Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
42 巻, 2 号
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  • 瀬戸口 孝夫, 佐藤 幸憲, 後藤 嘉樹
    1979 年 42 巻 2 号 p. 95-102
    発行日: 1979年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    老齢マウスの副腎皮質で, 種々の形をした平行層板構造物が網状層の細胞にしばしば出現する. これは約25nmの間隔で規則正しく密に積み重なった, 幅約20nmの電子密度の高い板から成る. 各板は高電子密度の物質を囲む2枚の単位膜で, 内部に若干の明るい間隙を残している. これらの2枚1組の膜は, 通常両端は円形の小嚢に終るが, ときには周囲の滑面小胞体の小管に続く. 小嚢が数列をなして, 層板の一部とともに細胞質内に環状に配列する像も稀に見られる.
    以上の所見は, この層板構造物が密に積み重ねられた滑面小胞体の扁平な槽から成り, その槽のおのおのは内腔が狭くなって, 周辺部の小嚢状の拡張部以外はほとんど閉ざしていること, および観察された同心円状または重なりあった馬蹄形状の層板は三次元的にはコップ型の槽であることを示唆する.
  • 大畑 まさ子
    1979 年 42 巻 2 号 p. 103-118
    発行日: 1979年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    八月下旬に採集したモモジロコウモリの精巣間細胞を電子顕微鏡で観察した. 間細胞の細胞質は, 多数のミトコンドリア, ER, および不定数の脂肪滴で充たされる. モモジロコウモリの間細胞には, SERとRERが交互に発達する特性がある. 即ち, ある間細胞では, 細胞質の大部分を多量の小管状SERがしめるが, 他の細胞ではSERは少数のRER嚢を伴う多量の自由リボゾームでおきかえられる. これらのSERとRERの量的変化はおそらく可逆的で, 冬眠動物であるコウモリの間細胞の機能的変化を反映する. モモジロコウモリ間細胞は小さい細胞質内結晶をもつ. それらは規則正しく方向づけられた20-28mμ直径の圧縮された小管からなり, 小管状SERに連続する (SER由来の結晶). I型とII型に分類され, 適当な切面において各々ハチの巣型と織物型の構造を示す. また精巣間細胞は不規則形の細胞質突起と長い微絨毛を出し, 後者はしばしば細胞体か細胞質突起上で集塊を形成する. 間細胞の突起を含む全表面は完全に基底膜で包まれる.
  • 正村 和彦
    1979 年 42 巻 2 号 p. 119-128
    発行日: 1979年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    ネコ視覚領 (領野17, 18, 19およびシルビウス上回外側皮質) における交連線維起始細胞の層分布および大きさの分布を, 西洋ワサビ過酸化酵素の逆行性軸索輸送を利用して検索した. 酵素を一側の外側回の内側部 (領野17と領野18の隣接部位) または中シルビウス上回の外側壁に注入すると, 反対側半球のこれらの皮質に酵素で標識された交連線維起始細胞が見られ, それらの大多数はIII層に位置し, I層を除いた他の層には少数の細胞が分布していた. III層の標識された細胞体の大きさ分布は, 交連結合を有しない領野17内側部のIII層で優位を占める小細胞に相当する大きさから, 領野17と領野18の境界皮質のIII層にある特徴的な大型錐体細胞に至る広い範囲を示した. 領野17, 18, 19とシルビウス上回外側皮質との間で, III層の標識された細胞の大きさ分布に一定の差違が見られた. 領野17, 18, 19の標識された細胞の大きさ分布には一つの優位な峰が見られたが, シルビウス上回側皮質の標識された細胞はより均一な分布傾向を示した.
  • II. 透過電子顕微鏡によるメルケル細胞の出現と分化の研究
    立花 民子
    1979 年 42 巻 2 号 p. 129-140
    発行日: 1979年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    ニホンアカガエルの後期胚を用い, 発生中の歯列ひだにおけるメルケル細胞の出現と分化を電子顕微鏡で観察した.
    もっとも未分化なメルケル細胞は直径約90nmの有芯顆粒の存在によって他の未分化な細胞から識別され, このような細胞は未分化な歯列ひだの上皮中に見いだされた. 歯列ひだ原基の形態分化にともない, 未分化メルケル細胞は, 有芯顆粒の増加, 指状細胞質突起の形成, 神経線維との接触など, 細胞分化の進行を思わせる変化を示した. 歯列ひだの形態分化がほぼ終了したステージ25では, メルケル細胞の分化はかなり進み, トノフィラメント様細胞内線維とグリコゲン粒子の蓄積がまだみられないほかは, 成熟メルケル細胞に酷似する形態を示した. またメルケル細胞は細胞分化中に歯列ひだ上皮の基底層から第3層目に移動する. 一方いずれの発生段階でも, 歯列ひだ原基の下層の間葉組織中には, メルケル細胞や未分化メルケル細胞と思われるものは認められなかったので, 無尾両生類の歯列上皮のメルケル細胞は上皮内分化を遂げるものと考えた.
