Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
30 巻, 3 号
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  • 田中 敬一
    1969 年 30 巻 3 号 p. 233-246
    発行日: 1969年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1. 円口類の水晶体線維は側稜に“原形質突起”も“原形質刺状体”ももたない. したがって相隣る2つの水晶体線維の境界は直線状である.
    2. 軟骨魚類では水晶体線維は原形質刺状体をもち, これで隣接線維と固く噛み合っている. そしてその嵌合方式は非常に不規則である. 原形質突起は具えていない.
    3. 硬骨魚類の水晶体線維は原形質突起も原形質刺状体も具備しており, これで隣りの線維としっかり結びついている. 突起と剌状体はいずれも美事に規則的な排列を取っており, 剌状体の嵌合様式はウシのそれと同一である.
    4. 従来細隙灯顕微鏡と偏光顕微鏡により, 水晶体内部に層状構造が観察されて来た. しかし今回の研究では, このような層状構造は形態学的に全く認められなかった. すなわち水晶体線維の形態または原形質突起, 剌状体の形は水晶体表面から中心に向って漸進的に変化しており, 突然著しい変化が現われるような断層的部位は存在しなかった.
    5. 走査電顕用の標本作成にさいし, ひとつの試みを行なった. 一般に材料は空気乾燥時に強く収縮し人工産物をつくりやすいので, 今回はアルコール列にて脱水した材料を空気乾燥せずグリセリンに浸漬した. このように処置した水晶体は真空中でも収縮しがたいので, 良い結果を得ることができた.
  • 高草木 一郎
    1969 年 30 巻 3 号 p. 247-282
    発行日: 1969年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    正常者および春季カタル患者 (未治療, ハイドロコーチゾンで治療したものを含む) につき, その上眼板部の結膜を電子顕微鏡により観察した.
    1. 結膜上皮は2∼3層の円柱上皮細胞からなり, 少数の杯細胞が混在する. 上皮の表面には陰窩あるいは細胞内小管ともいうべき深い陥凹がある.
    2. 上皮細胞のゴルジ装置の層板中には, 種々の電子密度の小さな分泌顆粒を認め, その顆粒は陰窩と小管の周囲に集まる. 顆粒内容の放出は顆粒の限界膜と形質膜の限界膜とが融合した部分に生ずる小さな開口部を通して行なわれる.
    3. 上皮細胞の細胞内基質に豊富に見られる微細線維は未治療の春季カタル細胞内基質には認められず, ハイドロコーチゾンで治療したものでは再び出現して来る.
    4. 結膜固有層は血管と有髄および無髄神経線維に富む結合組織であるが, 春季カタルの固有層には間質に微細線維様の物質が大きな塊をなして出現し, あるいは膠原線維の間に浸潤する. これらの所見は光学顕微鏡で春季カタルに特有な病変として見られる硝子様変性に相当するものと思われる. 同様な微細線維様物質はさらに上皮の拡大した細胞間隙にも蓄積している.
    5. 固有層には種々の間葉性の遊走細胞があり, あるものは上皮層内に浸潤している. 組織球, 好中球, 形質細胞, 肥満細胞などが認められた.
    6. 形質細胞のあるものでは, その粗面小胞体の中に小球 (ラッセル小体) や結晶状物質を含む. 肥満細胞の顆粒構造は非常に変化に富む. すなわち指紋状構造, 均質無構造, 微細顆粒状構造, 微細網状構造などさまざまである. 微細顆粒状, 微細網状の顆粒はヒスタミンを放出する準備段階を示しているものと思われる. 形質細胞と肥満細胞に見られるこれらの所見は結膜固有層に見られるアレルギー性炎症を示唆するものである.
  • 難波 久佳, 藤田 尚男
    1969 年 30 巻 3 号 p. 283-293
    発行日: 1969年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    正常マウス, ビタミンDと塩化カルシウム水溶液を注射したマウス, 塩化カルシウム水溶液のみを注射したマウスの甲状腺旁濾胞細胞を電子顕微鏡で観察した.
    1. ビタミンD (1日4万単位) と塩化カルシウム (1日3mg) を2日間または7日間注射した動物においては, 直径200mμ位の限界膜をかぶった黒色顆粒数が減少し, ゴルジ野は大きくなり, 小胞 (vesicles) が著しく増加し, 顆粒形成像がよく認められた. これは顆粒形成機能の亢進を思わせる.
