨折に対して骨接合術が施行されたのは131例であり,その中で術後3ヶ月以上フォローされた71例を対象とした.内訳は男性13例,女性58例で,手術時平均年齢は74.6歳(48~92歳)であった.【結果】10例(14%)に骨頭圧潰を生じ,ONFH 8例,大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折(SIF)2例であった.ONFHは5例(63%)で,SIFは2例(100%)ともに人工物置換術が施行されていた.【考察および結語】近年,大腿骨頚部骨折骨接合術後のSIF症例が報告されている.当院における検討でも圧潰症例10例中2例(20%)がSIFと考えられる症例であった.両疾患は画像上,多くの類似点を有しており鑑別が困難であるが,SIFは早期に診断できれば免荷など保存加療で軽快することも期待できるため,両疾患の鑑別が重要である.

  • 山下 陽輔, 高橋 洋平, 安部 幸雄, 藤澤 武慶, 武藤 正記, 片岡 秀雄
    2023 年 72 巻 4 号 p. 650-651
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【はじめに】ヒト化抗スクレロスチンモノクローナル抗体製剤であるロモソズマブは骨吸収抑制と骨形成促進の両方の作用を有し,骨折危険性の高い骨粗鬆症に対する治療薬として期待されている.【対象・方法】ビスフォスフォネートまたはデノスマブでの骨粗鬆症治療を1年以上行った104例のうち,年1回のDXAで腰椎,大腿骨,橈骨遠位いずれかの骨密度が前年より低下し,かついずれかの部位のYAMが70%未満,脆弱性骨折の既往があり,心血管系疾患の既往のない5例を対象とした.この5例にロモソズマブを開始,半年後の骨密度変化を調査した.【結果】治療後に75歳未満の2例では骨密度が上昇していたが,75歳以上の3例中2例では骨密度が低下していた.【考察】より高齢の患者や前治療薬がデノスマブであった場合は,ロモソズマブの効果が得られにくい可能性が示唆された.

  • 比屋根 涼太, 神谷 武志, 大久保 宏貴, 仲宗根 素子, 大中 敬子, 金城 政樹, 西田 康太郎
    2023 年 72 巻 4 号 p. 652-654
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    骨形成不全症(以下OI)の下腿変形に対する矯正骨切り術後に生じた骨折やcut-outについて調査した.2006年~2021年に当院で下腿矯正骨切り術後に骨折やcut-outを生じたOI患者4例8肢を対象とした.性別は男2例,女2例,初回手術時年齢は1-7歳(平均3歳7か月),Sillence分類Ⅰ型1例,Ⅱ型1例,Ⅲ型2例,使用機種は全例エンダー釘を用いた.骨折発生時の脛骨全長に対する髄内釘支持部の割合Nail length ratio(以下NLR)を調査した.骨折は4例5肢で発生し,骨折部位は全て髄内釘先端部であった.骨折時のNLR(%)はⅠ型が89.6,93.0,Ⅱ型が81.5,Ⅲ型が82.6,77.6,64.0,83.2であった.Cut-outはⅡ型,Ⅲ型に発生し,NLRは平均82.6(77.6~94.0)であった.OIに対する非伸長性髄内釘を用いた下腿矯正骨切り術において,髄内釘入れ替え術の指標としてNLRは有効とは言えなかった.

  • 川神 智, 村岡 邦秀, 廣田 高志, 田中 秀明, 山本 卓明
    2023 年 72 巻 4 号 p. 655-658
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    近位手根列切除術(proximal row carpectomy以下PRC)は変形性手関節症に対する治療法の一つであり,疼痛軽減と関節機能温存などを目的に手関節疾患のsalvage手術として行われる.手技が比較的容易であり術後の合併症も少ないことから,海外においては比較的多くの症例が報告されているが本邦での報告は少ない5).今回2020年から2021年の間に当院で近位手根列切除術を行った3例3手(男性1例,女性2例,平均年齢53.3歳)について報告する.全例SLAC(scapholunate advanced collapse),SNAC(scaphoid non union advanced collapse)のstage 2,平均経過観察期間は20か月であった.手術は全例舟状月状骨・三角骨を摘出し,有頭骨と橈骨月状骨窩で新たな関節を形成するPRCを行った.診療録を後ろ向きに調査した結果,単純X線評価では橈骨有頭骨関節の変形性変化は軽度認めたものの,全例で症状改善を認め特筆すべき合併症の出現はなかった.術後比較的早期に症状改善が認められ,また合併症も少ないことから,変形性手関節症に対してPRCは有用な術式である.

  • 松田 匡弘, 井浦 国生, 石原 康平, 富永 冬樹, 村上 剛史, 牛尾 哲郎, 矢野 良平
    2023 年 72 巻 4 号 p. 659-664
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【はじめに】小児の上腕骨顆上骨折後の内反肘に対する手術加療として,reverse V osteotomyによる矯正骨切り術を行ったので報告する.【症例提示】13歳男性.5歳時にベランダから転落し,上腕顆上骨折,橈尺骨骨幹部骨折と橈骨遠位端骨折を同時受傷した.近医にて保存的治療を行われ,骨癒合後に内反肘を認めていた.主訴は外観異常と,スローイング時の疼痛であった.内反変形は11°で,可動域は0-140°で,肘外側側副靭帯のゆるみを認めなかった.健側を目標とすると矯正角度が大きく,reverse V osteotomyによる矯正骨切りを選択した.術中の骨切り部安定性は良好で,tension band wiringにて固定した.術後1年時に,骨癒合し可動域は0-140°であった.外観上外側突出は認めず,JOA-JES score(内反肘)は術前75点から術後100点に改善していた.【考察とまとめ】本術式は術後に外側突出が少ないすぐれた術式と考えられた.

