本研究では幼児の一日の生活の流れの中で最も行為の重複が現われている食事から午睡に焦点を絞り, 4才児の食事・きがえ・午睡と保育空間との対応における現状の問題を明らかにしながら, 同時に並行しておこなわれるそれぞれの行為に対応する保育空間のあり方を探ってきた。食事・きがえ・午睡における空間分離のしかたをパターン化すると次のようになる。パターンA [table]パターンB[table]パターンC[table]パターンAのように食事と午睡が同一時間に同一の場を用いて行なわれる場合, 次のような問題が生じる。(1)生活行為のちがいから使われる"もの"が異なりさらに場の使い方が異なるので, 食事終了のたびに机・イスを移動するという労働を, 幼児及び保育者は強いられる。(2)集団のペースから遅れた幼児は, 机・イスごと移動して午睡準備の中で食事を続けなければならない。パターンBの場合, きがえは床を使用するので, 食事のための通路で行なえる。そのため, 食事ときがえは同一時間に同一の場を使ってもパターンAのような問題は生じない。パターンCの場合, きがえと午睡をKdのように同一時間に同一の場を使用すると, きがえは布団の上で行なわなければならないという問題が生じる。しかし, きがえは広い意味では午睡準備の段階であるので, Kgのように同一の空間で行なわれることが望ましい。また, パターンCのように厨房と直結した食事室を分離させることには, 次のような利点があげられる。(1)幼児個人のペースで食事が行なえる。(2)早く食べ終えた幼児は, 長時間待たされることなく次の行為に移行できる。(3)給食の運搬がなくなり, それにより危険性が解消される。(4)保育者のもつ保育理念, 方法を基にして, 幼児ひとりひとりの健康状態・精神状態などを総合的にみた幅広い指導が行なえる。(質問調査結果より)以上のことから, 食事と午睡とは, 場を分離することでこれらが時間的に重複しても, お互いを圧迫することなしに同時点で行なえることが明らかとなり, 食事と午睡との場の分離が有効であることが示された。さらに, 食事に対しては, 厨房と直結した食事室として空間分離することが有効であることが明らかとなった。それぞれの行為に対して, それが充分に行なえる保育空間の面積を, これらの資料をもとに再検討される必要があると考える。また, 保育所における幼児の生活行為に対応した保育空間を与えることの有効性は, さらに教育的・心理的・衛生的側面からも細かい検討が必要であろう。これらのことについての詳細な分析は, 次報で検討を重ねていくことにしたい。
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