以上の諸結果から, ここで本編のまとめとしていくつかの特質的事項について整理する。1)構造度, 構造型, 構造類型の各側面から, 日本の沿岸漁業集落の多様性が実証された。2)一次分類で見ると, 定着型集落・29%, 展開型集落・50%, 変動型集落・21%と大別され, 前編の仮説の3類型の妥当性が, 類型分布的にも実証された。3)いくつかの特徴的類型についてみると, イ)構造度80%以上のものが4例抽出され, 日本の沿岸漁業集落のひとつの典型を示しており, 漁業自律型と呼ぶべきものであろう。ロ)きわめて古い段階の集落形成を残すと思われる集落定着型が, 瀬戸内海と島根半島に3例抽出されたことは興味深い(これについては, 続編でさらに触れる)。ハ)ひとつの帰納的結論として, 構造度25%以下(3-B・漁業衰微型のもの)は, "漁業集落ではない", という判断を下し得るものと思われる。引き続き, 続編, その3において, こうした漁業集落のフィジカルな環境構成とその構造類型的性格について主として環境構成論, 環境形成論として詳しく展開することにしたい。
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