  • 山城 正一郎, 石原 昌人, 島袋 晃一, 白瀬 統星, 親川 知, 松田 英敏, 赤嶺 良幸, 仲宗根 哲, 伊藝 尚弘, 鷲崎 郁之, ...
    2023 年 72 巻 4 号 p. 665-670
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【症例1】97歳女性.大腿骨転子部骨折に対して骨接合術(InterTAN nail®)を行った.整復位は正面像で内方型,側面像で髄内型であり,近位骨片は回旋転位が残存していた.術後7週目に転倒によりカットアウトし,セメントステムを用いた人工股関節置換術を行った.【症例2】82歳女性.大腿骨転子部骨折に対して骨接合術を行った.整復位は正面像で解剖型,側面像で髄外型であったが,Tip apex distance(TAD)が25 mmであった.術後に近位骨片の回旋転位が進行し,カットアウトした.術後6ヵ月でセメントステムを用いた人工骨頭置換術を行った.【症例3】75歳男性.大腿骨頚基部骨折に対して骨接合術を行った.前額面剪断型の骨折であり,術後に回旋転位を生じカットアウトした.術後13ヵ月でセメントステムを用いた人工股関節置換術を行った.【考察】本症例のカットアウトの原因は,整復位,インプラントの選択,設置不良が原因と考えられた.

  • 宮崎 誠大, 薬師寺 俊剛, 小田 勇一郎, 後藤 裕之, 三浦 渓, 山口 祐介
    2023 年 72 巻 4 号 p. 671-673
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    後外側骨片を有する大腿骨転子部骨折は不安定型に分類され,スライディング量が大きいとされる.今回我々は後外側骨片を有する大腿骨転子部骨折5例に対し,後外側骨片を整復した後,追加整復材料であるOptimal Locking Solution Assist(以下略OLSA)を装着し,後外側骨片を把持することで至適位置からの髄内釘挿入が可能であった状態でエントリーポイントを作成した.不安定型大腿骨転子部骨折に対するOLSAの使用はその術後成績向上に有用であると考えられた.

  • 田中 雄基, 村岡 辰彦, 松尾 卓見, 松山 順太郎, 上野 宜功, 米盛 公治
    2023 年 72 巻 4 号 p. 674-676
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    近年増加傾向にある高齢者寛骨臼骨折に対し,当院で骨接合を行った症例の治療成績について報告する.2016年以降に手術加療を行い,6ヶ月以上経過を追うことのできた65歳以上の高齢者寛骨臼骨折26例を対象とした.平均年齢74.7歳,受傷機転として高エネルギー外傷23例,低エネルギー外傷3例であった.骨折型は両柱16例,前柱2例,前柱+後半横2例,後柱1例,後壁4例,前壁1例であった.受傷前ADLは独歩22例,杖歩行4例.術後6ヶ月のADLは独歩12例,杖11例,死亡率は3.8%,JOA scoreは平均80点,Matta clinical scoreは平均15.4点であった.手術待機期間は平均9.3日,手術時間は平均250分,出血量は平均1235 ml,THA置換率は7.4%であった.当院での高齢者寛骨臼骨折の骨接合の治療成績は92%の症例で歩行再獲得可能であり,死亡率は3.8%と短期的には良好な成績であった.

  • 橋口 元一, 田口 憲士, 土居 満, 江良 允, 太田 真悟, 池永 仁, 朝永 育, 尾﨑 誠
    2023 年 72 巻 4 号 p. 677-679
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    外傷に続発する肺塞栓症(PE)は致死的な合併症となりうる3).今回,受傷翌日の骨接合術中に肺塞栓症を発症した症例を経験したので報告する.症例は50代男性.バイク走行中に車と衝突し当院搬送.両側大腿骨骨幹部骨折を認め,受傷から2時間後に両側大腿骨に創外固定術を施行した.受傷から12時間後に両側大腿骨に対して骨接合術が行われた.術中,受傷から16時間後PaCo2とETCO2の乖離があり,PEが疑われた.造影CTを撮影したところ,肺動脈に陰影欠損あり,PEと診断した.挿管のまま全身管理を行い状態は改善した.通常,肺塞栓症は受傷から数日経過して発症するとされているが,本症例では受傷24時間以内に肺塞栓症を発症した.文献では,外傷患者の7%に受傷から24時間以内に凝固亢進を認めるという文献もある7).本症例では受傷早期に凝固亢進状態となったことで,受傷より24時間経過していないにもかかわらず,PEを発症した可能性が示唆された.

  • 髙島 佑輔, 緒方 宏臣, 山下 武士, 堀川 朝広, 平井 奉博, 今村 悠哉, 呉屋 亮太
    2023 年 72 巻 4 号 p. 680-682
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    大腿骨ステム周囲骨折術後の再骨折に対してSynthes社のLocking Attachment Plate(以下LAP)を使用した症例を経験したので報告する.症例は88歳女性,ADLは寝たきりで全介助であった.特に誘因なく右大腿部痛訴えが出現し,翌日に大腿部の皮下出血に施設職員が気づき当院へ救急搬送された.右大腿骨骨幹部骨折の診断でplate固定を施行したが,術後1週のX線画像検査にて再骨折,インプラントの逸脱を認めたため,LAPとwiringで再固定を施行した.現在まで疼痛や再骨折,インプラント異常なく経過している.LAPはステム周囲にもbicortical screwを挿入でき,固定性に優れていると考えられるが,症例によってplate設置,screw挿入部位が制限されることもある.LAPは大腿骨ステム周囲骨折に対する治療として有用である可能性がある.

  • 中島 龍馬, 木下 浩一, 瀬尾 哉, 松永 大樹, 土肥 憲一郎, 山本 卓明
    2023 年 72 巻 4 号 p. 683-685
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【目的】人工股関節全置換術(THA)術中に合併した大転子先端部骨折(Tip fracture)が術後臨床成績に与える影響を評価することである.【対象と方法】2016年3月から2020年1月に当科で単一術者が仰臥位でTHAを行った257例279股を対象とし,術後1週の単純CTでTip fractureを認めた骨折群7例7股と,認めなかった群より抽出した対照群21例21股に分け,患者データ,臨床評価項目,画像評価項目を両群間で比較検討した.【結果】患者データは両群間で有意差を認めなかった.Harris hip score(HHS)の機能項目は骨折群35.6±8.3点(27-47点),対照群43.3±5.8点(28-47点)と,骨折群で有意に低値であった.骨折率は全体で2.5%,Direct anterior approachで2.3%,Anterolateral supine approachで2.6%であった.最終経過観察時の偽関節率は71.4%であった.【結語】仰臥位THA術中に生じた大転子Tip fractureは術後短期のHHSの機能スコアを低下させる.

