1)乳児, 幼児の生活の相異点(1)生活時間 保育所における一日の生活の基本的流れは, 乳児, 幼児ともに, 自由あそび-課題保育-昼食-着がえ-午睡-着がえ-おやつ-自由あそびであるが, 乳児の場合, 随時, 排泄の時間が組み入れられ, 同一時間における異種の行為の併存が著しい。また, 乳児の場合, 幼児に比べて一日の生活時間における基本的生活(食事, 午睡, 着がえ等)の時間比が高いが, 幼児の場合は, 乳児に比べ課題保育の時間比が高くなる。行為の併存をパターン化してみた場合, その出現回数の多いものは, 乳児の場合, 着がえと並行して行なわれるものであるのに比べ, 幼児は, 食事と並行して行なわれるものである。(2)活動の質的相異点 乳児の場合, 基本的生活の自立に保育の比重がおかれており, 保育者と個別的な対応を必要とする。各行為の継続時間は幼児に比べて短かく, (午睡を除く)個人の発達差があらわれ易い。床面と直接接触する行為が多い, 幼児の場合は, 基本的生活の自立は出来ており, 子ども集団を基礎としにた活動(生活運営部面での当番活動, 課題保育, 自由あそび等)に重点がおかれる。保育者との対応も集団を基礎とし, 言語を介したものとなり, 1 : 1接触対応はうすれる。各行為は継続性を持ち, 課題保育, 自由あそびにおける質的分化がみられる。机, いすを制作のための条件として用いるようになる。2)行為と場の対応における問題点 乳児においても幼児においても, 保育室に多くの生活機能がとりこまれているために, 特に食事から午睡への移行時においては, 同時並行的におこる異種の行為を場が受けとめきれていない。乳児においては, 廊下, テラス等を使用し, また, 幼児においては, 遊戯室, ホール等を使用することによって, 一つの機能の分離を行い, その混乱を整理している現状である。この問題の検討については, 食事から午睡への移行期における行為と場の対応の詳細分析とあわせて, 面積の検討が必要である。3)空間の機能分離に関する考察 1)で明らかなように, 乳児の場合, 基本的生活の指導が充実出来, 活動の多様性を受けとめられる空間が必要とされる。よって, 空間の機能分離に関しては, 分離を明確に打ち出すことよりも, 流動的な活動を支えうる条件を備えた, 一室空間の方向が望まれるのではないだろうか。また, 幼児の場合は, 基本的生活の自立が出来ており, 課題保育, 自由あそびの多様化がみられることから, むしろ, 活動の質的分化に対応した空間のあり方が追求されねばならない。乳児と幼児のための空間は, 以上のようにその求められるべき方向性を異にし, 分離されねばならないと考える。次報では, 幼児を対象とし, さらに問題のほり下げを行う予定である。
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