本研究で得られた結果をまとめると以下のようになる。(1)市街化区域における宅地以外の用途の面積に関し, 一世帯当りの原単位と用途別面積率に関する仮定をおくと, 一世帯当り宅地面積は, 世帯密度の逆数の一次式であらわされる。昭和53年のデータを用いた計測の結果では, 予測式のフィットは良好であり, これらの仮定は有力な仮定であると考えられる。また, この結果から, 予測対象年度の市街化区域内の世帯数と市街化区域面積から一世帯当り宅地面積を予測する手法が得られる。(2)(1)の仮定に加え, 市街化区域世帯率, 市街化区域面積率に関するモデル式を考えると, 予測の対象範囲を行政区域全域に拡張することができ, 同時に誤差の構造も明示的に記述することができる。また, 得られた結果により, 現実のデータの変動はかなり良く表現される。さらに, 誤差に関する分析より, 予測の範囲は, ある程度世帯密度の大きい区市とすべきことがわかった。(3)(2)の結果は, 昭和43, 48年のデータにも, 良くフィットし, 通常の宅地需要予測の場合の予測期間における使用に十分耐えるものと考えられる。また, より簡便な予測手法としては, データから直接, 多項式回帰によって予測式を求める方法が考えられ, 予測に用いるべき範囲内では, この方法は十分な実用性を持つことがわかった。(4)以上により, 宅地需要予測の手順の中における「ストックベースの総宅地面積の予測手法として, 一応のものが得られたと考えられる。もちろん, 宅地に関する種々の計画や施策の立案は, 「総宅地面積の予測」のみによって行えるものではなく, よりきめこまかな宅地供給計画の立案のためには, 一世帯当り宅地面積の構成要素である。「一戸長屋建の戸当り敷地面積」「共同住宅の戸当り敷地面積」「共同住宅率」等のより細かいレベルの宅地関連原単位の予測手法が開発されることが必要であり, 本研究の結果をもとにこれらの原単位の予測手法を得ることを今後の課題としたい。なお, 本研究をまとめるにあたり, 建設省建築研究所第6研究部研究員桐越信氏から貴重な助言をいただいた。また, 小沼正敏氏にはデータ処理作業の面で多大の尽力をいただいた。ここに記して深謝いたします。
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