  • 譜久山 倫子, 仲宗根 哲, 翁長 正道, 伊藝 尚弘, 鷲﨑 郁之, 西田 康太郎
    2023 年 72 巻 4 号 p. 686-690
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【背景】がん骨転移に対するデノスマブ投与により非定型骨折を発症する可能性がある.【症例】60歳女性.25年前より乳がんに罹患し,5年前より多発骨転移に対しデノスマブを投与されていた.3年前に誘因なく両大腿部痛を自覚し,次第に増強,歩行困難となった.2年前に主科外来受診時,全身単純CT撮影で両側非定型大腿骨不全骨折を指摘され,当科紹介された.手術は,両側の髄内釘固定を行った.術翌日より全荷重にて歩行訓練を開始した.骨折部にはLIPUSで治療を行った.デノスマブは中止し半年間のロモソズマブ投与を行った.術後4週で疼痛は改善し,杖歩行も安定した.術後4か月で骨癒合が得られた.術後2年,独歩可能である.【結語】がん骨転移に対して骨関連事象(SRE)発現リスク低減目的にデノスマブが広く使用されるが,長期間投与の症例において大腿部痛の訴えがある場合は非定型骨折の可能性を視野に入れるべきである.

  • 緒方 亜紀, 竹内 直英, 永野 賢, 酒見 勇太, 田邉 剛
    2023 年 72 巻 4 号 p. 691-694
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【目的】足関節閉鎖性骨折に対して一時的創外固定を適応とすることが多い.創外固定術を用いて二期的手術を行った症例を経験したため報告する.【症例1】54歳男性.脚立から降りるときに左足関節を受傷し,左脛骨天蓋骨折の診断で翌日当科紹介受診.同日創外固定術を施行し,受傷10日で骨接合術を施行した.皮膚の血流障害を認めず経過良好であった.【症例2】29歳女性.階段からの転落により右足関節を受傷し,当科受診.右足関節脱臼骨折の診断で同日創外固定術を施行.受傷10日で骨接合術を施行し,皮膚トラブルを認めず経過良好であった.【考察】足関節周囲は血流障害を起こしやすく,骨折により腫脹や水疱形成などを起こしやすい.関節内骨折や脱臼骨折などでは創外固定を施行し,軟部組織の状態が改善してから二期的に内固定を行うことで,術創部の血流障害を軽減することができると考えられた.

  • 小林 孝巨, 秋山 隆行, 竹下 修平, 坂井 達弥, 馬渡 正明
    2023 年 72 巻 4 号 p. 695-697
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【背景】足関節捻挫の多くは前距腓靭帯(ATFL)に損傷が及ぶと報告されている.その中でも,距骨付着部の剥離骨折の治療戦略は結論づけられていない.【症例】身寄りのない独居で段差の多い家に住む88歳女性.右足関節を捻挫し歩行困難となり,同日当科受診した.身体・画像所見より距骨ATFL付着部の剥離骨折と診断した.保存的治療と手術的治療の情報提供を行い,後者を選択された.2本の1.45 mm suture anchorを用いてATFL付着部の剥離骨片を骨折部へ縫合固定した.後療法は,術後3週間副子固定して疼痛内全荷重,術後3週から8週はアンクルサポーター装着とした.術後6ヶ月の最終フォローアップ時には痛みなく歩行可能となり,CTでも骨癒合を認め,ストレスX線撮影でも足関節の不安定性を示さなかった.【結論】高齢者において距骨ATFL付着部の剥離骨折に対するsuture anchorを用いた手術を実施した一例を報告した.

  • 中山 宗郎, 古市 格, 村田 雅和, 小河 賢治, 梅木 雅史, 中尾 公勇, 岸川 浩一朗
    2023 年 72 巻 4 号 p. 698-700
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【はじめに】母指基節骨解放骨折後に遷延癒合となった3歳児に対して,プレート固定による観血的治療を行った1例を経験した.【症例】2歳10ヶ月女児.買い物カートから転落し受傷,左母指外側から背側にかけて5 cmの裂創があり,レントゲンで左母指基節骨骨折を認めた.同日に緊急で洗浄,経皮的鋼線刺入術を行った.術後9週間で骨癒合が得られず,プレート(Profyle Combo)を用いて内固定を行った.術中所見では骨癒合なく,骨欠損があり仮骨も見られなかった.骨端線を損傷しないようにプレートの選択と術中のスクリュー刺入方向に注意した.骨欠損部にβ-TCPを充填した.プレート固定から9ヶ月で骨癒合得られ抜釘.術後は問題なく経過している.【考察】一般的に小児の骨折は比較的骨癒合が得られやすいと考えられている.しかし本症例のように遷延癒合した場合は早めに適切な内固定への変更が重要で,その際は骨端線の損傷を避けるよう努めるべきである.

  • 西 亜紀, 﨑村 俊之, 安達 信二, 依田 周, 大宮 俊宜, 水光 正裕, 相良 学, 神﨑 衣里, 矢部 嘉浩
    2023 年 72 巻 4 号 p. 701-703
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【はじめに】比較的稀なPanner病の一例を経験したので報告する.【症例】7歳女児.明らかな外傷歴はなく,1ヶ月前から左肘痛が出現,徐々に増強したため当科受診.受診時左肘関節外側に限局した圧痛及び,屈曲110°,伸展-25°と可動域制限を認めた.単純X線像で上腕骨小頭骨端核に線状の骨透亮像を,またMRI T1強調像で上腕骨小頭骨端核に広がる低信号域及びT2強調像で内部に高信号域を伴うリング状の低信号域を認めた.Panner病と診断,保存的治療の方針とし,外固定及び投球動作等の運動制限を行った.疼痛及び可動域は徐々に改善がみられ,6ヶ月時点で圧痛はほぼ消失した.治療開始より1年で画像上での修復像を確認し運動制限を解除した.【考察】Panner病は,上腕骨小頭骨端核のびまん性無腐性骨壊死と考えられている比較的稀な病態である.本症例は保存的治療で良好な経過が得られた.