  • 築山 公一
    1979 年 42 巻 2 号 p. 141-152
    発行日: 1979年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    膵外分泌酵素の血中への移行経路の検索を目的として, パンクレオザイミンを投与したラットの膵外分泌腺細胞間の細胞間結合を, 凍結割断法, タンニン酸を標識とする超薄切片法などを用いて 電子顕微鏡で観察した.
    対照群およびパンクレオザイミン投与群のいずれでも, 腺を構成する各細胞間に閉鎖帯結合を認めた. 凍結割断法によって これを比較すると, パンクレオザイミン投与時にみられる腺房細胞の閉鎖帯結合は, 対照群に比べ閉鎖帯結合の全体の幅 および閉鎖帯の隆線ないし溝の間隔が狭くなる傾向を認めたが, 隆線と溝の数は両群間に有意差を認めなかった. また 膵酵素より分子量の小さい タンニン酸は閉鎖帯結合の部分で阻止されて腺腔内へはいりえない.
    以上の観察所見より, パンクレオザイミン投与によっても 腺細胞間の閉鎖帯結合が離開することはなく, したがって 腺腔内に放出された膵酵素が, 細胞間を通って漏れ出る可能性はないと思われた. よって 膵酵素の血中への移行のメカニズムについては, そのほかの可能性を考えなければならない.
  • 大谷 修
    1979 年 42 巻 2 号 p. 153-167
    発行日: 1979年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    ウサギ肝臓の動脈の終末と 胆管周囲血管叢を 鋳型走査電顕法で調べた.
    肝動脈の終末枝は 異なる分布様式をもつ3型に分類できる. すなわち (1) 胆管周囲血管叢を形成する枝, (2) 肝小葉の末梢で類洞に直接注ぐ枝, (3) グリソン鞘内に疎な毛細血管網を形成し 小葉末梢の類洞に合流するもの である. 胆管周囲血管叢は2層からなる. 内層は毛細血管網で, 外層は静脈性血管網である. 輸出血管は外層の静脈性血管網から起こり, (1)類洞に直接注ぐ“類洞枝”と (2)小葉間静脈に注ぐ“類洞前枝”の2種があるが, いずれも胆管周囲門脈系の名に価する性質をそなえている. 小さい胆管周囲血管叢は1層からなるが, その輸出血管は2層からなる場合と同じであった. ウサギの胆管周囲血管叢の輸出血管の様式は ラットの場合 (OHTANI and MURAKAMI, 1978) と類似していた. 本血管叢の機能的意味は いまだ知られていない. 胆管周囲門脈系が 胆管壁からのホルモンの輸送路である可能性に言及した.
  • 工藤 驍悦, 星 和夫, 村上 忠重
    1979 年 42 巻 2 号 p. 169-180
    発行日: 1979年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    この研究ではおもに胃癌の開腹手術中に摘出された脾臓を用いて, ヒト脾臓の神経支配を検索した. すなわち螢光組織化学的方法 (52症例), 酵素組織化学的方法 (27症例) を用いて, それぞれアドレナリン作動性神経線維, コリン作動性神経線維を検索した.
    ヒト脾臓内のアドレナリン作動性神経線維は, 脾柱動脈の外膜と中膜の境界および中膜に, 中心動脈, 筆毛動脈の外膜と中膜の境界にまで認められたが, 脾柱および赤脾髄の静脈と細静脈, 莢毛細管, 血管を含まない脾柱, 白脾髄, 赤脾髄および脾被膜には認められなかった. 脾柱内の脾柱動脈の周囲に, アドレナリン作動性神経線維を少し含んでいる神経と全く含んでいない神経の存在を認めた. また脾柱内の脾柱動脈の周囲に, コリン作動性神経線維の存在を認めた.
    以上の結果, ヒト脾臓はアドレナリン作動性神経線維およびコリン作動性神経線維の両方の支配をうけていることが組織化学的に初めて明らかにされた.
  • William J. KRAUSE, J. Harry CUTTS
    1979 年 42 巻 2 号 p. 181-190
    発行日: 1979年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    Spermatozoa of the opossum, Didelphis virginiana, were taken from three different regions of the epididymis and examined by scanning electron microscopy, phasecontrast and dark-field microscopy. It has been demonstrated that marked morphological changes occur in spermatozoa during their passage through the epididymis. In the first segment or head of the epididymis, spermatozoa are non-motile and the long axis of their nuclei is perpendicular to that of the tail. The nucleus is V-shaped with a thick and a thin arm. At the junction of the two arms, where the arms join, the articular fossa receives the capitulum of the connecting piece which attaches the head of the spermatozoon to the tail. Spermatozoa from the central region of the epididymis show a re-orientation of the nuclei which now lie parallel to the long axis of the tail. Both paired and unpaired spermatozoa are found and show an increase in motility. In the caudal region of the epididymis all spermatozoa are paired. Pairing occurs as a result of the close apposition of adjacent cell membranes covering the acrosomes of the larger arms.
  • 1979 年 42 巻 2 号 p. 191-193
    発行日: 1979年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
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