濃尾平野における面的広がりを考慮した地盤動特性を検討し, 工学的利用を図る事を目的に微動観測を段階的に実施してきた。本報ではそれら既報を基本に, 岩盤に至る堆積深さが1000mをはるかに越える地点, 数百mの地点そしてほぼ0mの地点といった顕著に異なる三サイトで同時に, 一週間にわたり長周期微動の同時三成分観測を実施した。同一気象状態のもとで, 異なる地下構造状態の三サイトで得られた長周期微動特性を, たい積深さ・台風通過に伴う気象(風速, 気圧)の変化・外洋波浪特性そして卓越振動数に関して統計学的観点からx-R管理図を用いて比較・検討を実施した。得られた結果を以下に要約する。1)水平動成分の卓越振動数は, 堆積深さが数百mのサイトで約0.30Hz, 1000mをはるかに越えるサイトで約0.20Hzを示し, 基盤に至るたい積深さに対応している。また, その値は天候が静穏な時と台風時とで大きく変化しない。2)台風通過に伴う気圧・風速の急変下で, あるいは波浪の影響下で, たい積深さがほぼ0mに等しいサイトと数百mのサイトの第二ピークの卓越周期は, 外洋波浪の1/3有義波の周期の1/2に近く, 定常波説との関連性を暗示している。3)フーリエ振幅は, 観測サイトの地下構造に関係せずに, 気圧の低下や風速の増大に伴って変化を示す。4)堆積層が存在するサイトでは, 堆積層が一種のフィルター作用を果した結果がスペクトル特性に表われているものと考えられる。5)たい積層が存在するサイトの卓越振動数は, 若干の変動があるものの, 台風そのものの影響は小さく, 比較的安定である。この事は, 長周期微動を工学的に利用する際の有利な資料と考えられる。なお, 長周期微動を対象とした伝播性の検討, 或は, 平野周縁部を対象として, 長周期微動・地盤そして外乱の関係を明確にするため卓越周期をどう評価するかという検討については, 各々別報を予定している。
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