Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
43 巻, 2 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 小林 繁, 岩永 敏彦, 藤田 恒夫, 矢内原 昇
    1980 年 43 巻 2 号 p. 85-98
    発行日: 1980年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    腸クロム親和細胞とモチリン免疫活性細胞 (モチリン細胞) の異同について, ヒトとイヌの胃, 腸, 膵の組織で検討した. 通常の組織学的方法のほかに, 螢光抗体間接法と酵素抗体間接法, および電子顕微鏡的手法を用いた. 腸クロム親和細胞は Masson-Hamperl の鍍銀法で同定した. 結果は以下の4項目に要約される.
    1. モチリン細胞は基底果粒細胞の一種で, 小腸粘膜に散在する. 陰窩の深部に集中する傾向が認められる.
    2. モチリン細胞は十二指腸と空腸に多い. 回腸にも認められる. 胃, 結腸, 直腸および膵にはみられない.
    3. 腸クロム親和細胞はモチリン免疫活性を示さない. モチリン細胞は非銀親和性である. したがって腸クロム親和細胞とモチリン細胞は異なると結論された.
    4. 瀬木 (1935) が発見した基底果粒細胞の巨大な集団を, ヒト胎児 (16∼24週齢) の十二指腸の絨毛先端部に観察した. 瀬木の帽子と呼ばれるこの基底果粒細胞の集団の大部分が銀好性, 30∼50%が銀親和性, そして10%以下がモチリン免疫活性を示した.
  • 内藤 順平
    1980 年 43 巻 2 号 p. 99-114
    発行日: 1980年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    ネコの皮質機能領域 (聴覚領, 体性知覚運動領, 視覚領,“皮質連合領”) に50%西洋ワサビペルオキシダーゼ (HRP) 懸濁液を注入し, 各皮質領野に投射する連合線維起始細胞の分布状態について検索した.
    HRP液が注入された皮質機能領域内に多数の反応細胞が観察された. これに反し, 他の皮質領域では比較的少数のHRP陽性細胞が見られた. 以上の所見は異なる機能領域間結合よりも同一領域内結合の方がはるかに強いことを明示する. HRP陽性細胞は脳回面のほかに, 脳溝を囲む皮質部分にも観察された. またいくつかの脳溝, 例えばシルビウス前溝, 後シルビウス上溝を囲む皮質領域が複数の機能領域へ連合線維を送っている事実が明らかにされた.
    多くの皮質領野で, 連合線維起始細胞の約70%がIII層に位置したが, 中シルビウス上溝内側壁皮質 (Clare-Bishop 域) から視覚領に投射する皮質-皮質間ニューロンの多く (82%) はVおよびVI層内に存在した. これらの皮質細胞 (錐体細胞) はそのほとんどが錐体形ないし三角形を示したが, 多角形ならび紡錐形のものも少数ながら認められた. 連合線維起始細胞の径の平均値は15.8-17.2μm±2.5-3.0 (SD) (N=293) で, 個体差および出現部位による差はみられない.
  • 外崎 昭, 山崎 正博, 鷲岳 宏, 溝口 二郎
    1980 年 43 巻 2 号 p. 115-126
    発行日: 1980年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    ウシ網膜の杆状体細胞外節円板膜を, 薄切樹脂切片と双面凍結レプリカの電顕観察により研究した. 薄切法においては, 円板膜がそのユニット膜構造に沿って不連続的暗調部を示し, その結果, 中間層を形成するやや明調な小球状構造が顕著に認められる. それらの直径は約60Åと見積られる. 一方, 凍結レプリカ法においては, 直径77Åの膜粒子がP面には密に, E面には散在性に分布する. すでに多数の研究者たちが上記のような電顕像を視物質分子に結びつける十分な所見を得ることに失敗しているが, われわれもまた化学的ないし熱的過程を含む試料作製過程が, これら最終電顕像の形状に影響を与えているのではないかと疑わざるを得ない.
    しかし, われわれが異なった2方法によって得た再現性の高い結果は, 薄切切片上の小球状構造と凍結レプリカ上の粒子とが, 視物質の完全な姿よりはむしろ, 同一の分子的実在の相異なる形相にそれぞれ対応することを暗示するであろう. また1個の膜粒子が果たして1個の分子的視物質に相当するか, あるいは数個の集合体に相当するかの問題も依然として不明である. この最後の問題は, 目下われわれが行なっている双面レプリカの局所地形学的分析によって一定の限界まで解決されるであろう.
  • 本間 さと, 阿部 和厚, 伊藤 隆
    1980 年 43 巻 2 号 p. 127-139
    発行日: 1980年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    雌雄両性マウスの腹膜腔自由細胞を生後1日から120日まで定量形態学的に検索した.
