以上の分析結果をまとめると次の如くである。1) 都市化と住宅供給との間には一定の法則性がある。都市化と住宅供給パターンの基本モデルは, 全国県別・市郡別レベルではかなり有効な一般法則として利用でき, これによって都市化と住宅供給構造の対応を検討することができる。2) 新規住宅供給のうち「新築」は, 都市化の進行と1次直線的比例関係の下に供給量が決定される現象があるが, ある都市化段階に達した第I地域においては, その供給が極度に制限される。一方, 「分譲」についての供給も都市化と1次直線的比例関係にあるが, 都市化に対する住宅供給寄与度合は, 「新築」に較べより高い。また同様に, ある都市化段階に達した第I地域では, 一次関係式をはなれて「新築」の場合とは逆に上昇する。3) 一方, 「新築」+「分譲」の新規住宅供給では, 両者は相補関係にあり, ある都市化段階を過ぎても都市化と1次直線的比例関係を保つ。4) 「建て替え」建設活動は, 都市化という社会現象よりもむしろ地域の住宅ストックに規定される面が強く, 地域的事情に規定されながらストックに対し一定の発生比率を示す。全国的地域区分では東日本と西日本の区分が可能であり, 東日本の発生比率がより高い。5) 世帯増加率でみる都市化と住宅供給構造の対応関係だけではなく, DID世帯比率を含めた2軸性の検討が必要である。そのために世帯増加率の上限値に折返し地点を設定した。その結果, 折返し地点までは都市化の進行とともに「分譲」供給の意味は大きくなり, 反面「新築」「建て替え」の意味が減少する関係にあるが, さらにそれを超えて都市化段階が進行すると「建て替え」が再び増加してくることが確認された。以上の諸点は, 住宅需給構造を検討するに際し, 基本的な概念の整理に意味をもつものと考えられる。
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