以上から, 児童の公園利用の遊び生活について次の点が指摘できる。公園量の少ない地区においては, 公園量が少ないことによって自宅内の遊び場の重要性が高く, 児童各自の身近な空間条件によって利用率は異なるあらわれ方を示す。遊びを展開する場を身近に持たない(遊べる庭の無い, 子供部屋の無い)児童の利用率が, 遊びを展開する場を身近に持つ児童の利用率より高くなる。また, 公園利用の遊び生活の原点と考えられる公園利用欲求については, 地区全体の公園量が少ないことから, 願望的に欲求率が高くなっており, この場合, 公園で遊びたいという欲求が容易に満足されない状況といえる。一方, 公園量の多い地区では, 公園量が多いことによって自宅内の遊び場の重要性は相対的に低く, 児童各自の身近な空間条件によって利用率が大きく異なることはない。むしろ, 各因子によらず, 全体として, 児童密度の低い地区で高い利用率となり, 児童密度の高い地区で低い利用率となっている。また, 公園利用欲求は, 利用率に極めて近い値としてあらわれており, 公園量が多いことにより, 利用欲求が利用行為に結びつき易く, 欲求が満足されている状況にあることが指摘できる。これを, 児童密度の高い地区についてまとめる。公園量の多い地区と, 公園量が少ない地区とを比較すると, 公園量の多い地区では, 利用欲求自体が低い値となっており, 利用率はその欲求をうけて全体に低い値となっている。これに対し, 公園量の少ない地区では, 利用欲求は高く, 行動力が比較的あると考えられる高年齢層の男児や, 遊びを展開する場を身近に持たず, 自宅外に遊び場を求めざるを得ない児童の利用率は高くなってはいるが, 行動力が比較的小さいと考えられる女児及び低年齢層の男児や, 遊びを展開する場を身近に持ち, 自宅外に遊び場を求めなくとも遊び場を確保しうる児童においては利用率が低いなど, 児童密度の高い地区での公園利用の遊び生活が, 高密であることによる影響をうけて低い利用率となっていると考えられる傾向が, それぞれの地区ごとにあらわれていることが指摘される。以上のことが, 今回の調査研究において指摘されることであるが, このことは次のような研究課題を提起する。(1)高密度居住地においては, 路地・空地などが減少していると思われ, 高密度地区における戸外遊びの場は, 低密度地区に比較して, 空間量自体が少なく, その中で公園の占める割合は高くなり, 公園の利用率も高くなると思われるものが, 逆に低い利用率となっており, 特に, 公園量の多い地区で, 遊びを展開する場を身近に持たない児童の欲求率, 利用率が低いことから, その児童の遊び生活と遊び場がどのように考えられるのか, また用意しうるのかを明らかにすること。(2)高密度居住地においては, 遊び生活の形態(交友関係・遊び場の選択など)自体が, 公園利用欲求に結びつかない条件を持っているのか否かを地区の空間条件との関連で明らかにすること。以上をもって, 本報告のまとめとするが, 本報告は, 仙台市内の4地区における事例的性格を持つことをまぬがれない。本報告での傾向的特色の指摘は, 今後の研究課題を明らかにすると共に, 数多くの地区における検証を行なうことによって明確なものとなるものであり, 次報以降, ここに指摘した今後の研究課題について, 更に研究をすすめるものである。
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