この研究ではおもに胃癌の開腹手術中に摘出された脾臓を用いて, ヒト脾臓の神経支配を検索した. すなわち螢光組織化学的方法 (52症例), 酵素組織化学的方法 (27症例) を用いて, それぞれアドレナリン作動性神経線維, コリン作動性神経線維を検索した.
ヒト脾臓内のアドレナリン作動性神経線維は, 脾柱動脈の外膜と中膜の境界および中膜に, 中心動脈, 筆毛動脈の外膜と中膜の境界にまで認められたが, 脾柱および赤脾髄の静脈と細静脈, 莢毛細管, 血管を含まない脾柱, 白脾髄, 赤脾髄および脾被膜には認められなかった. 脾柱内の脾柱動脈の周囲に, アドレナリン作動性神経線維を少し含んでいる神経と全く含んでいない神経の存在を認めた. また脾柱内の脾柱動脈の周囲に, コリン作動性神経線維の存在を認めた.
以上の結果, ヒト脾臓はアドレナリン作動性神経線維およびコリン作動性神経線維の両方の支配をうけていることが組織化学的に初めて明らかにされた.
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