    2. 塩化カルシウムのみを15日間または75日間毎日くりかえして注射し, 毎日一過性の高カルシウム血症を起こしても, 旁濾胞細胞には明らかな変化は認められなかった. このことは旁濾胞細胞は反応しても すぐに元にもどることを暗示する.
    3. ビタミンDと塩化カルシウム投与による長期間持続性の血中カルシウム上昇に反応した旁濾胞細胞は, サイロカルシトニン (thyrocalcitonin) の生産に密接な関係があると考えられる. また顆粒は 一般の蛋白分泌腺のそれと同じように, 粗面小胞体-ゴルジ系でつくられると考えられる.
  • 黒住 一昌, 黒住 歌子, 鈴木 啓之
    1969 年 30 巻 3 号 p. 295-313
    発行日: 1969年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    表皮の触覚受容器であるメルケル細胞と, それに接続する神経線維を白マウス, 黒マウス, イヌおよびヒト胎児について電子顕微鏡により観察した.
    1. メルケル細胞は表皮の基底層または有棘層深部に位置し, レンズ形または楕円形をなして, その長軸は表皮と真皮の境界面に対し垂直な場合と平行な場合とがある. 核はつねに深い切れこみをもち, 核の長軸は細胞の長軸と平行に位置する.
    2. メルケル細胞は直径700-1000Åの多数の特殊顆粒をふくみ, その電子密度ははなはだ変異に富み, 若干の顆粒は空虚な小胞のようにみえる. この特殊顆粒はおそらくゴルジ装置で産生されるもので, 神経終末に面する細胞質領域に強く集積している.
    3. メルケル細胞の特殊顆粒はおそらく刺激伝達物質をふくんでおり, この物質は透出分泌の機序によって細胞外へ放出され, 神経終末を刺激して, 触覚の興奮を惹起するものと思われる.
    4. イヌの鼻の多量に色素を有する表皮においては, メルケル細胞もメラニン顆粒をふくんでいる. このメラニン顆粒は表皮のケラチン産生細胞 (通常の上皮細胞) がメラニン顆粒をとりこむと同様に, メルケル細胞がとりこんだものであろう.
    5. メルケル細胞はケラチン産生細胞と結合する面にデスモゾームを備えているが, 神経線維と接する面にはそれをもたない. メルケル細胞の表面におけるデスモゾームの微細構造は, ケラチン産生細胞相互間に出現するものと異らない. このデスモゾームの存在はメルケル細胞が求心神経線維の分布にもとづいて, 未分化な表皮基底層細胞から分化して来ることを示唆している
    6. メルケル細胞に接続する神経線維とその終末は多数の糸粒体をふくんでいる. それらはメルケル細胞と緊密な接触をもつにもかかわらず, 両者の間にはデスモゾームのような形質膜の特殊化はおこらない. 求心性終末の中にみられる少数のシナプス小胞は, おそらく上皮細胞から感覚細胞への分化の誘導に関係するものであろう.
  • 佐野 豊, 吉川 検, 小西 理雄, 越智 淳三
    1969 年 30 巻 3 号 p. 315-320
    発行日: 1969年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    イヌの耳および翼口蓋神経節ならびに対照として上頸神経節が, FALCK-HILLARP 法により螢光顕微鏡で観察された.
    モノアミン特有の黄緑色螢光をもつ神経細胞および終末は, 上頸神経節中には多数観察されたが, 耳および翼口蓋神経節中では全く認められなかった. しかし, 後二者の神経細胞の多くは, 細胞体にレセルピン投与, 頸・上胸部交感神経節摘除によっても消失しない黄褐色の自家螢光性顆粒を含有していた. また, ナイアラマイドを投与しても, モノアミンの出現をみなかった.
    以上のことから耳および翼口蓋神経節中には, アドレナリン作動性神経細胞はないと考えられる. また, 交感神経幹から上行する交感神経は, これらの神経節ではノイロンを交換しないものと結論できる.
  • 藤田 恒夫, 徳永 純一, 井上 一
    1969 年 30 巻 3 号 p. 321-326
    発行日: 1969年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    酢酸アミルの1滴をつけたセルロイド板 (スンプ) を皮膚に押しつけ, 得られた印象 (レプリカ) にカーボンと金を蒸着して走査電子鏡で観察した. この簡単な方法で皮膚表面の細胞および細胞下のオーダーの構造が明瞭に観察できることが示され, 皮膚科学やそのほかの研究分野への応用の可能性が示唆された.
  • 1969 年 30 巻 3 号 p. 327-328
    発行日: 1969年
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
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