  • 松本 洋太, 小宮山 敬祐, 美浦 辰彦, 古谷 武大, 白﨑 圭伍, 久保 祐介, 園田 和彦, 藤村 謙次郎, 浜崎 晶彦, 原 俊彦
    2023 年 72 巻 4 号 p. 704-706
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    Complex elbow instabilityを呈する外傷の一つに経肘頭脱臼骨折がある.発生頻度は低く小児では特に稀である.小児の後方への経肘頭脱臼骨折の1例を経験したため報告する.9歳男児,転倒し右肘を打撲し受傷した.肘頭骨折,右鉤状突起骨折,右橈骨頭骨折及び肘関節の後方脱臼を認め,緊急手術を行った.鈎状突起はpull-outで固定し,肘頭はtension band wiringで内固定を行った.さらに尺骨近位の背側の軟部組織を縫合することで適合性は改善し肘関節は安定した.小児の経肘頭脱臼骨折はかなり稀であり,terrible triad injury, Monteggia骨折の要素も重複することがある.損傷形態を適切に把握し,分類に応じた骨折部の整復や軟部組織の修復が必要である.

  • 土居 雄太, 松下 優, 髙村 優希, 大森 治希, 清水 黎玖, 眞島 新, 馬場 覚, 平林 健一, 小宮 紀宏, 塚本 伸章, 林田 ...
    2023 年 72 巻 4 号 p. 707-709
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    [背景]上腕骨外側顆骨折は,小児肘周囲骨折の中で比較的頻度の高い骨折である2)が,肘関節脱臼を伴うものは稀である.当院で経験した2症例について報告する.[症例1]10歳男児.Song分類Stage 5の上腕骨外側顆骨折と内側側副靱帯損傷を認め,肘関節は後内側へ脱臼していた.同日鎮静下に脱臼整復を行い,受傷後2日目にTension Band Wiring(以下TBW)による骨接合術と内側側副靱帯の修復を施行した.最終フォロー時の可動域は肘屈曲140°,Mayo Elbow Perfomance Score(以下MEPS)はExcellentであった.[症例2]7歳男児.開放創を伴うSong分類Stage 4の外側顆骨折を認めた.内側上顆骨折の合併も認め,肘関節は後内側へ脱臼していた.同日TBWによる骨接合術を施行した.最終フォロー時の可動域は肘屈曲140°,MEPSはExcellentであった.[考察]当院で経験した2症例はTBWで固定性は良好であった.また内側損傷を伴い,外側顆骨折の固定後に外反ストレステストで不安定性が残存する場合は,内側支持機構の修復も検討すべきである.

  • 五所 真之輔, 岩崎 達也, 成田 靖, 東 努, 津村 弘
    2023 年 72 巻 4 号 p. 710-712
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    15歳男性,高校入学から陸上部に入部しトラック競技を始め,腕立て伏せ等の上肢筋力トレーニングを集中的に行っていたところ1ヶ月後に左肩痛を生じ,左上肢自動挙上困難となった.近医整形外科で肩関節周囲炎と診断され,鎮痛剤にて軽快した.受傷後4ヶ月後の学校健診で第1肋骨の骨腫瘍を疑われ当科紹介となった.疼痛や可動域制限はなく左第1肋骨の偽関節と思われる所見を認めた.上肢荷重動作や投球動作を禁止,また毎日10 kg以上のリュックを背負って登校するのも禁止したところ約1年で骨癒合が得られた.第1肋骨疲労骨折は比較的稀な骨折でスポーツに伴っての報告が散見される.オーバーヘッドスポーツに限らず,腕立て伏せでの発生も報告されている.特異的な所見に乏しく疼痛は肋骨部ではなく肩甲部,肩関節周囲に出現しやすいため見逃される可能性がある.保存療法にて予後良好な骨折であるが,外科手術が必要になる症例報告もあり,中高生スポーツ選手の肩甲部,肩関節周囲痛では,鑑別として注意が必要であると思われた.

  • 山本 慎太郎, 中村 憲明, 丸山 夏希, 石塚 光太郎, 都甲 渓, 正木 久美, 武藤 亮, 大城 朋之
    2023 年 72 巻 4 号 p. 713-717
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    近年,髄内釘の適応は拡大し,骨幹端骨折にも広がっている.それゆえ脛骨遠位部骨折の手術方法としてはプレート固定に加えて髄内釘固定も増加してきている.髄内釘は低侵襲かつ早期荷重が可能となるが,遠位部骨折の場合は固定力不足による偽関節や整復不良のリスクが報告されている.一方でプレート固定は良好な整復位を得られるが,軟部組織トラブルが問題となる場合が多く,また免荷を要する場合が多い.今回,当院で髄内釘にロープロファイルのプレートを併用し良好な成績を得た3例を経験したため報告する.症例はAO分類43Aが2例,43Bが1例であった.43Aの1例は脛腓間不安定性を認めたため術後6週免荷としたが,その他の2例は早期荷重が可能であり,全例で骨癒合が得られた.ロープロファイルのプレートを髄内釘と併用することで軟部組織トラブルを起こすことなく良好な整復と固定性が獲得でき,脛腓間不安定性がなければ早期荷重が可能となる.