    腹膜腔自由細胞の総数は加齢とともに増加する. 生後40日以降の増加は雌性で雄性より著明で, 思春期以後, 細胞総数は性差を示す. コールターカウンターで腹膜腔自由細胞の大きさを求めると, その度数分布曲線は3峰性で, 大きさの異なる3種の細胞から構成されることを示唆する. 3種の細胞は, 光学顕微鏡で観察すると, 小リンパ球 (I型), 中型単核細胞 (II型), 大食細胞 (III型) に相当する. 新生仔期では, 細胞の約90%がIII型であり, I型とII型とは2%以下である. I型細胞は加齢とともに徐々に増加するが, 各齢期とも3型のうちで最も少ない. II型は加齢とともに急速に増加し, 思春期以後, 最も多い細胞となる. 思春期以降, II型は著明な性差を示し, 雌性では雄性より多い. III型は思春期までは最も多く, 加齢とともに増加するが, 思春期以降, その数は変化しない.
    腹膜腔自由細胞総数およびII型細胞における性差は, 精巣の存在に起因するものと考えられる.
  • 黒住 一昌, 小林 靖夫
    1980 年 43 巻 2 号 p. 141-155
    発行日: 1980年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    下垂体副腎系の種々な実験条件における前葉の微細構造を電子顕微鏡で研究中に, 下垂体前葉の毛細血管周囲結合組織内あるいは腺細胞間に無髄神経線維および神経終末が出現することを見出した. 神経線維の微細構造は今回実施したような実験によっては変化しない.
    神経線維と終末は種々の大きさの小胞や小管を含み, これは多かれ少なかれ暗調の物質を充たしている. 神経分泌果粒に類似する大きさの暗調果粒を有することがあり, 時として神経終末外に開口放出されている. 成長ホルモン産生細胞が最もしばしば神経終末と接触しており, 副腎皮質刺激ホルモン産生細胞がこれに次ぐ. これらの神経終末の機能は充分には明らかにされていないが, おそらく下垂体前葉の内分泌機能に関連を有すると思われる. 神経線維はしばしば血管にともなっているけれども, 血管運動神経であるとは考えられない.
  • 和田 勝, 浦野 明央, Aubrey GORBMAN
    1980 年 43 巻 2 号 p. 157-173
    発行日: 1980年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    A stereotaxic apparatus was devised for frogs (Rana pipiens pipiens) by adaptation of a commercially available apparatus. An atlas of orienting illustrations emphasizing detailed structure and distribution of forebrain nuclei was prepared from celloidin sections and paraffin sections. Nomenclature of nuclei is discussed and an attempt made to reconcile various interpretations in the published literature.
  • 池田 章, 吉井 致, 三島 昇
    1980 年 43 巻 2 号 p. 175-183
    発行日: 1980年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    ミュラー細胞と他の中枢神経のグリア要素との関係を知るため, 抗グリア酸性蛋白血清を用いペルオキシダーゼ酵素抗体法を試みた.
    ミュラー細胞が網膜に特有なグリア要素で中枢神経のグリア要素とは全く異質のものか, または発生学的に中枢神経のある種のグリア要素と同じ起源のもので, 発生途中に特異な形態をとるにいたったものか, その場合ミュラー細胞は中枢神経のどの種のグリア要素に相当するか等の点について不明であった. 免疫組織化学的観察の結果, ミュラー細胞は上衣細胞, ミクログリアと異質の細胞で, 機能的には高度に特殊化された細胞であるが, アストログリア, オリゴデンドログリアと共通の抗原物質を有することが明らかとなった. ミュラー細胞はこれら細胞と同じ役割を網膜ではたしているものと考えられる.
    ミュラー細胞は網膜全層にわたって拡がり, 他の要素と複雑に交錯するため, 古くから試みられた鍍銀法では非特異性染色が強く, その全貌を把握することが困難であった. 本研究において使用した抗血清はミュラー細胞に特異に反応し, かつ純度の高いものであるので, 光学顕微鏡の水準でその細胞の全貌が明らかとなった.
  • 永野 俊雄, 鈴木 二美枝
    1980 年 43 巻 2 号 p. 185-189
    発行日: 1980年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    マウス, モルモット, ヒトの精巣輸出管上皮細胞の結合を凍結割断法でしらべた. 円柱上皮にみられる密着結合のほかに, 帯状に細胞の傍腔側をとりまく細隙結合が無線毛細胞間にみられた. このような細隙結合は哺乳類精巣輸出管上皮の結合装置の一つの要素と思われる.
  • 1980 年 43 巻 2 号 p. 191-192
    発行日: 1980年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
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