以上示したように, 空間相互作用モデル線形双対性を持っていることを利用し, 潜在需要量が制約されていて顕在需要量は制約されていないことを仮定すれば, 供給量最小化問題, 移動距離最小化問題, その組合せである総費用最小化問題が線形計画問題として解決できる。また, その際に供給量の上限・下限を設定することが可能である。また, シャドウプライスの概念によってどの供給点が需要量最大化にどれだけ貢献しているかを数量化できる。本論文で示したモデルにおいては, 施設に対する需要は均質であると仮定しているが, 医療需要のように本来的に階層性を持っているような場合には, それぞれの段階に応じて減衰パラメーターを設定する多段階モデルへと展開することが考えられる。また, 供給量最小化問題において示したように, m>nの場合には, どの需要点も完全に平等な供給水準をもつ施設分布は存在しない。この場合, どこまで供給水準の分散を認める(つまり, 地域間格差を認める)べきかもこれからの検討課題である。つぎに, ここに提示したモデルを逆に用いて, 潜在供給量が与えられたときに, 需要水準を制約として総需要量を最大化するような需要量の分布を求めることができる。この場合は, 需要量の上限(=人口密度の上限)を容易に制約条件に追加できる。この方法は, 職場の分布から人口の分布を推定するような都市モデルへ応用することができよう。これらの課題に留意しながら, 商業施設計画・医療施設計画等の実例を用いて応用面の問題を今後さらに明らかにして行きたい。なお, 線形計画法そのものについての説明, 単体法の計算手順については良書が多数出版されており, 本論文においては触れていない。本モデルの実施への応用にあたってはこれらの専門書を御参照いただきたい。
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