  • 田中 稔一郎, 吉田 健治, 田中 康嗣, 松原 庸勝, 長野 絵里子, 中村 英智, 平岡 弘二
    2023 年 72 巻 4 号 p. 718-721
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    脛骨粗面裂離骨折は骨端線閉鎖前の若年者に好発し,特にスポーツ外傷として発生する.成人例は比較的稀とされるが,今回我々は高齢者に生じた脛骨粗面裂離骨折の一例を経験した.症例は84歳女性.左膝痛を主訴に当院に救急搬送.AO分類41A1.2の脛骨粗面裂離骨折を認め,搬送後5日目に手術を行った.骨折部をcancellous screw 2本で固定し,膝蓋腱にKrackow縫合を行いMcLaughlin法を改変した方法で補強した.術後3週より膝関節の可動域訓練と荷重訓練を開始した.術後5か月で,膝関節可動域は-5°~145°,独歩可能と経過は良好である.McLaughlin法は膝蓋骨上極と脛骨結節に鋼線を通し,膝蓋腱にかかる張力を減少させ補強する方法であるが.本症例ではcancellous screwとULTRABRAID 2号を使用しMcLaughlin法を改変した方法で補強を行い良好な結果が得られたので報告する.

  • 大森 治希, 塚本 伸章, 髙村 優希, 清水 黎玖, 土居 雄太, 眞島 新, 平林 健一, 松下 優, 馬場 覚, 小宮 紀宏, 林田 ...
    2023 年 72 巻 4 号 p. 722-725
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    脛骨骨折に対する膝関節軽度屈曲位での外側傍膝蓋進入による髄内釘の挿入は,整復位の保持が容易という点で有用性が示唆されるが一般的な方法ではない.自験例より本法の有用性を確認し,注意点を知ることを目的とした.対象症例は2019年1月~2022年5月の期間に脛骨遠位部骨折を受傷し本法を施行した3例(AO分類42-A1,43-C1,43-A3各1例)とした.手術では膝蓋骨外側の支帯を一部切離し膝蓋骨の内側への可動性を得て,膝蓋靭帯の外側から関節外に脛骨前上端へ到達し髄内釘を挿入した.術後2週時の膝関節可動域は屈曲90-105°で3例とも膝前面痛はなく,追加治療を要する合併症は認めなかった.自験例は全例良好な整復を得たが,3例中2例で髄内釘が外側設置となった.本法の手技には習熟を要し,特に挿入部が膝蓋骨により圧排されないよう留意すべきと考えた.

  • 倉員 太志, 水内 秀城, 屋良 卓郎, 石橋 正二郎, 高須 博士, 徳丸 達也, 上原 航
    2023 年 72 巻 4 号 p. 726-729
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【はじめに】Hoffa骨折(大腿骨内側顆部冠状骨折)に対してスクリュー単独固定した症例を経験した.【症例】19歳女性.自転車走行中にバスと接触,右下肢を轢かれ受傷した.当院搬送時,意識清明でバイタルサインは安定していた.右大腿から下腿にかけて20 cm×10 cmの皮膚欠損あり,内部で腓腹筋外側頭および大腿二頭筋外側頭の挫滅を認めたが明らかな神経血管損傷はなかった.身体所見・画像検査よりGustilo 3Bの大腿骨内側顆部冠状開放骨折と診断した.同日に創外固定,6日後にHeadless Compression Screw(HCS)を2本用いて内固定を行った.術後24週時点で良好な骨癒合を得ていた.【考察】大腿骨顆部冠状骨折は関節内骨折であり解剖学的整復と強固な内固定が必要である.スクリュー単独では固定力が不十分でありプレートの併用が有用との報告もあるが,本症例ではHCS単独で良好な固定性が得られた.

  • 兼田 慎太郎, 土持 兼信, 衛藤 凱, 木戸 麻理子, 江口 大介, 大森 裕己, 畑中 敬之, 河野 裕介, 岩崎 賢優, 土屋 邦喜
    2023 年 72 巻 4 号 p. 730-734
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【はじめに】腸腰筋膿瘍の患者を診察することは度々経験する.その鑑別に難渋し結果として腸腰筋血腫であった一例を経験したため報告する.【症例】82歳,男性.【主訴】腰背部-右下肢の疼痛,痺れ.【既往歴】白内障,大腸ポリープ.【臨床経過】3日前から腰痛と右下肢痛が出現し,疼痛の改善なく,体動困難となったため,前医に救急搬送された.MRIで腸腰筋膿瘍と診断され,当院に搬送された.炎症反応が高く,巨大な膿瘍であり外科的にドレナージを行う方針とした.腎機能が悪く来院当初は単純CTのみで評価した.放射線科医より血腫の可能性を否定できないとされた.患者,家族同意のもとで造影CTを施行したところ,血管外漏出を認め,腸腰筋血腫と診断した.本症例では既往に出血素因となる疾患はなく,抗凝固薬の内服もなかったため,血液内科に相談し易出血性の精査を依頼したところ後天性血友病の診断に至った.【結論】後天性血友病による腸腰筋血腫は稀であるが,整形外科医でも遭遇しうる疾患の一つであり,文献的な考察を加えて報告する.

  • 飯田 暁人, 濱中 秀昭, 黒木 修司, 比嘉 聖, 永井 琢哉, 黒木 智文, 日髙 三貴, 帖佐 悦男
    2023 年 72 巻 4 号 p. 735-738
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【はじめに】非常に稀な小児頚部傍脊椎領域原発悪性リンパ腫に対し,椎弓形成術を施行した症例を報告する.【症例】12歳,男児.1か月前より頚部痛あり,徐々に上肢麻痺(MMT3),巧緻運動障害が出現し紹介となった.MRIでC3-6の椎体から椎弓にかけての腫瘍性病変と脊髄腫大を認めた.受診翌日にC3-6の椎弓形成を行い,前駆B細胞性リンパ芽球性リンパ腫と診断された.小児科にて化学療法施行後,C3-6に対し陽子線を18 Gy照射した.現在術後4年で麻痺なく,寛解を維持している.最終観察時C2-7角は11度であった.陽子線照射にもかかわらず,脂肪髄化した椎体がリモデリングし,椎体高も1椎体平均4.15 mm成長した.【考察】小児に対する頚椎椎弓形成術や陽子線治療後の椎体成長に関する報告は少ない.小児腫瘍は予後が改善してきており,骨成長や変形に対しても長期に経過観察する必要がある.

