イシダイ初期顎歯歯胚を用いて, とくに象牙芽細胞, エナメロイド基質線維, 従来議論のある組織発生に注目し, 電子鏡的な観察を行ない, 以下の結論を得た.
1. エナメル芽細胞と象牙芽細胞は一層の基底膜によって境され, 基底膜は石灰化の始まる直前まで観察された.
2. エナメロイド基質の組織発生は, 基底膜に直角方向で象牙芽細胞と平行に横紋のない太さ140∼180Åの線維の形成で始まる. 次いで約640Åの規則正しい横紋のある線維が現われ, これらの線維によってエナメロイド全体の基質が完成される.
3. 象牙芽細胞はエナメロイドの形成に伴い高円柱状の細胞となり, 細胞内小器官は著しく増加し, 蛋白合成型の極性を示した. エナメロイド基質内には多数の象牙芽細胞の細胞質突起が認められた. 象牙芽細胞内には基質線維の前駆物質を含むと考えられる細胞内顆粒が認められた. 以上のことから, 基質線維は中胚葉に由来すると考えられる.
4. 小型で, 針状や管状の外形を示す結晶の沈着は, はじめ線維束の周縁に沿って見られる. 石灰化が進むと結晶は線維束全体に出現する. 次いで大型の棒状と板状の外形を示す結晶が混在するようになる. 小型の結晶が癒合し, 集合体を形成するものも認められた.
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