  • 嶋田 博文, 八尋 雄平, 山元 拓哉, 坂本 光
    2023 年 72 巻 4 号 p. 739-742
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    78歳男性.2021年2月初めから両手指しびれ,徐々に両下肢脱力,ふらつき,立ち上がり困難自覚,頸部後屈で電撃痛が出現したため当科紹介.MRIにてC3/4~6/7で狭窄を認めたため,頚椎症性脊髄症と診断,頚椎椎弓形成術施行.その際硬膜損傷を認めたがpin holeであったため,損傷部に無縫合性人工硬膜を置き生理的組織接着剤を散布した.術後数日し右C7根症状出現,徐々に腹圧・排便困難自覚.MRIにて頸椎部脊髄ヘルニアを疑い,再手術施行.術中所見ではpin holeが拡大し,硬膜から脱出した脊髄ヘルニアを確認した.硬膜欠損部を丁寧に剥離しヘルニアを整復後人工硬膜使用,術中エコーにて整復を確認した.徐々にC7根症状や腹圧・排便困難は改善,再手術後2週目に杖歩行自立した.術後1ヵ月のMRIでは脊髄ヘルニアの再発は認めなかった.頸椎後方手術時の硬膜損傷は脊髄ヘルニア発生の危険因子であり,たとえ小さくともしっかりした修復が必要と考えられた.

  • 伊波 優輝, 野原 博和, 金城 忠克, 仲間 靖, 宮里 剛成, 新垣 寛, 知念 弘, 西田 康太郎
    2023 年 72 巻 4 号 p. 743-745
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    特発性脊髄硬膜外血腫(以下SSEH)は突然の頚背部痛,進行性麻痺を呈する稀な疾患で,神経学的予後因子や画像経過,離床計画に関して不明な点が多い.当院で保存療法にて早期軽快したSSEHを2例経験したので文献的考察を加え報告する.【症例1】52歳 男性.重量物運搬後より後頚部~左肩甲骨部に疼痛を自覚.座位で左上肢脱力があり,MRI(T2強調像)でC3-6硬膜管左背側に高信号域を認めた.入院後,頚椎カラー装着で安静臥床とし,ステロイド静脈内投与とリハビリテーションを行った.発症翌日のCTで血腫は縮小傾向,9日目に消退,17日目に退院となった.【症例2】67歳 男性.後頚部~左肩甲骨部に疼痛を自覚し,歩行で外来受診.MRI(T2強調像)でC2-3硬膜管左背側に高信号域を認めた.入院後,頚椎カラー装着で安静臥床とし,止血剤とステロイドを静脈内投与しリハビリテーションを行った.発症翌日のCTで血腫は縮小傾向で,8日目に消退,15日目に退院となった.

  • 稲富 健, 戸次 大史, 櫻庭 康司, 太田 昌成, 原 正光, 小原 伸夫, 寺田 和正, 宮原 寿明, 福士 純一
    2023 年 72 巻 4 号 p. 746-748
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【目的】薬物治療の進歩に伴い,関節リウマチ(以下RA)の手術適応は変化している.胸腰椎の固定術を必要とするRA患者の臨床像を検討した.【対象・方法】2001年-2020年に脊椎固定術を施行されたRA患者129例を対象とし,患者背景としてRA罹患歴,人工関節手術の既往,生物学的製剤(bDMARDs)使用歴,術前CRP値を評価し,X線で側弯・辷り・骨折の有無を検討した.【結果】手術時平均年齢は67歳,RA罹患歴18年,20%がbDMARDsを施行し,25%に人工関節置換術の既往があり,術前CRP値は0.63 mg/dLであった.病態として側弯,辷り,骨折がそれぞれ31,33,16%であった.前期(2001-2010年:n=46)と後期(2011-2020年:n=84)で比較すると,年齢やRA罹患歴,人工関節の既往は同等だが,後期では側弯とすべりに対する手術数が増加し,bDMARDs使用の増加を認めた.【結論】RAにおける胸腰椎固定術は増加しており,RA患者の求めるQOLが高くなっていることが示唆された.

  • 鮫島 央, 濱中 秀昭, 黒木 修司, 比嘉 聖, 永井 琢哉, 黒木 智文, 日髙 三貴, 帖佐 悦男
    2023 年 72 巻 4 号 p. 749-753
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    症例は85歳,男性.近医にて腰部脊柱管狭窄症,腰椎辷り症に対しL4/5の腰椎前外側椎体間固定術(以下,OLIF)を施行された.術直後に発熱と腰痛が出現し,画像検査にてインストゥルメント周囲感染と診断され,後方からの洗浄デブリードマンや固定延長を行うも感染コントロール不良なために術後6か月で当科紹介となった.当科にてケージ抜去・前方掻爬自家骨移植術・後方固定術を施行した.その後,起炎菌は同定できなかったが長期の抗生剤内服を併用したことで感染は沈静化し疼痛も消失しADLも改善した.脊椎インストゥルメンテーション手術後の感染の治療は感染制御と脊椎安定性の維持の2つの柱のバランスを踏まえて行う必要がある.しかし,エビデンスに基づいた治療が確立されていないのが現状である.脊椎インストゥルメント周囲感染について最近の知見を踏まえ当院での治療方針に関して検討したので報告する.

  • 佐久間 大輔, 河村 一郎, 冨永 博之, 徳本 寛人, 眞田 雅人, 小倉 拓馬, 谷口 昇, 山元 拓哉
    2023 年 72 巻 4 号 p. 754-757
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【はじめに】広範囲脊椎固定術の術後合併症としてDistal Junctional Failure(DJF)があるが,standardな治療は確立されていない.今回,症候群性側弯症術後においてDJFを来した症例に対し遠位固定端(LIV)を延長せず,前方固定の追加で対処し得た2症例を報告する.【症例】症例1:33歳の男性.神経線維腫症1型による側弯症に対し後方矯正固定術(T9-L3)および頂椎dystrophic change部の支柱骨移植施行.術後3年でL2/3偽関節に対し遠位スクリューの入れ替えと前方固定(椎体間cage併用)を施行.症例2:14歳の女性.Marfan症候群による側弯症に対し後方矯正固定術(T2-L3)施行.術後4年でL2/3偽関節に対し再手術施行.椎体スクリューも併用した.2症例とも再手術後2年で良好な骨癒合が得られている.【結論】本法はLIVを延長することなく対応可能であり,DJF治療の選択肢と考えられる.

  • 小川 宗一郎, 塩川 晃章, 田中 潤, 柴田 達也, 眞田 京一, 萩原 秀祐, 山本 卓明
    2023 年 72 巻 4 号 p. 758-760
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    軸椎歯突起後方偽腫瘍(Retro-odontoid pseudotumor:ROP)は,環軸関節の不安定性により生じると考えられているが,機序は未だに明らかではない.脊髄症状が出現した場合の手術方法に関しても一定の見解は得られていない.本研究の目的は,当院で経験したROP 5症例の治療成績を検討することである.2017年1月~2022年4月に上記診断に対して手術を行った5例.男性3例,女性2例,平均年齢76.6歳.術式,術前後の腫瘍の大きさ,ADI,合併症,JOAスコアの改善率を後ろ向きに調査した.固定併用群,除圧単独群ともにすべての患者のJOAスコアは改善した.腫瘍サイズは各群ともに1例ずつのみ縮小した.除圧群のうち1例で術後に前弓骨折が発生した.全例でJOAスコアの改善は認めたが不安定性のあるものに関しては固定術の併用が望ましいと思われる.除圧単独で行う場合は前弓骨折の可能性があるため固定の併用も考慮する必要があると思われる.

  • 野中 祥太朗, 田中 潤, 萩原 秀祐, 塩川 晃章, 柴田 達也, 眞田 京一, 山本 卓明
    2023 年 72 巻 4 号 p. 761-763
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    [はじめに]本邦では2014年にヒトトロンビン含有ゼラチン使用吸収性局所止血剤(以下:フロアブル止血剤)が承認され,脊椎手術においても術中止血が困難な症例に対する有効性の報告が散見される.今回,当院での頚椎椎弓形成術におけるフロアブル血剤の有効性を評価したので報告する.[対象と方法]2020年1月から2021年12月の2年間で頚椎椎弓形成術を施行した29例を対象に年齢,性別,手術時間,形成椎弓数,術中出血量,術後出血量(ドレーン総量),術後Hb値,輸血の有無を後ろ向きに評価した.[結果]29例中15例でフロアブル止血剤は使用されており,術中出血量はフロアブル止血剤使用群で統計学的有意差をもって多かったが,術後出血量(ドレーン総量),術後Hb値などに有意差は認めなかった.[結語]上記結果からもフロアブル止血剤は頚椎椎弓形成術において周術期の止血の一助になる可能性がある.

  • 柳澤 義和, 大賀 正義
    2023 年 72 巻 4 号 p. 764-765
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    目的 腰椎椎間板ヘルニアに対する椎間板内酵素注入療法の治療成績について検討すること.対象 2019年11月から椎間板内酵素注入療法を施行した38例,平均年齢52.3歳,男女比24:14であった.穿刺高位はL3/4:5例,L4/5:22例,L5/S:11例であった.平均手術時間,有効率,椎間板内酵素注入療法後の手術症例数などについて検討した.結果 手術時間は平均9.4分であった.また有効例は32例(84.2%)であった.椎間板内酵素注入療法後の手術例は6例(平均年齢40.3歳)で,このうち脊柱管内ヘルニアは5例,外側型は1例であった.考察 椎間板内酵素注入療法の有効率は84.2%であった.

  • 麻生 大貴, 柴田 達也, 田中 潤, 塩川 晃章, 眞田 京一, 萩原 秀祐, 山本 卓明
    2023 年 72 巻 4 号 p. 766-769
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【目的】腰部脊柱管狭窄症(LSS)に対する除圧術の腰痛改善について,JOABPEQを用いて検討した.【方法】2017年4月から2021年3月にLSSで除圧術を受け,術前と術後1年のVAS,JOABPEQが評価可能であった36例を対象とした.術後1年の腰痛VAS:2未満をG群(19例),2以上をP群(17例)とし,年齢,性別,BMI,糖尿病,透析,喫煙,手術(時間,出血量,除圧椎間数),画像(椎間板・終板変性,不安定性),術前後のVASとJOABPEQについて,2群間で比較検討を行いp<0.05を有意差ありとした.【結果】腰痛VAS(術前/術後)は,G群平均(4.9/0.3),P群平均(6.3/5.1)であった.術後下肢痛・痺れVASはG群で有意に低く,術後JOABPEQはG群で有意に高かった.術前VAS(腰痛,下肢痛・痺れ)は2群間で有意差を認めなかったが,術前JOABPEQの疼痛・機能・歩行・心理項目はG群で有意に高かった.【考察】腰痛改善群では,下肢痛・痺れもより改善しており,神経根性腰痛の関与が考えられた.

  • ―70歳代と80歳代症例の比較―
    片岡 秀雄, 安部 幸雄, 武藤 正記, 藤澤 武慶, 髙橋 洋平, 山下 陽輔
    2023 年 72 巻 4 号 p. 770-774
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    腰部脊柱管狭窄症に対する脊椎内視鏡下の除圧手術を施行した70歳代と80歳代症例を比較した.術後1年で調査が可能であった70歳代35症例(平均75.2歳,70~79歳,男性24例,女性11例),80歳代25症例(平均82.5歳,80~86歳,男性15例,女性10例)を対象とした.JOAスコア(腰痛症)は70歳代で術前15.6±0.8から術後1年で22.4±0.8,80歳代で術前12.1±1.3から術後1年で18.8±1.2となり両群とも有意に改善していた.JOAスコア改善率は70歳代50.5±5.3%,80歳代37.5±5.3%であり,80歳代で低かったが有意差はなかった.80歳代の48%(12/25例)が改善率40%以上であった.改善率の低下はあるが80歳以上の高齢者においても腰部脊柱管狭窄症に対する脊椎内視鏡手術は有用と考えられる.

  • 河野 通仁, 森下 雄一郎, 久保田 健介, 坂井 宏旭, 益田 宗彰, 林 哲生, 横田 和也, 伊藤田 慶, 畑 和宏, 大迫 浩平, ...
    2023 年 72 巻 4 号 p. 775-779
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【はじめに】頭蓋-上位頚椎不安定性を生じた化膿性破壊性頚椎炎に対して,良好な骨癒合と臨床成績が得られた2症例を経験したので報告する.【症例】症例1:85歳女性;切迫呼吸と高度四肢麻痺で緊急搬送された.画像検査にて咽後膿瘍による高度気管および食道の圧迫と上位頚椎骨破壊像を認めた.症例2:77歳男性;内服加療に抵抗性の頚部痛が主訴で搬送となった.画像検査にて咽後膿瘍と上位頚椎骨破壊像を認めた.【結果】2症例とも搬入当日にハローベスト外固定と抗生剤治療を開始した.症例1は,気管切開と切開排膿を施行し,呼吸状態は安定した.最終的に2症例ともハローベスト外固定と抗生剤にて感染鎮静化し,頭蓋-上位頚椎の安定化を認め,独歩退院となった.【考察】2症例とも初期診断と初期治療の遅れで咽後膿瘍と上位頚椎骨破壊像を認めた.MRIおよびCTによる積極的な画像診断が早期診断と早期治療に繋がると考えた.

  • 藤村 謙次郎, 小宮山 敬祐, 浜崎 晶彦, 美浦 辰彦, 園田 和彦, 久保 祐介, 白﨑 圭伍, 古谷 武大, 松本 洋太, 原 俊彦
    2023 年 72 巻 4 号 p. 780-783
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    症例は70歳,男性.1年前より腎細胞癌に対して泌尿器科で加療開始され,腫瘍は縮小傾向だった.シャッターを持ち上げた際に左上腕痛が出現.X線検査で左上腕骨遠位部病的骨折を認め当院紹介となった.既往には20年前の頚髄髄内腫瘍術後で右手の巧緻障害が残存していた.推定予後は年単位であること,現在の機能肢が左手であることから,根治的な治療を目指して腫瘍広範切除および腫瘍用人工肘関節置換術を行った.術後経過は良好で,術後8ヶ月時点で局所再発は認めず,X線検査でradiolucent line出現なく,可動域はfull,左手での日常生活動作に問題点を認めていない.Comprehensive Segmental Revision Systemは2021年8月より国内使用が可能となった.今回,計140 mmの長さをimplantで補填したが上腕骨遠位の再建方法として有用だった.

  • 當山 全哉, 當銘 保則, 大城 裕理, 津覇 雄一, 水田 康平, 和田 直樹, 西田 康太郎
    2023 年 72 巻 4 号 p. 784-787
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    症例は,24歳男性.右大腿遠位部に疼痛を認め,近医を受診した.画像検査で骨腫瘍を指摘され,当院へ紹介された.切開生検を行い,通常型骨肉腫と診断された.術前化学療法後に広範切除術および遊離自家骨液体窒素処理骨移植術を施行した.処理骨長は21.5 cmで,液体窒素処理後に体内へ還納した.術後は患肢を非荷重とし,術後1ヵ月で坐骨免荷装具を使用し歩行開始した.術後13ヵ月で装具内1/2荷重とし,術後26ヵ月で装具をはずして全荷重歩行を許可した.術後30ヵ月で再発や転移を認めず,原職の酪農業へ復帰した.20 cm以上の処理骨で液体窒素処理骨移植術を行えることが示された.

  • 佐藤 実砂, 河村 誠一, 瀬尾 健一, 藤井 陽生, 安部 大輔, 麻生 龍磨, 今澤 良精
    2023 年 72 巻 4 号 p. 788-790
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【はじめに】骨軟骨腫は長管骨骨幹端周囲の発生が多く,踵骨に発生するのは稀である.今回,踵骨隆起に発生した骨軟骨腫の治療を経験したので文献的考察を加え報告する.【症例】54歳女性.関節リウマチによる足趾変形の治療目的で紹介受診.足趾変形による前足部痛に加え,歩行時の左踵骨足底部痛を訴えた.足部単純X線で痛みの部位に一致して骨性隆起病変を認めた.足趾形成術と同時に踵骨の骨病変の摘出術を行った.摘出病変は被膜様組織に覆われた二峰性の骨性隆起であった.病理診断は骨軟骨腫の診断であった.摘出術後8か月経過するが,歩行時の足底部痛の再発は認めない.【考察】今回,発生部位が稀である踵骨の骨軟骨腫の1例を経験した.関節リウマチの足趾変形による前足部痛とは別に,踵骨足底部痛により歩行障害を呈しており,摘出術を実施した.踵骨隆起の内側隆起に生じる踵骨棘が鑑別に挙がるが,今回の骨軟骨腫は外側隆起に発生していた.

  • 松本 洋太, 久保 祐介, 古谷 武大, 白﨑 圭伍, 園田 和彦, 小宮山 敬祐, 藤村 謙次郎, 美浦 辰彦, 浜崎 晶彦, 原 俊彦
    2023 年 72 巻 4 号 p. 791-794
    発行日: 2023/09/25
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    重症下肢虚血(Critical limb ischemia; CLI)患者の皮膚潰瘍において,薬物治療や血管再建術で改善しない症例はしばしば下肢切断術の適応となる.切断高位の決定のための診断ツールは様々あるが,中でも皮膚灌流圧検査(Skin perfusion pressure measurement; SPP検査)は各部位ごとの評価を簡便・速やかに行うことが可能であり,動脈硬化が強い症例でも影響を受けづらく,広く用いられている.一般的に皮膚潰瘍が治癒する臨界値が30 mmHgと言われ,40 mmHg以上の部位を切断高位としている.しかしながら,SPP計測値は,患者の体動・血圧・検者・センサーの設置部位などにより影響を受けると言われている.SPP値の誤差は不適切な切断高位を導き,治療効果に悪影響をきたす可能性がある.今回我々は,既往疾患のない健常者を対象に,同一時間帯における5日間の下肢SPP値を計測し,その誤差を検証した.

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